スレッド表示 | 新しいものから | 前のトピック | 次のトピック | 下へ |
投稿者 | スレッド |
---|---|
webadm | 投稿日時: 2010-6-22 18:50 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
まだまだ:影像パラメータ &0次ぎも影像パラメータに関する問題。
以下の格子型回路の(1)伝送行列、(2)Z2=Z3の場合の影像パラメータ、(3)A,Cが与えられた場合にそれを実現するZ1,Z2(ただしZ1=Z4,Z2=Z3とする)を求めよというもの (1)伝送行列 ストラテジーとしていくつもあるが、以前にやったように2つの部分回路の並列接続として考えてみよう 従って伝送行列Fは ということになる。 おろ、著者の解とだいぶちがうぞ。どうやらA=Dとなってしまっている。もとの部分回路がそもそも対称回路なのだから、その並列接続も対称回路になってしまうのは当たり前である。まあそういうことが解っただけでも怪我の功名としよう。 別のアプローチを考えよう。S字回路とZ字回路の並列回路として考えてみよう。 なにもそこまでしなくてもと言うかもしれないが、これも著者と同じ方法ではいけないという制約が付く以上仕方がないのである。しかし著者の解答だけ理解して素通りしてしまえば気づかずに終わってしまう隠された宝物が見つかるかもしれない。 図のように問題の回路はS字型とZ字型の2つの非対称回路の並列接続と考えることができる。最初面倒くさいなと思って気が進まなかったのだが、図を描いてみるまで気づかなかった事実を発見。S字回路とZ字回路は互いに鏡像回路となり得るという点である。Z2とZ3が同じであればまったくの鏡像回路である。Z2とZ3が異なる場合には互いに異なる非対称回路となる。 一見簡単そうに見えてこれが予想外に難しい。試験問題にはよさそうだが、捨て問題にされそうだ。確かにこんな問題今までどこでも見たことがない。もしかしてオリジナルかもしれない。 と思ったが、これもどうやらだめらしい。というのも良く考えれば上の部分回路は以下の非対称T型回路と等価になってしまう。 この2つを並列接続しても元の非対称格子型回路とは等価にならない。ということである。非対称格子型回路はそれ以上小さい部分回路には分割することができないということになる(*1。 ということで非対称の格子型回路の場合、結局のところ解法としては素直にそのまま解析するしかないという結論になる。それが解っただけでも収穫である。ふう、だいぶ遠回りをしてしまった。 多少でも著者と違う解とするために、アドミッタンス行列を求めてそれを伝送行列に変換することにしよう。 だがしかし('A`)マンドクセー ここまで回り道をすると奇妙なことに今まで出てきた部分回路が代数幾何で出てくるある概念と良く似たような感じがしてくる。おそらく回路網理論と代数幾何は表裏一体であるという直感が当たっているのかもしれない。今までに回路網理論と代数幾何学を結びつけて論じた本は見たことないが、もしかしたらそれが出来るかもしれない。それには代数幾何を学んで両者のつながりを明らかにしないといけないが。 部分回路はある程度まで分割するともうそれ以上分割できなくなる。それ以上分割しても係数が異なるだけの違いでしかない。インピーダンス一つから成る回路は分割してもやっぱりインピーダンス一つでしかない。複数の異なる部分回路を並列、直列、縦続接続することによって出来る回路も、基本的な部分回路の素子の定数が変わっただけにすぎなかったりする。 なんの話しだったっけ。ああ、非対称格子型回路のアドミッタンス行列ね アドミッタンスパラメータの各条件を当てはめてオームの法則、キルヒホッフの電流則など基本的な法則を使って端子対に流れる電流を求める基本的な解析だが結構やっかいでミスを犯しやすい ということになる。 これを例によって伝送行列に変換すると ということになる。ふう、手計算では限界を超える式の複雑さなのでMaximaに負うところ大であった。 次ぎに影像パラメータを鏡像回路と縦続接続した二種類の対称回路の伝送行列の固有値と固有ベクトルから求める。 2つの対称回路はZ2とZ3が入れ替わっただけなのでそれぞれ個別に導かなくても、一方の式のZ2とZ3を交換すれば計算を用いずとも導ける。 上記の行列F01,F02について固有値、固有ベクトルを求める。 Z02は計算を用いずともZ01の式でZ2とZ3が入れ替わったものになるのは自明。 また題意ではZ2=Z3の対称回路の影像インピーダンスを求めよということなので ということになる。 相変わらず数式の知恵の輪だ。Maximaで数式を処理すると一部展開してしまうので更に複雑となる。適宜部分式をMaximaでfactoringして確認しながら進めたが、最後のところはMaximaではやってくれないので自分で考えるしかなかった。 分母の負号が著者の解と違っているが固有値の式で(Z1Z4-Z2Z3)^2=(Z2Z3-Z1Z4)^2であるので、どちらも同じである。 さて最後の逆問題、AとCを与えられてZ1=Z4,Z2=Z3の時Z1,Z2をどのように決めるかというもの。 既にZ2=Z3という時点で回路は対称回路のためA=Dとなり、A,Cが与えられれば残りのBも線型受動回路では相反定理が成り立つのでAD-BC=1の関係から従属的に決定する。 従って伝送行列から以下の方程式が得られる これをZ1,Z2,Z3,Z4に関する連立方程式としてMaximaに与えて解くと という解が得られる。 P.S 予想外に非対称格子型回路の解析は複雑であった。得られた式の中に出現する項はありとあらゆる加算と乗算の組み合わせからなる。代数幾何ではイデアルと呼ばれる数学的対象なのだが回路網理論でその現物を見ることができるというのは面白い。この種のことは生命体のDNAの塩基配列とかにも有るんじゃないかなと勝手に想像してみたりする。宇宙の法則みたいななにかを感じる。 回り道をしなくてもいいのにと思うけど。他の誰も足を踏み入れないところを冒険するのは他の誰かをいつも頼りにするわけには行かないので自由で楽しくワクワクするものである。 コンピュータプログラミングの得意な読者はネットリストで与えられた任意の線型受動二端子対回路の影像パラメータを計算するソフトを書いてみるとよいかもしれない。意外に難しく未踏の分野であることがわかるかもしれない。ネットリストをコンピュータプログラムで扱うにはSPICEのそれを流用すればよい。本問題にあるように二端子定数を与えて回路定数を決定するような設計計算は高次の連立方程式を解く必要がある。これもまた未踏の領域である。 (*1 非対称格子型回路がそれ以上部分回路に分割できないというのは証明されていない。勝手な予測である。少なくとも単一の二端子対回路は非対称回路でも2つ以上の部分回路の縦続接続で構成される可能性が残されている。今回は並列接続に関してはどうやら分解できないらしいという予想されるというだけである。並列接続して得られる二端子対回路が非対称格子型回路と同じ4端子定数を持つような2つ以上の部分回路は存在しないという証明を考えるのは面白いテーマかもしれない。もちろんインピーダンスに任意の複素数を許せば存在する可能性は大きい。問題は受動素子(実数部が常に正)からのみなる2つ以上の部分回路の組み合わせは存在しないのではないかということである。これはもう数学の応用問題である。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-25 21:54 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
もうひとつの:影像パラメータ 次ぎも影像パラメータを求める問題。
以下のH型回路の(1)4端子定数、(2)Z1=Z2=Z3=Z4の場合の影像パラメータを求めよというもの。 前の問題で学んだ通り、この回路はH型とは言う物のその実態はT型回路と等価であることがわかる。 試しに3つの部分回路の従属接続として4端子定数を求めるとそのことが明らかになる。 ということになる。 一方Z1=Z2=Z3=Z4ということになると対称回路になるため伝送行列Fの固有値と固有ベクトルから影像パラメータが求まる。 ということになる。 P.S 最初間違えて2θ=ln(λ)として計算したら平方根が出てきてしまって焦ったが、鏡像回路を縦続接続しているわけではないのθ=ln(λ)でよかったのである。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-26 0:45 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
4端子定数と影像インピーダンス 次ぎは初めて出てくる変わった回路の4端子定数と影像インピーダンスを求める問題。
T型回路と並列にZ4直列だけの二端子対回路が接続されているような感じ。 前の問題でだいぶ計算が疲れたので3つの部分回路の従属接続にもうひとつ並列に接続しているものとして4端子定数を求めよう。 4つの部分回路の伝送行列F1,F2,F3,F4とT型回路部分の伝送行列F123は ということになる。 次ぎに伝送行列F123をアドミッタンス行列に変換すると ということになる。 次ぎに伝送行列F4を同様にアドミッタンス行列に変換すると ということになる。 2つの並列接続した回路の伝送行列は ということになる。 影像インピーダンスを例によって鏡像回路と縦続接続した対称回路の伝送行列の固有値と固有ベクトルから求めると ということになる。Z01とZ02ではちょうど鏡像回路でZ1とZ3が入れ替わっているだけなので計算せずとも自明である。 P.S たった4素子の回路なのに影像インピーダンスの式は複雑を極める。Maximaがあるのでなんとかやり遂げたが、昔の人は紙の上で計算を追っていくしかないのでそれはそれは大変だったに違いない。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-26 11:27 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
インピーダンス整合 次ぎはうってかわってインピーダンス整合の問題。
以下の2つの回路を用いて一次側300Ω、二次側75Ωの抵抗の間で周波数f=100kHzで整合をとるためにはLとCを決定せよというもの。 これも設計問題(逆問題)である。ストラテジーとしてはいくつか考えられる。(1)影像インピーダンスの逆問題として考える(与えられた周波数と一次側と二次側の抵抗値でそれぞれの駆動点インピーダンスがそれぞれの抵抗値と等しくなる影像インピーダンスを持つLとCを決定する。(2)正規化(L=1,C=1)された回路の影像インピーダンスを求め、それが与えられた周波数と影像インピーダンスを持つようにLとCをスケーリングする、(3)与えられた周波数と影像インピーダンスで伝達定数が最大となるLとCを求める、等。 著者の解答は(1)のアプローチをとっているので、こちらはそれとは別解を考えざるを得ない。しかしどれも似たようなもの。条件を満たす不定元LとCを解く問題だからだ。 とりあえず不定元L,Cに関する影像インピーダンスの式を導く必要がある。 ということになる。 周波数が100kHzでZ01=300Ω,Z02=75Ω(何れも実数)を満たし、リアクタンス回路なので一次側から供給された電力は損失無く二次側に伝達されるため伝達定数が0となるようにL1,C2を決定すればよい。 以下の関係式をL1,C2に関する連立方程式としてMaximaに与えて解くと しかしこのままではMaximaでは解けないので、式からべき根を無くために以下の様に二乗したものを与えると 以下の解が得られる。 ということになる。この値を元の影像インピーダンスの式に代入して検算してみよう。 ということになる。 ところで伝達定数はどうなるのだろうか? 計算してみると ということになる。これは位相差は生じるものの損失はまったく生じないことを意味する。 残りの回路についても同様に ということになる。 P.S 最初定数の有効桁数を3桁までに丸めて検算してみたところぴったりとした値にならないので4桁にした。伝達係数も3桁だとごく微少な実数値が現れるが、4桁にすると実数部はゼロとなる。伝達定数の実数部がゼロになることを条件に入れて解を求めるという手もあったかもしれない。 後半の回路は急ぐあまりにMaximaで固有ベクトルを求めたところまでは良いが、それから連立方程式を立てる際にMaximaの固有ベクトルは単位ベクトルに対して正規化されているので逆数になっているのを忘れてしまって答えが合わず結局地道にやり直したらそのことに後から気づいたというありさま。後半の回路では式中に含まれる虚数単位の消去処理を誤ってだいぶ時間をロスしてしまった。読者はテスト問題を解くときには本方法の真似をしないように。それと二端子対回路がリアクタンス回路の場合には回路内での電力消費が無いため伝達定数は純虚数となるはずであることも後から気づいた。無理矢理伝達定数の式から虚数単位記号を消そうして消えずに数時間悩んだのは内緒だ。 たかがL字回路、されどL字回路。後半の回路は現在でもデジタル機器の随所に不要輻射を低減するためのフィルターとして使われている。特に外部に信号線や電源がコネクタとして出てくるところでは超高速な信号でない限り必ず線路に挿入されているはずである。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-26 21:55 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
もうひとつの:影像インピーダンス 次ぎも影像インピーダンスの応用問題。
以下のH型回路の端子22'の電圧が端子11'の1/3倍になるときR1及びRの値を求めよというもの。 与えられているH型回路は軸対称回路でRはその反復インピーダンスである。 解法のストラテジーとしてはいくつか考えられるが、著者はオーソドックスな回路解析によって導いている。それとは別解をやってみよう。 前問は与えられた影像インピーダンスを持つように回路定数を導く問題だったが、今度のは与えられた伝搬定数を実現する回路定数を決定せよというもの。これも逆問題である。 幸いにして回路は純抵抗回路なので反復伝搬定数は常に実数である。従って反復伝搬定数の式から定数を導く方法が使えそうである。 まず反復伝搬定数の式を導くことにしよう。 回路は対称回路なので、伝送行列の固有値から反復伝達定数を求めることができる。 例によってより単純な3つの部分回路の縦続接続として伝送行列を求めよう 次ぎにこの伝送行列の固有値から反復伝搬定数を求め最終的に与えられた条件を満たすR1を解く。 ふう、一瞬これどうやって解くんだ(;´Д`)って不安になったけどストラテジーには間違いがなかった。かなりトリッキーだね。 ああ、あとRも求めないといけないのを忘れるところだった。テストなら一問落とすところだった。 Rは影像インピーダンス(反復インピーダンス)なので例によって伝送行列の固有ベクトルから導くと ということになる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-27 0:05 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
反復インピーダンスと4端子定数 次ぎの問題は理論の時に見通しの悪い方法だけど一度やっているが、反復インピーダンスを4端子定数で表せというもの。
理論の時とは違う線型代数的手法でやってみよう。 まず反復インピーダンスの式を4端子定数で与えられた二端子対回路の伝送行列の固有ベクトルから求める。 Q.E.D ふう(;´Д`) 最後の反復インピーダンスの式を整理する際に一瞬やばいかと思ったけどトリッキーな数式操作でうまく切り抜けることができた。まるで数式の智慧の輪みたいだ。 Z02はZ01の鏡像回路の反復インピーダンスなので、鏡像回路の伝送行列はもとのそれとAとDが入れ替わるだけである。従って反復インピーダンスの式もAとDが入れ替わるのみなのは自明とした。 P.S これまで非対称な伝送行列の固有値と固有ベクトルが物理的に何を意味するのか今まで謎だったが今回の問題ではっきりした。それは反復パラメータだったわけである。なんだそうだったのか(´∀` ) もしやとおもったら、度々紹介している「回路網理論I」の反復パラメータのところに同じようなことが書いてあった。良く読むんだった。Sパラメータが中心なので難しくて読んでなかった。既にこのことは自明であるかのようにさりげない記述である。 さすがである。 |
webadm | 投稿日時: 2010-6-28 21:04 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
反復パラメータ 今度は趣向が変わった反復パラメータに関する問題。
反復インピーダンスが同じで反復伝搬定数が異なる2つの二端子対回路を縦続接続した場合に反復インピーダンスと反復伝搬定数はどうなるかというもの。 前の非対称格子型回路の二分割問題や分布定数回路理論とつながりがありそうである。単一の二端子対回路が2つの部分回路の縦続接続から成るとすれば、その部分回路もまた2つ以上の部分回路の縦続接続で構成できるということになり、それを無限に分割すれば分布定数回路と同じことになる。とどのつまり集中定数型二端子対回路と等価な分布定数回路が存在する、逆も真なりという予想がたてられる。この面白いテーマについては後に学ぶ分布定数回路までとっておこう。 さて著者とは別解を考えてみよう。 ストラテジーとしてはいくつかある。 (1)題意の条件の2つの異なる部分回路の4端子定数を与えられた反復パラメータで表し、それらの縦続接続回路の4端子定数を求めて、それらから回路全体の反復パラメータを求め、与えられた部分回路の反復パラメータと比較する (2)予めいくつの仮定についてそれが与えられた条件と矛盾する結果となるか否かを数学的に示すことで正しい結論を得る。 前者は計算問題であるが、後者は複数の仮定についてそれぞれ数学的に検討しないといけないのでちょっと面倒である。 計算でやっても問題ないのでそれでいってみよう。 公式を使ってそれぞれの部分回路の4端子定数を与えられた反復パラメータで表すと ということになる。 次ぎにこの2つの部分回路を縦続接続した回路全体の4端子定数を求めると ということになる。 従って、反復伝搬定数が2つの部分回路の反復伝搬定数の和になり、反復インピーダンスは変わらないということが明らかである。 P.S さすがに展開して整理する過程を示すとすると展開式が長くなってしまうのでMaximaで確認して最終形のみを示すにとどめた。類似の問題としては、反復インピーダンスが相異なる場合にはどうなるかというのも興味深いが、式がとんでもないことになりそうなので読者の課題としよう(´∀` ) P.S 別のアイデアとしては、伝送行列を時間軸方向に縦続接続したとするとそれは何を意味するか? 無限小の2端子対回路が時間軸上で直前の時間の出力を入力として次ぎの微少時間後の出力として変換すると考える。それぞれの微少二端子対回路の端子対状態を時間軸上にプロットするとどうなるか? これはシステムの過渡応答解析を線型微分方程式を解くことなく行なえることを意味する。時間軸の無限遠点(終端)が定常状態となる。 そんなに昔ではないが某大学の先生がこのアイデアに基づいた新しい高速シミュレーターの実例を話されていたのを横で聞いていたのだが、当時は眠くてよく解っていなかった。今やっとなるほどと理解したのであった。先生の大学の教授会で同じ話しをし解ってもらえたのは学長だけだったというエピソードも含めてずっと記憶には留めていた。 また周波数軸方向に縦続接続したらどうなるか?リアルタイムスペクトルアナライザになるのかどうかは読者の想像に委ねよう(´∀` ) 実際リアルタイムシミュレーションを得るには数千とか数万個のベクトルの積和演算を同時期に行なえる特殊なmany coreシステムが必要となる。そういったハードウェアと組み合わせれば特許になるかもしれない。 眉唾な話しはこのへんでお開き(´∀` ) |
webadm | 投稿日時: 2010-6-29 18:16 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
影像インピーダンスと反復インピーダンス 次ぎは影像インピーダンスと反復インピーダンスをからめた問題。
4端子定数がA,B,C,Dなる二端子対回路の影像インピーダンスと反復インピーダンスが等しくなる条件を示せというもの。 これもいろいろストラテジーは考えられるが、例によって線型代数的な手法でできないか考えてみよう。 影像インピーダンスとはすなわち、非対称二端子対回路とその鏡像回路との縦続接続して出来る伝送行列の固有ベクトルの成分であることを独自に見いだした。 同様に反復インピーダンスとは非対称二端子対回路の固有ベクトルの成分であったことを独自に見いだした。 これらの2つの固有ベクトルが同じになる行列の条件を見いだせば良いことになる。 益々解らなくなってきた(;´Д`) 線型代数の演習問題としてはいいかもこれ。知力への挑戦だねこれは。 でも難しすぐる...orz 整理してみよう。線型ベクトル空間で表すと ということになる。すなわちFとF.Fiが同じ固有ベクトルを持つということになる。 わかんねえ(;´Д`) 検索でいろいろ当たってみたら、どうやらこの種の行列を扱う問題は工学系大学入試に頻繁に出る難問のひとつ、一次変換の不動直線問題と呼ばれるらしい。高校では習わないけど入試には出るので予備校では仕方なく教えることになっているらしい。 手元にある複数の線型代数の参考書(名著と呼ばれるものも含めて)、この種の話題は華麗にスルーされている感じがする。索引を見ても上記のキーワードは一切出てこない。まあ、固有空間に含まれてしまうと言えば確かにそうなのだが。線型代数学上では重箱の隅の問題らしい。 大学でも高校でも教えないことが入試問題に出るというのは矛盾している。この当たりは近年までのゆとり教育の影響で学習指導要領がそれまでと変わったためかもしれない。文部科学省の指針案によると高校の数学から行列が単位として消えることになるらすい。 結論は見えたのだが、線型代数的にどう扱えばいいのかが見えてこない。なにせ華麗にどの本でもスルーされているだけに。 言うなればこの問題は一次変換の不動直線問題の逆問題なのだ。 大学入試問題でもこんな捻った問題はさすがに出ない。 さてと答えが解ってしまっていて、それを導く方法を考えるという逆問題になってしまった。 上の図に描いている通り、3つのベクトルが並行に並んだところが所謂不動直線である。おそらくブルバキ以前の連立微分方程式の解法に由来する行列と行列式の理論の中で生まれた用語だろうけど、該当する英語は現代では見あたらない。ブルバキ以後は線型代数があらゆる数学のハブとなったため、線型代数で置き換えられた古い概念の中に不動直線や不動点が含まれていたと思われる。 理数系の人に言わせれば「不動直線なにそれ、線型写像の固有空間でひとくくりじゃん、ばーかばーか」と馬鹿にされるだろう。 二次元空間での線型変換を扱っているのに、何故に一次元の直線への写像になるかということを考えると代数幾何学の道へ踏み込むことになる。線型代数はありとあらゆる数学へつながるハブなのでそういうことは当然あり得る。線型代数学だけの閉じた世界ではない。 さてと、結論が解っていてもそれを証明する見通しの良い方法がみあたらないというのは難問の典型である。 しかも今回は結論を知らないゼロ知識から導かないといけない。数学ならば、命題で結論を出しておいてそれを証明すればいいわけだから簡単である。しかしこれは工学の問題だ、結論はほとんどのケースで予め予測できないか、無数に考えられる場合がほとんどである。数学とは違うのだよ。 映画Matrixの有名なシーンにビル飛びというのがあって、仮想世界でビルからビルへ空中を駈けるようにして飛び移るのを主人公のNeroが挑戦する場面。指南役が「心を解き放つんだ」とアドバイスを与えるもあえなく初回は地面に落下。Matrixでは様々なしがらみによって人間の行動が制限されているが、それ以外に実は制約がまったくない。それに次第に開眼していくストーリー。 数学の世界も制約やしがらみを与えているのは自分自身の狭い先入観でしかないので、それを解き放てばもっと自由な世界が見えてきてそちらへ瞬時に移ることもできる。 また数学の世界では新しい領域で新しい対象(オブジェ)を最初に見つけた人が名前を付ける権利を有する。これは人類があらゆる生物や物体(オブジェ)に名前を付けてきたのと一緒。 約一週間悩んだ末にようやく見えてきた( ̄ー ̄)ニヤリ F,Fiがそれぞれ零でない非対称な線型変換行列であるとして、以下が成り立つ零でない異なる固有値(Γ、Λ)に対して同一の固有ベクトル(x)が存在するとする 第二の式の両辺にΓ/λを乗じたものを第一の式から差し引いて得られる以下の式も成り立つ ここでF(I-(Γ/λ)Fi)が可逆であると、零でないxは存在しないことになり矛盾する。 いいとこまで来たんだけどな、どうすんだこっから(;´Д`) Fもしくは(I-(Γ/λ)Fi)のどちらかが非可逆であることが必要十分条件である。 ところでFとFiは対角要素が入れ替わっただけなので同一の固有方程式を持ち、従って同一の固有値を持つ。従ってFが固有値Γを持つとするとFiも同じ固有値Γを持つことになる。 先の式の両辺にλ/Γを乗じると ということになる。ここでΓはF及びFiの固有値であることから が成り立つ。従ってλ=Γ^2でない限り ということになり、((λ/Γ)I-Fi)は可逆ということになる。 ここで再びF及びFiは対角要素が入れ替わった相異なる非対称行列なのでF Fi≠F^2であることから、その固有値もλ≠Γ^2ということになる。従ってFが非可逆でなければならないことになる。 Fが非可逆行列である必要十分条件は ということになる。細かいところは自明なこととして証明を省略した。 最後の結論はとっくに見えていたんだけど、そこへどうやって落とし込むかが問題だった。 検索してもこの種の問題を扱っているところは皆無だし、ましてや証明など見いだせるはずもなく。我流でなんとか証明したものの未熟さは目に余るものがあるのはご勘弁を。もう少しじっくり考えればもっとエレガントな証明が得られるかもしれない。 で、実際上の条件を満たす線型変換行列の具体例を考えると、大学入試問題で良く見る不動直線問題に出てくるような行列が浮かび上がる。 これなどが得られた条件を満たしている。 F,F Fiの固有値と固有ベクトルをそれぞれ求めると ということで同じ固有ベクトルを持つこと(影像インピーダンスと反復インピーダンスが等しいこと)が確かめられた。 しかしこの問題のどこが電気回路理論なのだろうか。もうほとんど線型代数学の世界である。電気回路はその実相というべきかもしれない。 思うにこの伝送行列がはたしてどんな回路か考える問題だったら電気回路の問題になるかもしれない、それは読者の課題としよう(´∀` ) P.S 大学院の入試問題にも不動直線問題は出るらしいが、これほど捻った証明問題は出ないだろう。しかしこれを見た試験問題作成担当教官は来年の院試問題にこれをヒントに出題するかも(´∀` ) P.S 「ラング線型代数学(下)」を読み進めていたら、後半の12章 「多項式と素因子分解」の5節「ベクトル空間の分解への応用」に以下の様なほぼ不動直線とおぼしき概念がが出てくるのに遭遇した。 引用:
例1の不変部分空間は一次元なので不動直線そのものである。 この不変部分空間は、すぐ後に出てくるシュアの補助定理で重要な概念となっている。おそらくそっから先さらに別の数学の領域とつながっているのだろう。固有値の固有ベクトルは「ラング線型代数学(下)」の割りと前半にすぐ登場するが、固有空間だけは後半の上記の部分で初めて登場する。「ラング線型代数学(下)」は上巻に比べてかなり内容が専門的になって難しいが、次々と公理系を証明することで見える世界が広がるという数学の楽しさを味わうことができる。だいぶ数学的な証明の勘所みたいのがわかってくる。驚きはGaussの有名な代数学の基本定理を、線型代数学でいとも簡単にたった一文程度で証明できてしまうのは痛快だった。証明することの楽しさを味わうために美味しいところは読者に課題として残しておいてくれるのは好感が持てる(´∀` ) なるほど「不動直線」で検索しても大学受験に関するページしか出てこないけど、「不変部分空間(invariant subspace)」なら、手物の齋藤正彦 著「線型代数入門」ではさわりだけ、佐武一郎 著「線型代数学」に「不変(invariant)な部分空間(subspace)」としてかなり詳しく述べられているし検索でも多方面の数学理論のページが数え切れないほど出てくることから、「不動直線」は日本だけの狭い受験用語で、広く数学の世界では「不変部分空間」ということらしい。 |
webadm | 投稿日時: 2010-7-8 21:06 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
π形回路の伝送行列、影像パラメータ、反復パラメータ 次ぎの問題はπ形回路の伝送行列、影像パラメータ、反復パラメータを求める問題。
左端の回路の伝送行列、残りの回路の影像パラメータ、右端の回路の反復パラメータを求めよというもの。 夏風邪をひいたり、アルバイトの仕事が舞い込んだりして時間がとれなくなったが、ほどよい気分転換(現実逃避)になるのでちょくちょく暇を見てやっていこう。 まず左端の回路の伝送行列は、3つの部分回路の縦続接続として計算すると簡単である。 次ぎに上の伝送行列に関する影像パラメータはZ1とZ3が入れ替わった鏡映回路(Fi)と縦続接続した回路の伝送行列の固有値と固有ベクトルから ということになる、FとFiは互いに鏡映回路なのでZ1とZ3が入れ替わっただけの違いでしかない、従ってZ01,Z02もZ1とZ3が入れ替わっただけの違いでしかない。 ここで問題の2つの回路の影像パラメータを計算してみることにする。 中央の非対称回路の場合、 ということになる。 残る右端の回路はZ1=Z3の対称回路であるため ということになる。 また反復パラメータは伝送行列の固有値と固有ベクトルから これもF,Fiが互いに鏡映回路なのでZ1,Z3が入れ違っただけ違いでしかなくZk1,Zk2もZ1,Z3が入れ替わるだけとなる。 問題の右端の回路の反復パラメータは対称回路では影像パラメータと反復パラメータは等しくなることから計算せずとも ということになる。 実際にそうなるか上の反復パラメータの式にZ1,Z2,Z3を代入して確認してみるのは読者の課題としよう(´∀` ) |
webadm | 投稿日時: 2010-7-28 6:11 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3091 |
相互誘導回路と理想変成器 次ぎは相互誘導回路と理想変成器に関わる問題。
上の図のような相互誘導回路に関して ・伝送行列とアドミッタンス行列を求めよ ・密結合(k=1)の場合の等価回路を理想変成器を用いて表せ ・L2とL1の比を一定にしたままでL1→∞,L2→∞とすると相互誘導回路が理想変成器になることを示せ というもの。 理論の時にはいきなり理想変成器だけ出てきたとまどったが、相互誘導回路は演習問題として残してあったのね。 相互誘導回路の伝送行列を求めるには、Fパラメータの各条件を回路に適用して求めれば良い。だが('A`)マンドクセ 以下の様に等価回路に置き換えてしまえばいいのではないか。 これならT形回路なので部分回路の縦続接続として伝送行列を簡単に導くことが出来る ということになる。 アドミッタンス行列は線型代数の座標変換によって ということになる。 さて二番目の題意が判りにくい。理想変成器を用いて等価回路を表せというのはどういうことだろう。問題の意味を理解すれば半分は解けたも同然なのだが。学生の頃に最初の数学の期末試験問題の問題文を見て、まったく意味が解らなくて青ざめた記憶が蘇る。周りにも同じように青くなっているクラスメートが大勢いて少し安心したり。実は問題文の難しさと問題の難しさは無関係である。誰にでも問題の意味が理解できる数学の問題ほど何百年も解けなかった。 逆に問題文が意味不明なのは超簡単であるという可能性がある。 学ぶ身からすればそういった難解な問題文を読み解けるようになるだけの知識を身につけることが必要だが、もっと簡単に意味が解る問題文に言い換える能力も養っておくと後々色々役立つ。なんでもそうだけど難しく書いたり言ったりするのは簡単だが、判りやすく書いたり説明するのは意外に難しい。 アルバイトの仕事で忙しくてまたしても間が空いてしまいそうである。しかし純粋に演習問題の解法を考えるのは現実を忘れられるので今では不可欠である。 (2010/08/16) さて次ぎなる設問は結合係数が1の理想変成器をつかった等価な回路を示せというものである。題意が掴みかねていたが、以下の図のように考えればよいことになる。 巻線比が1:nの理想変成器と縦続して伝送行列F'の二端子対回路が接続された回路が、前述の二端子回路と等価となるF'を求めよという問題に言い換えることができる。 上記の回路を行列式で表すと 理想変成器は可逆回路なので伝送行列の逆行列が存在し、それを両辺に乗じるとF'が得られることになる。 ということになる。 また題意より結合係数(k)は1であることから以下が成り立つ これを代入すると ここで巻線比nは という関係を最後に代入するとF'は ということになる。これはインダクタンスL1が並列に接続されただけの二端子対回路の伝送行列であるため、理想変成器を用いた等価な回路とは ということになる。 もうひとつの等価回路として、理想変成器を前に置いたものが当然考えられるが、どこがどう違うか比較するのは読者の課題としよう(´∀` ) 最後の設問は巻線比を一定にしたままL1,L2を∞にすると上記等価回路が理想変成器そのものになるということを示せというもの。 これはnはそのまま関係式は変わらずに、L1,L2が∞になることから、L1が∞になると上記等価回路の並列L1のインピーダンスが∞となり、従ってF'及びFは ということになりFは理想変成器の伝送行列と等価になる。 |
« 1 2 3 (4) 5 6 7 » |
スレッド表示 | 新しいものから | 前のトピック | 次のトピック | トップ |
投稿するにはまず登録を | |