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webadm
投稿日時: 2009-7-18 22:32
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Fourier変換と波形解析
いよいよ上巻の最後の章である。

通常では多相交流回路と歪み波に関しては数学的に難しいので電気回路理論の最後に教えるところが多い。本書では上巻と下巻とに分冊とする際に、下巻が厚くなるので本来は下巻の最後に登場すべき多相交流回路と歪み波の理論が上巻の最後に移されたのではないかと察する。

多相交流回路では対称座標法という面倒なテーマがあり、歪み波理論ではFourier変換というテーマが登場する。いずれも数理的で教えるのも面倒だし教わる方も理解に時間がかかる。

そもそも交流回路理論は、複素数を使う時点で数理的には複素関数解析と重なる。インピーダンス軌跡やアドミッタンス軌跡はそれぞれ複素数球面への写像として捉えると直感的に明快である。

歪み波に限らずあらゆる繰り返し波形を伴う信号は三角関数級数で近似できることを最初に発見したのが、名前の由来であるFourierである。

元来Fourierは生まれは貧乏で数学を独学し当時旬でもありライフワークでもあった熱方程式の解法の研究の過程で、一定区間定数を保つような三角関数級数を発見したことから、それを熱方程式の解法に応用した論文を発表した。

その主旨は「大概の関数は三角関数級数で近似できる」というはなはだ厳密さに欠き、素人学者の大胆な予想にすぎず最初は受け入れられなかった。

第一「大概の関数」とはなんだ? 例外があるのか?

第二に「近似できる」ということは完全に一致するわけではないのか?

はなはだ数学的にはつっこみどころ満載であるが、確かに言われていることはその通りで大御所が身を乗り出して検証をしたがるほどニュース性を帯びていた。

当時のフランスの学会では過去二十数年に渡ってさしたる話題もなく、これといった論文募集のネタに事欠いていたため、当時の数学界の大御所であるラグランジェやラプラスらは、つっこみどころ満載のFourierのアイデアに目をつけ、次期論文募集テーマとして採用し広く論文募集を行った。

Fourierはめげずに論文を書き直し、応募したところ、ほどなく大賞を受賞することになった。

当時はまだ誰もFourier級数が収束する条件とかいうことを証明できる人は居なかった。これは後にディリクレや後生の数学者によってFourier解析という数学分野にまで大成するのを待たねばならなかった。

いずれにせよ最初に関数を三角関数級数で表すアイデアはFourierのオリジナルの発想であり、その数学界や物理学、工学への貢献は計り知れない。

数学界の大御所さえもFourierが登場するまで思いつかなかった発想をするのだから、Fourier自身は相当の変人であったことは史実からも知ることができる。

なんでもエジプトにナポレオンと一緒に遠征にいった後、フランスに戻ってもエジプトの気候が気に入って、自ら真綿で全身をくるみその上から包帯でぐるぐる巻きにしてまるでミイラのような姿で蒸し暑い部屋で研究に没頭するのが好きだったらしい。

その反面、乱世のフランスの時代に柳のように情勢の変化に適応して市長を務めながらライフワークの研究を続けたしたたかな人物であったようである。

なんの話だったっけ?

ああFourier変換と波形解析ね。

今日教えられているFourier解析については後生の学者が敬意を表してFourierの名前をつけた定理も含まれており、どれがオリジナルかは判別できなくなっている。応用するにはどれがオリジナルかは意味がなく大成された理論を理解するのが重要であるためだ。

しかし反面、それが当時いかにオリジナルのアイデアが画期的であったかという点を忘れさせることにつながっている。まるで当たり前の話に見えてしまうのだ。決してそうではない。同じように熱方程式を研究していた大御所の学者が他にもいっぱいいたが、育ちが貧乏で職業学者でもないFourierが独自に見つけた発見であることが忘れられてしまっている。

Fourier級数は三角関数級数であるため、周期性のある関数だけを表すことができる。しかし時間を表す変数tを周期を表すTに変換しTを∞にすると繰り返し性の無い単発現象の関数も表すことができる。

オリジナルFourier級数は実数関数だが、複素関数に拡張すると更にその性質を良く理解し応用することができる。

もちろん実時間関数としてのフーリエ変換も有用で、JPEGやMPEGなどデジタル信号処理で使われている離散コサイン変換や離散フーリエ変換もフーリエ変換の一種である。

唯一の注意点としてはフーリエ級数もフーリエ変換も積分可能な関数にのみ適用可能で有る点である。また不連続点ではギブス現象と呼ばれるオーバーシュートやアンダーシュートが生じる。一部の参考書では級数項を∞にすれば完全に一致するようなニュアンスで説明されているものがあるが、それは限られた条件下であって、不連続点を含む場合は含まれない点に注意。


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