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webadm | 投稿日時: 2012-12-9 1:11 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
まだまだ:スミス図表 いよいよ最後の問題。これもスミス図表を用いることを意図したもの。
特性インピーダンスZ0=300[Ω]の無損失線路に負荷ZRを接続したところ、負荷からl=60[cm]離れた点で電圧が最小となった。電圧定在波比ρv=2.6として負荷インピーダンスZRを求めよ。ただし周波数はf=100[MHz]とする。 というもの。 電圧定在波比の定義は ということを思い出す必要がありそうである。 また電圧反射係数の定義は というものであった。 従って電圧を測定した点から見た負荷側のインピーダンスZ02と電源側の特性インピーダンスZ01の関係から電圧反射係数が決まることになる。 これらの関係から電圧定在波比から電圧反射係数が定まり、電圧反射係数と線路の特性インピーダンスから負荷側の線路のインピーダンスが導くことができる。そこから負荷のインピーダンスを導けそうである。 まず線路上の負荷から長さlの点から負荷側を見たインピーダンスZは ということになる。 線路上で負荷方向に供給される電力は位置によらず一定であるから電圧最大点では電流は最小点となる 従って電圧最大点から負荷側を見たインピーダンスZmaxは ということになる。これが負荷からの距離lの点のインピーダンスと等しいことから以下の関係が成り立つ これをZRについて解くと ということになる。 これに題意の値を代入すると ということになる。 む、著者の解とはかけ離れている。どっか間違っているに違いない。 検索すると二通りの見解が見つかる (1) VSWRからは負荷インピーダンスを求めることはできない(否定的) (2) VSWRから負荷インピーダンスを求めるにはスミス図表を使う必要がある(肯定的) 著者は(2)の方法を用いているのだが、いまいち魔術的でよくわからない。 (1)の見解が正しいとすると解析的には求めることができないという風にとらえられるが、それでは何故(2)のスミス図表では可能なのか? 最初に導いたやり方は手元の「回路網理論」電気学会編という大変よくまとまっている薄い本の"4.8 特殊条件の分布定数回路"の"4.8.1 無損失線路"に書いてあったもっともらしい方法をそのまま鵜呑みにしてやってみたのだが、それは良くなかったらしい。 検索すると同様の問題に対する質問に(2)の方法で具体的に示しているベストアンサーと評されているものには最後にスミス図表の使い方に致命的な誤りがあり、質問者がそれで問題を本当に解けたのかどうか疑わしいものがある。これらもベストアンサーと評されていても、もっともまし程度の評で正しいとは限らず鵜呑みにはできない。 やはり納得ゆく答えを自分で見つけるしかないようだ。 おそらく間違いの原因は ・VSWRは実数であり、本来複素数である電圧反射係数の絶対値に基づいているので、そこから電圧反射係数を逆算しても絶対値しか得られない(偏角が失われている) これが当初考えたストラテジーを台無しにしてしまっている。 それでは何故スミス図表だと出来るのだろうか? スミス図表で出来るなら解析的にも同じ結果が得られるはずでは? 最初に求めた結果は、「回路網理論」とは別の線型代数的アプローチで同じ結果が得られる。 長さlの線路を二端子対回路とみなすと、以下の関係が成り立つ ここまでは一緒だが、両辺に伝送行列の逆行列を乗じると ということになる。従って受電端から距離lの点から負荷側を見たインピーダンスZが判れば負荷インピーダンスが求められることになる。 問題は負荷からの距離lの点から負荷側を見たインピーダンスZをどうやって求めるかに帰着する。 「回路網理論」では負荷からの距離lで電圧が最大値をとるのだから、インピーダンスは最大値をとるとしている。これに間違いはないのだろうか? もし逆にインピーダンスが最小値をとるとしたら以下のような結果になる。 これに題意の数値を代入すると ということになる。これは著者の結果とかなり近い。著者はスミス図表から規格化インピーダンスの値を読み取っているので誤差があり有効数値が2桁程度しか得られていないが、こちらでは解析的に求めているので厳密解である。 ということは Σ (゚Д゚;) やってしもうた。 題意では負荷からの距離lで電圧は最大値ではなく最小値をとると書いてあるじゃないか(´Д`;) 大失敗 問題文を読み誤っていたのが敗因だった。 みんなも気をつけようね。 ということで後半の結果が出題者が意図していた結果だった。 一件落着。 思わぬ読み間違いで、返って理解が深まった。 VSWRのみでは負荷インピーダンスを求めることはできない。 しかしVSWRと電圧の最大もしくは最小点の距離が判れば負荷インピーダンスを求めることができる(スミス図表を使わずとも)。 という収穫を得たところで、分布定数回路の定常現象の演習問題を終えることにしよう。 やっと終わったよママン(ノД`) |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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スミス図表 | webadm | 2012-12-8 20:09 |
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続々:スミス図表 | webadm | 2012-12-8 21:34 |
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