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webadm
投稿日時: 2013-6-9 22:09
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3094
もうひとつの:無損失線路
次は有限長無損失線路で終端を短絡した問題

受電端を短絡した長さlの無損失線路にt=0で直流電圧Eを加えた。電圧、電流を求めよ。

というもの。

いつも通り無損失条件の電信方程式の基礎方程式をたてると



これの特性方程式から



距離で二重積分してUについて解くと



ということになる。

これに与えられた境界条件を適用してK0,K1を解くと




これを元の途中解に代入すると



ということになる。

これを指数関数表示にして実関数に変換すると



ということになる。

これも前問と同様にジグザグ図を描いてみると



これを元に0<x<lの点の電圧変化をプロットしてみると



ということになる。

E=C=L=l=1として時空間の電圧分布をプロットしてみると



ということになる。

電流に関しても同様に



ということになる。i(l,t)は受電端が短絡しているので、進行波が受電端に到達するとi(0,t)と同じ電流が流れ、同時に電圧反射率が-1のため電圧は0となるが、電流反射率は1のため同じ電流が流れ続けると共に、反射電流として送電端側へ向かっていくことになる。最初の電圧進行波が受電端に到達した瞬間に受電端側に進行波を打ち消すような逆極性の反射電圧源が接続されたのと同じと考えられる。そうすると反射電圧源によって線路が駆動されることによって送電端と同じ電流が線路に流し込まれ、それは進行波の電流と重なることになる。このことを式の上で明らかにできればいいのだが。それは読者の課題としよう( ´∀`)

電流の式は前問の電圧の式と相似だから、線路上のx点では新しい波が到達すると電流値が倍増することが予想される。前問の電圧の場合と異なるのは、送電端の電圧はEで一定だが、電流は制約が無いということである。従って、電流の反射波が送電端に達すると送電端の電流i(0,t)も増えることになる。そしてそれは進行波となってそのまま受電端側へ向かうことになる。

従って0<x<lでの電流は



ということになる。

グラフにプロットするのは読者の課題としよう( ´∀`)

受電端が短絡した無損失線路に直流電圧を印可した場合、定常状態で無限大の電流が送電端で流れるということと一致する。

現実の線路は無損失線路ではないので、送電端の電流は頭打ちになるが、電磁波の場合になると、真空中で向かい合う鏡の間で反射させた場合どうなるか想像してみると面白いかもしれない。おそらくNikola Teslaはこのことに気づいて、現在実用化されているレーザー光線のようなものと思われる殺人光線(death ray)を考案したのかもしれない。Tesla coilで小さな給電電圧から無尽蔵に大きな電圧(電界)を作りだすことができたのだから、同じ要領で無尽蔵に大きな電流(磁界)を作り出すことも可能であると考えたに違いない。もうこのあたりになるとFree energyとか似非科学やMad sienceとかいう範疇に足を踏み入れることになるので、良い子はそこで一歩踏みとどまらなければならない。
webadm
投稿日時: 2013-6-24 0:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3094
続々:無歪み線路
次は前問までの無損失線路の境界条件を無歪み線路に適用した問題。

長さlの無ひずみ線路の受電端を開放して、t=0で直流電圧Eを加えた場合の電圧、電流を求めよ。

というもの。

最初に一般的な送電端と受電端の電圧と電流を与えた場合の、解を求めておくことにしよう。

分布定数回路の基礎方程式をHeaviside演算子とベクトルで表すと



これの特性方程式から



従ってUは以下の作用素方程式を満足することになる



これを距離で二重積分してポテンシャルを出現させると



これをUについて解くと



ということになる。

ここで無歪み線路の条件



を適用すると



ということになる。



これに一般的な送電端と受電端の電圧と電流を境界条件として与えると



ということになる。これをUに代入すると



ということになる。

これに題意で与えられた受電端開放の境界条件



を代入すると



ということになる。

前問の無損失線路と違うのは、電圧および電流の進行波と反射波がそれぞれ終端からの距離に応じてαを係数とする指数関数的に減衰する点である。

電圧分布をジグザグ図で表すと



ということになる。

t=x/cで送信端からの進行波が点xに到達し、t=l/cで開放受電端に到達する。そのときの線路電圧はexp(-αl/c)*E。その直後に開放受電端に反射電圧源が現れたかのように受電端電流を相殺して0にする反射波が送電端方向へ向かうことになる。それは進行波と同じ極性で受電端では同じ電圧exp(-αl/c)*Eとなる。反射波も進行波と同様に線路によって減衰して点xにt=l/c+(l-x)/c=(2l-x)/cで到達する。その時の反射波の電圧はexp(-α(l-x)/c)*exp(-αl/c)*E=exp(-α(2l-x)/c)*Eということになる。重ね合わせの理で受電端電圧は進行波と反射波が重なって、2*exp(-αl/c)*E,点xではexp(-αx/c)*E+exp(-α(2l-x)/c)*Eということになる。さらに反射波が送電端まで達するのはt=2l/cでその時の反射波の電圧は、exp(-αl/c)*exp(-αl/c)*E=exp(-2αl/c)*Eということになる。次の瞬間に理想電圧源が接続された送電端で反射波が反射し、あたかも送電端に送電端電圧を相殺してEにするような反射電圧源が挿入されたような形になり、それは送電端に到達した反射波と極性を反転した電圧、-exp(-2αl/c)*Eが重ね合わさることになる。これが今度は受電端方向に向かっていき、点xにt=(2l+x)/cで到達する。この時の送電端からの反射波の電圧は、-exp(-αx/c)*exp(-2αl/c)*E=-exp(-α(2l+x)/c)*Eということになる。重ね合わせの理でその時の点xの電圧は、exp(-αx/c)*E+exp(-α(2l-x)/c)*E-exp(-α(2l+x)/c)*Eということになる。

無損失線路の時と違ってt=(2l+x)/cでの点xの電圧はt=x/cの時と同じにはならない。反射波が減衰するためである。

送電端からの最初の反射波が受電端に到達するのはt=3l/c,その時の電圧は-exp(-3αl/c)*Eということになる。この時点で受電端電圧は重ね合わせによって、2*exp(-αl/c)*E-exp(-3αl/c)*E=exp(-αl/c)*(2-exp(-2αl/c))*Eということになる。同様にここでも開放端で反射するため、送電端からの反射波と同じだけの電圧が受電端に加わったようになり、それが再び送信端へ向かう。それが点xに到達するのは、t=3l/c+(l-x)/c=(4l-x)/c,その時点での電圧は重ね合わせで、exp(-αx/c)*E+exp(-α(2l-x)/c)*E-exp(-α(2l+x)/c)*E-exp(-α(4l-x)/c)*Eということになる。

0<x<lでの電圧変化をプロットすると



ということになる。点xの電圧は反射が繰り返す度に定常状態へと近づいていくことが確認できる。

同じ要領で電流も求めることができるが、それは読者の課題としよう( ´∀`)

ここまで解答を書いているのは市販のテキストでも見あたらない。

面倒くさいというのと、ここからは読者の力試しということでお約束事になっているように思える。なんでも自分でやって納得するのが一番いいに決まっている。日本の有名な数学者でも学校で習ったことは僅かでほとんどは自分で考えたり本で独学したりしたという話しが多い。他の先輩や同世代の優秀な数学者から良い刺激を受けるというのもあるかもしれないが、それは一種の運だと思う。やはり自分で考えるのが全てを切り開く条件となる。

それでは次の問題に進もう。




webadm
投稿日時: 2013-7-15 8:42
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3094
もうひとつの:無歪み線路
次も有限長無歪み線路の問題。

長さlの無ひずみ線路の受電端を短絡にして、t=0で直流電圧Eを加えた場合の電圧、電流を求めよ。

というもの。

これは前問と同じ線路で受電端を短絡しただけの違いと思って間違いないだろう。

前問でそんなこともあろうかと、一般的な有限長無歪み線路の式を導いておいたので、その結果を利用することにしよう。



これに題意で与えられた受電端短絡の境界条件



を代入すると。



ということになる。

もういい加減慣れてきたのでジグザグ図は省略しよう。

t=0で送電端に電圧Eが印可されると、それは受電端方向へ進行波として進み、点xに達する時点では減衰してexp(-αx/c)*Eとなる。更にt=l/cで受電端に到達すると電圧はexp(-αl/c)*Eとなり、次の瞬間、それを打ち消して0とするような負の反射波が発生し送電端方向へ向かう。反射波の電圧は受電端で進行波と逆極性の-exp(-αl/x)*Eとなる。それが点xに到達する時には減衰して-exp(-α(l-x)/c)*exp(-αl/c)*E=-exo(-α(2l-x)/c)*Eとなる。この時点で点xの電圧は重ね合わせの理で、exp(-αx/c)*E-exp(-α(2l-x)/c)*Eということになる。更に反射波が送電端に到達する時には電圧は-exp(-2αl/c)*Eまでに減衰し、送電端で反射してexp(-2αl/c)*Eという反射電圧源が現れる。それも次第に減衰して点xに到達する時点で、-exp(-α(2l+x)/c)*Eとなり、この時点での点xの電圧は重ね合わせの理で、exp(-αx/c)*E-exp(-α(2l-x)/c)*E+exp(-α(2l+x)/c)*Eということになる。

無損失線路の時と違って減衰があるため振動はあるものの振幅は減衰していき定常状態へ向かう。

更に送信端からの反射波が受電端に到達すると、その電圧はexp(-3αl/c)*Eとなり、それが極性反転して反射電圧源として現れることになる。それが点xに到達すると、-exp(-α(l-x)/c)*exp(-3αl/c)*E=-exp(-α(4l-x)/c)*Eとなり、点xの電圧は重ね合わせの理で、exp(-αx/c)*E-exp(-α(2l-x)/c)*E+exp(-α(2l+x)/c)*E-exp(-α(4l-x)/c)*Eということになる。

これをプロットすると



ということになる。

受電端開放時に比べると点xの電圧は低く抑えられて定常状態に近づいていく。受電端の電圧が常に0なのでそこに引っ張られて線路全体が低い電圧となるのは当然だ。

電流に関しても同様に求めることができるが、こちらは無損失線路の様に際限なく電流が増加するということはあり得ない。受電端が短絡しているので、線路全体の抵抗と漏洩コンダクタンスで決まる定常電流に近づいていくことが予想される。

電流に関してプロットするのは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

著者の解とは異なるのは、著者の解は予めt=0で定常状態(e(x,0)=i(x,0)=0)を暗黙の初期条件としてLaplace変換しているからで、これは問題文には明記されていない。より一般的には初期条件はe(x,0)≠0, i(x,0)≠0であるので、演算子法のほうがより広範囲の解を扱うことができる。このため演算子法を使えばTesla Coilの解を得ることが可能であるがLaplace変換では積分変換が収束しないので扱うことができない。

20世紀に入って演算子法の数学的研究が進むと、積分変換を用いずとも同じ結果が得られることや積分の収束を気にする必要が無いのでLaplace変換では扱えない問題も扱うことができるが証明され、ようやくHeavisideの鬱憤が晴らされたことになる。
webadm
投稿日時: 2013-7-15 17:17
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3094
続:RC線路
次は有限長RC線路の問題

長さlのRC線路の受電端を開放にして、t=0で直流電圧Eを加えるときの電圧、電流を求めよ。

というもの。

理論のときに学んだ通りに、RC線路は熱方程式で表されるため、固有振動現象は生じない。

なのでRC線路については著者は他の無損失線路や無歪み線路のように一般解を求めよという問いは省略している。

その代わり異なる終端条件についての問題を採用している。

当然ながら反射は分布定数回路一般に伴うものであるから避けて通れない。分布定数回路の過渡現象を学ぶ意義は、ほとんどこの反射と重ね合わせの原理を理解することだと言ってもいいかもしれない。そう考えると電信方程式の解だけ判ってしまえば、以前の問題のように思考実験によっておおよその挙動をつかむことができる。

RC線路の基礎方程式をベクトルとHeaviside演算子を用いて表すと



これの特性方程式は



従って自明でない解は以下の方程式を満たすことになる



ここで例によって両辺を距離で二重積分すると



これをUについて解くと



ということになる。

これに題意の受電端開放の境界条件を適用してK0,K1を解くと



これを元の式に代入すると



白状するとこの段階ですっかり立ち往生してしまっている。というのも受電端の電圧e(l,t)は時間の関数なので、時間に関する微分作用素が働くので電圧の解の第二項がそのままだと展開できない。頼みにしていたYoshida本の最後の章"Heat Equation"にみるからに同じ境界条件の解が示されているのだが、最後にインチキをしていて更に特殊な条件の解になってしまっているのが分かってショック。Yoshida本では熱方程式なので、有限長の棒があって左端と右端以外の面からは熱の出入りがないとしており、これはRC線路と同じである。そして左端と右端の温度はそれぞれv1(t),v2(t)と時間依存関数として与えられているとする境界条件も一緒である。そして解も途中までは上の演算子法で導いた結果と等価であるが、最後に時間の関数に変換する際に両端の温度が時間に依存せずに一定(Heavisideの階段関数)とするというインチキをしていたのだ。おそらく最初の境界条件だと時間の関数になるので、面倒くさくなって時間によらず一定としたのだろう。熱の問題を扱うにはこの境界条件で不自然はないが、最初に書いた境界条件と違うだろうと。

まあ人のせいにするわけではないが、数学者でもそういうインチキはよくある。熱の問題の場合、右端の温度を時間の関数にするには、特殊な熱を反射する反射板を端面に貼付けないといけない。熱を逃がさずに全部反射する材料など現実に存在しないなのでスルーされることになる。一方でRC線路の場合は、受電端を開放すれば電圧が即時に送電端側に反射するのでこれはこれで自然であり無視できないが、問題そのものが古典的すぎるのでスルーされる。

RC線路自身は古い時代のものだが、放物型の熱方程式もしくは拡散方程式と等価で実は双曲型の波動方程式とかよりも奥が深い。未だに熱方程式の解法に関する論文が書かれ続けているのはそのためである。未解決な境界条件の問題が残されているということである。

RC線路で検索しても同じ問題を扱った記事は出てこないので、熱方程式とか拡散方程式で検索するといくつも見つかる。ほとんどは大学の教養課程で扱われる簡単な問題(無限長もしくは半無限長)ですましているが、一部はそれを一歩超えた有限長の問題を暑かっている。いくつもの境界条件の設定が議論されているが、熱の問題にふさわしくない条件はスルーされているのがほとんどである。特に端点の温度が時間の関数になるようなもの。ひとつだけ著者とまったく同じ解を提示しているものも見つかるが、読んでみても導出過程が省略されていてよくわからない。著者の解もどっから見つけてきたのか著者自身が導いたのか謎だが、Laplace変換の公式を使ってさらりと解を示している。多分間違いないのだろうけど、なぞるだけではその確証が得られない点が問題だ。

突破口としては、著者の解を検証してみるということもしないといけないかもしれない。著者が利用したLaplace変換対は検索してもどこにも見つからない。著者は出典も明らかにしていないので、誰がいつ導出したのかも謎だ。まずはそれが正しいかどうか確認してみるのも手かもしれない。

一方で手元にあるMikusinski本のHeat Equationの章をみると、Yoshida本ではインチキでスルーされた境界条件についても詳しく解かれていることが判明。著者の解と良く似た形の解も示されている。Yoshida本では本の最終章であるのと紙面数の都合からやむなく割愛された可能性が高い。最初のほうと最後のほうの内容はMikusinski本のそれと同じで、途中だけが省略されている。微積分の基本定理もしくはStorksの定理ではないが、積分は境界での積分値がわかれば境界で囲まれた範囲を積分したのと同値ということなのかもしれない。

とりあえず手近なMikusinski本を調べてみることにしよう。まずはそれからだ。

Mikusinski本では最初に終端が0固定の境界条件について解いているが、その導出過程は上の開放端RC線路の条件でも参考になる。



結局のところ、Mikusinski本も様々な境界条件を扱っているものの、いずれも片方の境界条件は定数でしかも定常状態と同じ0としている点では他書と同じだった。最初に境界条件は時間の関数としておきながら、例題を解く段階になると突然定数にしてしまうのはYoshida本と同じ。元の前提である時間の関数である一般的な場合についてはまったく触れずに完璧にスルーしている。なので解けるのかどうかも分からない。

Heavisideの演算子法を使って解くと、その解は必ず元信号源と反射信号源を伴った同次作用素方程式になることが明らか。これは理論の時に紹介したHeaviside自身による結論であるのだが、それは正しいのだという気がしてきた。

Laplace変換を使用した場合には、特に詳細な解の導出過程が示されている場合を除いては、途中段階で暗黙の近似処理が行われている可能性が高い。例えば関数の積分や微分をLaplace変換した場合には、必ずt=0での関数や導関数の初期値が現れるのだが、それを残したままにすると後々金魚の糞みたいに長くのこって邪魔になるので、現れた瞬間に暗黙の了解で0と見なして項そのものを消してしまっていることが考えられるからだ。実はそれが意味をもつような条件の場合には、そうして得られた解は誤りということになる(多分にt=0の直後や近傍で近似が成り立たない)。普通はそんなt=0+のところなんて気にしないからいいのかもしれないが、厳密には納得がいかない。

そこで道々考えていたら、以前2端子対回路を学んだ際に使ったあるアイデアが思い浮かんだ。線非対称な二端子対回路の影像インピーダンスを求めたときのことを思い出してほしい。あれは線形代数で言えば固有値問題だが、今回も実は固有値問題なのだ。しかも線路は線非対称(送信端には電源が接続され、受電端は開放か短絡)。有限長なのだから、これを受電端に鏡をおいたような形に対称に同じ線路を接続して、両端に電源がつながったような形の線路を考えればいいわけである。中心線の部分では電流が流れないので開放と同じである。なんだ簡単じゃないか( ´∀`)



左半分の回路と右半分の回路は線対称で、同じ回路。つまりこの図の線路の電圧と電流を求めるのと本問題は同値ということになる。

他に同じ考え方で以下の回路の電圧と電流を解く問題も同値である。



ただし、片側の線路の電圧や電流の変化が反対側の線路に一切影響を与えないという条件付きである。

そもそもRC線路は電流が流れるにもかかわらず磁界は一切発生しないという矛盾を抱えている。また線路の端ともう一方の端は抵抗で連続的に接続されているので、t=0で一端に電圧が加えられると瞬時に抵抗分圧された幾ばくかの電圧が現れる(無限の速度で信号が伝わる)という矛盾も抱えている。

実はこの抵抗という素子が電気の世界ではくせ者であることが次第に判っていくことになる。集中定数回路で考えても抵抗のみから成る回路は電流が流れても磁界は発生しないという約束である。実際の抵抗器はそうではないので現実には存在しない理想的な素子ということになる。実際の素子でも非常にごく短い時間に電圧や電流が変化することが無い限り抵抗器に電流が流れても磁界は(ほとんど)発生しないと理想抵抗器として扱うことができる。厳密には僅かでもインダクタンス成分があれば電圧を印可したt=0+の近傍での挙動の違いとして現れる。

理想抵抗器は電磁気学でも扱い難い。流れ込んだエネルギーの一部は熱となって周囲に放射されると同時に電流として流れ、直列に接続された他の素子に伝わるということになる。つまり抵抗器は電気のエネルギーを熱に変換するエネルギー変換器なのだが、これは電磁気学だけでは説明できないからである。なぜ電流が流れると一部の電気エネルギーが熱エネルギーに変わるのかという疑問に電磁気学は答えてくれないからだ。

熱や粒子の拡散、それにRC線路は共通の熱方程式もしくは拡散方程式で表すことができるが、それはそうした矛盾をも引き受けなければならないことを意味する。電信方程式もインダクタンス成分(L)と漏洩コンダクタンス成分(G)を共に0に近づけることで熱方程式もしくは拡散方程式が現れる。実に悩ましいことである。

さて線対称の回路にしたところで問題は簡単になるのだろうか?

(2013/8/1)

また大分間があいてしまったが、上の疑問に対する答えの確信はあったのだが、計算するのが面倒だった。

基本的なアイデアは重ね合わせ(Superposition)の理である。



受電端を開放にした長さlのまったく同じ2つのRC線路を受電端を線対称に向かい合わせに接続すると鏡の様に対称になる。両端の送電端に同じ階段状の直流電圧を時刻t=0で加えると、中心点では電流が流れずに重ね合わせによって両端から減衰して伝達してきた電圧が合成され2倍になる。電流は流れないので電圧は反射するが、それはちょうど中心点を波が通過するように重なり合うことになる。これは反射したのか鏡の向こうから伝わってきたのかは区別がつかないことになる。

従って長さlの受電端開放のRC線路の送電端に階段状の直流電圧を加えた場合の受電端の電圧は、2倍の長さの受電端を短絡したRC線路の送電端に同じ階段状の直流電圧を加えた場合の中点での電圧の2倍になることが予想される。受電端を短絡した場合には、受電端の電圧は常に0なので、これは熱方程式を扱っている教科書ならほとんど全て扱っている簡単な例題である。

同じ考え方で、これ以前の問題で受電端の電圧や電流が時間の関数として解の中に現れるものがあったが、それも重ね合わせで解けるかもしれない。もちろんそれ以外の解法もあるはず。

(2013/8/19)

だいぶ間が開いてしまったが、紙の上で上で試算してみたところ、どうやら電圧分布に関しては予想通り解けることがわかった。電流は向き付けのことを忘れていたが、進行方向と反射方向とで電流が互いに打ち消す向きに流れるので、中央では電流が0になってこれも予想通り。線対称回路なので、電流分布も電圧分布も線対称となることは明らか。

後日詳しい導出過程を書くことに。

次いでに色々思考したら、線路を円環状につなげることができることも発見。線路が2本の平行線で構成すると、ぐるっと円環状にすると2本の輪が並列に並んだかたちになる。その一点に電源が接続されることになる。

同様に受電端が短絡した線路の場合は、片方の線路が180度回転して捻って接続したのと等価であることに気づいた。電圧分布は互いに逆極性となるため、打ち消し合う方向に重なる。逆に電流は同じ方向に流れるので互いに強め合う。中央では電圧分布は0になることも確認できる。これはちょうとMebiusの輪の一点に電源を接続したような形になる。

(2013/8/26)

少し涼しくなってきたので再開。

まずは片方の2倍長線路(受電端短絡)の解を求めてみよう。

方程式は同じで、違いは受電端の境界条件がx=2lと二倍に伸びるのと、電圧が0で電流が未知の関数i(2l,t)となる点だ。



これを元の解に代入すると



ということになる。

もう片方の回路は、空間方向が正反対にして空間座標をx'に書き換えればよい。更にx'=2l-xという関係が成り立つので、最初の回路と同じ空間座標xを用いた式に変換することができる。つまり上の結果のxを2l-xで置き換えればいいわけである。i1も未知関数-i2に書き直す。2つの回路で電流の向きが逆なので符号が反転する。



従って重ね合わせによって、



また回路の対称性により、以下が成り立つ



加えて重ね合わせた回路の半分が問題の回路と等価であることから、以下が成り立つ



これらを適用すると



ということになる。

依然としてi(0,t)が未知関数として残るが、電圧分布は解けたも同然。

あとは時間に関して変換すればいいことになる。

上の式は以下の様に双曲線関数で表すことができる



上の式は与えられたx=0とx=lでの境界条件を満たしていることを簡単な計算で確かめることができる。

(2013/8/30)
文脈と関係ないが、著者の電流の解に間違いがあるのを発見した。
著者はlaplace変換公式を用いて電流の解を導いたはずだが、何故か変換公式とは違って指数関数の指数にt^2が含まれている。これは本来は公式と同じようにtでなければならない。

さてここからが演算子法の腕の見せ所

ここまで金魚の糞みたいに右辺の後ろに付いてきた級数は以下のように書き直すことができる



これを代入すると



ということになる。確信していた通り問題は少し易しくなった。

電流分布の式は最初に実直に求めた結果と同値であることが確かめられた。電圧分布は反射信号源e(l,t)項が消失し、代わりに交代べき級数が現れている。

次に目の上のたんこぶなのが送電端の電流i(0,t)である。x=0とx=lを除いた線路上では進行波と反射波の電圧分布と電流分布が特性インピーダンスによって



という関係が成り立つ。

ところが単純に長さlの受電端開放の線路を考えた場合、電圧が常に一定に保たれている送電端(x=0)と電流が常に0となる受電端(x=l)ではこの関係が成り立たないことは明らかである。

線対称な長さ4lの等価回路で考えた場合に中点の受電端に相当する部分には線路の不連続性がないため進行波と反射波に関して上記の関係が保たれることがわかるが、受電端の電流は0と自明なのでこのことはどうでも良い。

問題は定電圧源で終端された送電端の電流i(0,t)である。

どうすんだこっから(´Д`;)

ここで数学の解析で言うところの極限を初めて考える必要がある。

xを限りなく0に近づけていった場合、線路は均一かつ連続なので電流に不連続点は現れないはずである。すると連続のままでx=0に限りなく近い点に収積点が存在することが予想できる。

この予想を数学的に証明しようとすると演算子法による関数空間の写像が絡んでくるので位相空間を持ち込む必要があり面倒極まりない。

なのでここで厳密性には目をつぶってx=0で極限が存在する(収積点が存在する)と見なすことにする。もし間違っていてもx=0の点だけ不連続な電流が流れるということで目をつぶってもらうことにする。

x=0に関して収積点が存在すると仮定すれば、



ということになる。

これを適用すると



と解けたも同然になった。

こっからどうすんだ(´Д`;)

前紹介したCourant & Hilbert本のp527 "Appendix 2 to Chapter V Transient Problems and Heaviside Operational Calculus"の"4. Wave Equation"に似たような少し簡単な例があった。

演算子関数T(x)が



の場合、解が



となるというもの。

同様に



解は



本問題の場合には、波動方程式ではなく熱方程式である点が違うが、基本的なやり方は間違ってなさそうである。

Courant & Hilbert本のやり方をまねてやってみると



ということになる。

全然著者の解とは似ても似つかないからといってなにも恐怖に戦くことはない。簡単な計算でx=0とx=lでの境界条件を満たすことを確かめることが出来る。またlを無限大に移行することによって無限級数項が消滅し以前の問題で導いた無限長RC線路の解が得られることもわかる。

x=0に集積点は存在するがt=0では電流分布が不定となることが見てとれる。

さてこの解をグラフにプロットしたいところだが無限級数と誤差関数の積分がまたしても悩みの種。

解のプロットは読者の課題としよう( ´∀`)

やっと終わったよママン(ノД`)

いやまだ残りの問題がある。

次へ進もう。

P.S

といってもなんなので参考までに級数を100項で打ち切ってE=C=R=l=1として電流の解をプロットしたものを下に示す。



大きなCとRにも関わらず、僅か数秒でほぼ定常状態(電流が0)に落ち着いてしまうことが見てとれる。熱伝導に例えれば熱の移動が定常状態に近づくにつれほとんど無くなるということに相当する。

ちなみに著者の解をプロットしようと試みたのだが、とても正解だとは思えない結果が現れて動揺してしまった。あのlaplace変換の公式はどっからもってきたものなのだろうか?どうもそれが怪しい。
webadm
投稿日時: 2013-9-5 9:46
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3094
続々:RC線路
次も有限長RC線路の問題

長さlのRC線路の受電端を短絡にして、t=0で直流電圧Eを加えるときの電圧、電流を求めよ

というもの。



これを今まで通りに解くと、境界値問題だが両端の電圧は与えられているので解は得られるものの、電流の解は送電端電流i(0,t)と受電端電流i(l,t)が未知関数として残ってしまうため、それをどうにかして決定しないといけないという問題がある。

前問で色々思考した中で副産物として得たアイデアを使わない手はない。

前問では開放された受電端の電圧が未知関数だったので、それを式から消去するために同じ回路を逆向きに対向接続して2倍長の受電端が短絡されたRC線路の解を重ね合わせるというテクニックを使った。

それと同じように、今度はx=lで線路の電圧が0となるように同じ線路を180度ひっくり返して(電流の向きは同じで電圧の極性を右と左とで逆にする)対向接続した回路を考える。



この回路は中央で左右が歪み対称となる(向きと上下が逆になる)。

またこの回路は前問の時に書いた通り、Mebiusの輪のように180度捻って電源を一つに出来る。

それをへたくそな図で描くと



ということになるが、実際には3次元空間で交差しているので二次元に写すと途中で交差しているところが接触しているように見えるが、あくまで上下の線は一定の間隔を保って絶縁されていると考えて欲しい。絵がへたくそですまん。

このMebiusの輪みたいな構造を身近で判りやすいもので例えると、数珠とかネックレスを180度捻って半分を残り半分の方に重ねた状態と同じである。

実際に数珠でそれをやってみよう

使用するのは装飾用のブレスレット状の数珠ではなく、仏教儀式で使用する本連数珠という108個の主珠が連なった大きなものである。



これを半分180度捻ねると連珠形(レムニスケート:lemniscate)となる



半分を残り半分の上に中央で折りたたむように重ねるとMebiusの輪状になる。



この形にすると片手に納まる。このような形に手で素早くやるには人それぞれのやり方があるが、それはどうでもよい。

なんの話しだったけ。

ああ、等価回路の話しだった。どこでも良いのでこうして出来た輪の線路の一点にt=0で電圧を印可するのである。

それをイメージし易くするために電池をつないでみると



ということになる。これで最初に描いた回路の意味が多少とも理解できれば幸いである。身近なところに電気回路や数学とつながるものがある良い例である。

前問で後半やったように重ね合わせの理を使うと



ということになる。

前問と同じようにe1(x,t),i1(x,t)について先に距離に関して解いて、歪み対称なe2(x,t),i2(x,t)の途中解を求めて、重ね合わせるというアプローチをとる。

Heavisideの演算子とベクトルを使って基礎方程式をたてると



これの特性方程式は



従って解は以下の方程式を満たすことになる



これを距離に関して二重積分してポテンシャル項を出現させると



これをU1について解くと



ということになる。

ここで送電端と受電端の境界条件を与えてポテンシャル項について解くと



ということになる。

これを元の式に代入すると



ということになる。

さて上の途中解は電圧は解けたも同然だけど、電流に関しては送電端と受電端の電流が未知関数として残ってしまう。とりあえず今はここまでにして、次に歪み対称なもう片方の線路の解を導出することに。

もう片方の線路の空間座標をx'とすると、最初に求めた線路上の空間座標xとは以下の関係がある。



従ってもう片方の歪み対称な線路の解は、先の解の式のU1をU2,xを2l-x、Eを-E,i1をi2に置き換えることで



ということになる。

歪み対称線路を対向接続したので、前問のときとは逆に重ね合わせると電圧は打ち消し合い、電流は強め合うことになる。

従って二つの回路の解を重ね合わせると



ということになる。

ここで回路の対称性から電流に関して以下の関係が成り立つ



また重ね合わせの理から以下の関係が成り立つ



これらを適用して整理すると



ということになる。

ここで前問と同様に以下の関係が成り立つことから



x→0において以下の収積値を持つ



これを代入すると解けたも同然になる



ということになる。

またしても著者の解とは違っていても気にすることはない。簡単な計算で送電端と受電端の境界条件を満たすことを確かめることができる。

電圧及び電流どちらも、l→∞に極限移行すると級数項が消えて以前に導いた半無限長RC線路の解が現れるのを確認できる。

電圧分布をE=R=C=l=1として級数項を100で打ち切ってプロットしてみると



ということになる。

t=0近傍のみ過渡的な電圧分布が現れるが、すぐに定常状態に達して抵抗分圧で決まる直線的な分布になっていることがわかる。受電端では
最初から電圧が0となっている。

電流分布のプロットは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

著者の解をプロットしてみたのだが、とても正解だとは思えない結果が得られるので注意しておく。

そもそも何故解の中に三角関数が出てくるのか疑問だったが、Yoshida本やMikusinski本の熱方程式の章の後半に著者の解と似たような式が登場する。それはHeat ringという円環上の一点に一定の温度を加えた場合の温度分布を求める問題である。この熱方程式の問題はFourierが奇抜なアプローチで解いたことで知られる。数学者にとってはFourierは歴史上無視できない存在なので、解がFourier級数で表すことができると仮定して解いている、伝統的にそうしているわけである。

これについては別途時間があれば検証してみたい。少なくとも著者の解をプロットしようとしても級数の収束が遅いのか級数を100項で打ち切った場合、とてもあり得ないとしかいいようがないグラフが現れることは確かである。
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投稿日時: 2013-9-8 21:11
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またまた:無損失線路
再び無損失線路の問題

図に示すように無損失線路を抵抗Rで終端し、t=0で直流電圧Eを加えたときの電圧、電流を求めよ。

というもの。



これも境界値問題である。

ただし無損失線路なので、特性インピーダンスと等しい抵抗で終端した場合には無限長線路と等価になることは容易に予想できる。従ってRが特性インピーダンスより小さい場合と大きい場合が考えられ。その極限が受電端短絡と、受電帯開放であることもわかる。

Heavisideの演算子とベクトルを使って基礎方程式をたてると



これの特性方程式は



従って自明でない解は以下の方程式を満たすことになる。



これを距離で二重積分してポテンシャル項を出現させると



これをUについて解くと



ということになる。

ここで境界条件を与えてポテンシャル項について解くと



ということになる。

これを元の方程式に代入すると



ということになる。

i(0,t)はよいとして、i(l,t)が未知関数として残る。

どうすんだこれ(´Д`;)

以前の問題では受電端が開放だったり短絡だったりで受電端の電流か電圧のいずれかが題意で与えられていたが今回はどちらも未知ということになる。言い換えれば、以前の有限長無損失線路の問題を包含する形で少し一般化した問題と言える。更に一般化するには受電端を複素インピーダンスZで終端する必要があるが、それは難しいので(といってもたいしたことはない)、少し特殊だが実数のインピーダンス(R)だけを考えるというわけである。

著者はオーソドックスな偏微分方程式の解法とLaplace変換を組み合わせたような見通しの悪いやり方で解にたどり着いているが、それが良いとも思えないで演算子法ならではの見通しの良いやり方を自分で見つけるしかない。

以前の有限長無損失線路の問題では受電端の電圧と電流は互いに一次独立だったが、今度は一次独立ではなくなってしまっている点が異なる。つまり受電端の電圧は受電端の電流に依存し、逆も真なりというわけである。

とりあえずこのままの形で解いてみることにしよう。



ということになる。

どうもIQが低下してしまってさっぱり見通しがつかない。特性インピーダンスと受電端の負荷抵抗Rの関係だってさっぱり見えてこない。

どうすんだこれ(;´Д`)

著者の解を読んでみたが、筋としては間違っていないと思うが、古典的な解放とLaplace変換をチャンポンにして解いていろのが気に入らない。どうして最初から最後までLaplace変換だけでやらないのか?

既に以前の問題で解いている極限の境界条件(短絡と開放)については前問やその前の問題で用いたアイデアにより、重ね合わせで解くことができる。しかしその中間の条件ではそう簡単にはいかない。

思考実験してみると、R=0では受電端は短絡となり、受電端の電圧は0となる。これは以前の問題で扱った。もう一つの極限としてR=∞では受電端は開放となり、受電端の電圧は最高で送電端の電圧の2倍となる。またその中間のR=Z0では受電端の電圧は送電端の電圧と等しくなる(無損失線路なので)。それ以外のRの値の場合では、それらの中間点を取ることになると予想される。

通勤電車の中で考えたんだけど、R=0とR=∞の極限の場合には、同じ線路を受電端を中心として鏡に映したように対向接続した回路、極性を反転して対向接続した回路とそれぞれ等価であることがわかる。それではその中間のRの値ではそうした等価回路は存在するのだろうかというのが疑問としてわき起こる。



普段通勤電車やお昼休みの食後のお昼寝前には森毅の本やランダウ&リフシッツの本とかを読みながら、この問題のことを思い出したりしている。その時にふと思いついたのが線路と電源を線対称に対向接続した中心点に集中定数回路である対称Latice回路を挿入したらすべてのRに関して等価な回路が実現できるのではないかというものである。



対称Latice回路は線路に直列に2つのR1が並列にR2が接続された格子状の二端子対回路である。出力端を開放にした場合、駆動点インピーダンスは(R1+R2)/2となる。R1=0,R2=∞の場合、これは開放端と等価になる。逆にR1=∞,R2=0の場合は短絡と等価になる。問題は0<R<∞の場合にどうなるかである。

この回路は以前の問題の様に重ね合わせで解くことができる。

R1とR2の組み合わせのパターンとしては以下の図で考えるとわかりやすい



左右の極限のパターンは既に書いたとおり。それ以外にR1<R2な領域とR1>R2な領域、それにR1=R2という点が存在する。

興味深いのはR1=R2のケースである。



対称Lattice回路というのは、初歩の直流回路で学んだ上の様なブリッジ回路そのものである。ブリッジには平衡条件というのがあり、上の回路ではR1=R2が該当する。ブリッジが平衡すると入力電圧V1がいくらであっても、出力電圧V2は0となることはもう知ってるよね。検流計を接続する電流が流れないという条件。

従って、R1=R2=Rとすると、ちょうど入力端および出力端どちらから見てもRで終端されているように見えて、かつ信号は通り抜けることができない(平衡状態にあるため出力は0V)ということがわかる。

つまりR1=R2の対称Lattice(格子型)回路で線路を終端すると、それはまるでR1=R2=Rで終端されて、その先になにも線路が接続されていないのと等価ということになる。なんということだ。

その他のケースとして、R1≠R2かつ駆動点インピーダンスがRと等しくなるケースがR1<R2とR1>R2のそれぞれについて一つずつ存在する。この場合、後続する線路が無く開放端ならばR1+R2=2Rということになるが、後続する線路がある場合、特性インピーダンスZ0がブリッジの出力に接続されていると局所的には見なすことができる。しかしそれだと今度は後続する線路の終端から反射した波が再びブリッジを通過するということになる。実際にはR=Z0のケースでは反射は生じないはずだからR1≠R2の場合に駆動点インピーダンスがZ0と等しい回路では矛盾が生じるため問題の回路とは等価でないということになる。

それでもR1≠R2の場合に重ね合わせで解を求めて、R1→R2=Rに極限が存在すればそれがR1=R2=Rの解ということにはなる。しかしそこまでやらなくても、いい気がしてきた。

昔やったようにブリッジ回路の解析をやってみると、負荷として特性インピーダンスZ0が接続された条件で駆動点インピーダンスがZ0に等しくなる条件を導くと



という結果が得られる。これは上の条件を満たすR1とR2の組み合わせが無限に存在することを意味する。その中で唯一R1=R2=Rだけが、後続する線路の影響を受ないため問題の回路と等価となる。極限の(R1=0,R2=∞)と(R1=∞,R2=0)、それに中間の(R1=R2=R)以外は問題の回路と等価ではないということが明らかになる。上の式の導出が正しいかどうか検証するのは読者の課題としよう(´∀` )

問題は受電端を抵抗Rで終端した場合、そこに波が到達した場合に電流がどれだけ流れるかである。

少し思考実験してみよう

R=Z0の場合には反射は発生しないため、受電端に流れる電流は近傍の線路の電流E/Z0と等しくなるはずである。その場合、受電端電圧は送電端電圧と同じEとなるのはいい。

R=0の場合には、受電端電圧0で良いが、電流はいくつかが問題である。この場合、受電端にR=0の代わりに受電端近傍の電圧と同じ電圧で逆極性の反射電圧源を接続したとみなせば電流は重ね合わせによって2E/Z0が流れることが予想される。

R=∞の場合には、開放端の代わりに受電端近傍の電圧と同じ極性で同じ電圧の反射電圧源が接続されているとみなせば、電流は0となり受電端電圧は重ね合わせによって2Eとなることが予想される。

それでは0<R<Z0の場合はどうだろう。受電端に進行波が到達した瞬間、鎖交磁束普遍の理で電流はE/Z0のまま終端抵抗Rに流れようとするが、抵抗Rによる電圧降下と受電端に到達した電圧に差が生じる。その差が進行波とは逆極性の反射波電圧源として終端抵抗Rに直列に現れることと等価になる。



反射電圧源電圧E1に関して以下の関係が成り立つ



この反射電圧源によって生じる反射電流I1は



ということになる。

従って最初の進行波が受電端に到達した時の電圧と電流は



となることが予想される。

同じ結論を受電端近傍を局所的に分布定数回路の定常問題として解いた場合に、電圧反射係数と電流反射係数から容易に導くことができる。

R>Z0の場合にも上の原理は適用できて、今度は線路の電流E/Z0がRに流れようとすると、線路の電圧よりも高い電圧降下が生じることになる。その差として反射電圧源が進行波電圧と同じ極性でRと直列に発生することになる。





上の式でR>Z0の場合には電流はE/Z0より減少し、電圧はEより増すことが確かめられる。またR→∞の極限では電流は0になり、電圧は2Eとなることもわかる。

さてこれらの結果から、任意の時刻tでの受電端の電圧と電流は

わがんね(;´Д`)

どうにもIQが低下して頭の中で反射の反射を重ねていくとわけが分からなくなってしまう。

新たな視点が必要だ。

そもそも解の座標軸が電圧と電流というのがややこしい。どちらも進行波と反射波の重ね合わせなので、当たり前である。ここは久々に線形代数を使って座標を変換してみるのが良さそうである。

上の思考実験では、送信端から最初の進行波が受電端に到達すると、電圧反射係数を進行波の電圧に乗じた反射波が現れて送信端方向に向かう。従って電圧反射係数が正なら進行波と重ね合わさって進行波よりも大きな電圧が現れる。電圧反射係数が負なら電圧は相殺しあって小さな電圧が現れる。だから、最初から進行波と反射波を独立に扱えばいいのであるが、送信端に到達した反射波は送電端で反射して今度は受電端方向から依然としてやってくる反射波と重なり合うことに、送電端の電源から供給される元祖進行波もそれに加わることを考えるとやっぱりややこしい。

もっといいのは、進行波と反射波をエネルギーか電力に相当する成分からなるベクトルで表すのがよさそうである。進行波の電圧と電流の積と、反射波の電圧と電流の積。

だめだますますわがんね(;´Д`)

(2013/9/26)
台風が接近している所為で不快指数が上昇したものの気温が夏に比べて低いので耳鳴りとかの症状は悪化せずにすんでいる。耳鳴りが酷いときはたいてい頭の情報処理能力が低下している時なのでIQも下がって何をやってもうまくいかない。そういう日は悪あがきせずに体と神経を休めるしかない。

そうやって神経を休めた結果、混乱していた頭が少し整理がついてきた。送電端に到達した反射波が反射するとどうなるかは実に簡単明瞭だった。以前の問題で受電端を短絡または開放したケースの問題を解いたときの記事を読み返していたら、なんでこんなことに気づかなかったのだろうとIQの低下のひどさを思い知らされた。

送電端は電源が直結されているので、受電端からみると終端が短絡されている回路と、電源が接続された回路の重ね合わせになる。終端が短絡している場合の電圧反射係数は-1なので反射波は送電端で極性が反転して受電端方向へ跳ね返っていくから、受電端からやってくる反射波を打ち消すことになる。従って送電端に接続された電源からの進行波のみが受電端方向へ進んでいるように見えるということになる。

無損失線路の場合は線路上では減衰は生じないので、進行波も反射波も形をかえずに素通りするだけ。

ということで、問題は受電端の電圧および電流反射係数が終端抵抗Rと線路の特性インピーダンスZ0によって変わる点が以前解いた受電端短絡と開放の問題と決定的に違う点である。

ここまで悟ればなんとか突破口は見えそうな気がする。

(2013/10/9)
いろいろ迷い道をしたようだが、演算子法で導いた途中解とここまでの思索で得た結論を組み合わせることによって最もエレガントが解が得られることを確信した。

思考実験の結果予想されることは一部誤りもあることが分かった。電圧分布に関しては例外的な極限(受電端短絡か開放)条件を除いては繰り返し関数にはならないという点である。これは電圧分布が進行波と反射波の合成とみなすのは正しかったが、受電端および送電端での反射を考える際に入射波のみを考えるべきだった。その修正を行うことで、ジグザグ図で最初に受電端に入射した元信号は受電端で反射して送電端へ進行し、送電端で反射して再び受電端へ向かう。送電端の電圧反射係数は短絡端なので-1となり、後から脈々とやってくる入射波を送電端からの反射波で打ち消すから、やがて受電端に達すると受電端の電圧は元信号電圧に戻るというところまでは間違いないが。その後はせっかちして、それの繰り返しと考えてしまったのが間違いである。実は送電端からの反射波は受電端で再び新しい反射波を生み出すのである。これが真実だ。

途中までの解は実にそれを正直に表していたがそれを解釈できるだけの知識と考察が足らなかった。線路上ではジグザグに折り返して進む反射波が以前の反射波と重ね合わせて打ち消しあったり、強め合ったりする。受電端が短絡、開放の場合を除いては反射係数の絶対値が1未満なので、いずれにせよ新しい反射波は次第に減衰していくことになる。t→∞の極限では反射波は消滅して電圧分布も電流分布も定常状態になる。

(2013/10/10)
一見簡単そうに見えて複雑なこの問題の解の姿を直感的に理解するために以下の図を描いてみた。



実際に想定するのは平たいテープ状の無損失線路が長さl毎に節が集中定数回路とクロス接続でつながった無限長のサナダムシみたいな回路である。平面で描くとクロス接続が分かりづらいがテープを180度ひねったようなものと思えばよい。集中定数回路は送信側方向からみると駆動点インピーダンスが線路の特性インピーダンスと同じZ0だから反射波は発生しないが、その代わり(R-Z0)/(R+Z0)の電圧反射係数を透過率とする電圧を出力する。透過した電圧は後続の線路に印可され進行波として伝わっていく。その先のクロス線路で上限の線路が入れ替わり、上からみると電圧の極性が判定したような電圧分布で進行波が進むことになる。それを延々と果てしなく無限に続いていく。

この折り畳めるような線路を長さlに重ねて折り畳んで、互いに重なった線路の電圧を足し加えていくと、問題の長さlの線路の電圧分布と等しくなる。波が同じ線路を折り返すと混乱するが、違う空間を進んでいくと考えるとその混乱はなくなる。重ね合わせればよいわけである。

上の図では(R-Z0)/(R+Z0)の電圧反射係数(上の図では右端の集中定数回路の電圧透過係数)が負の場合(すなわちR<Z0の場合)には、右端の透過波は侵入波とで極性が反転する。左端は送電端と等価なので電圧反射係数は-1となるので必ず極性が反転して減衰ぜずに折り返して進んでいく。このあたりが単純に長さlの有限長線路上での波の折り返しを考えようとするときに無用の混乱を招く原因であるが、有限長で折り重なってはいる無限長の空間を一方向に波が進んでいくと考えると簡単明瞭である。

さて入射側から見たインピーダンスがZ0で電圧透過率が(R-Z0)/(R+Z0)となるような都合の良い集中定数回路が果たして現実に存在するのかどうか疑問だが、仮に存在するとして考えればこれで良いことになる。入力側の線路も出力側の線路も同じ特性インピーダンスZ0の無損失線路であるから、入射波と透過波は一対一の線形写像となるから集中定数回路として作れそうな気がする。

同じように電流についても図を描いてみると以下のようになる



線路の接続トポロジーは電圧の場合と同一である。事情が異なるのは、右端の集中定数回路に入射電流が入ると電流反射係数(-(R-Z0)/(R+Z0))を電流透過係数とする出力電流が出力側線路に流れるのと、左端では電流反射係数は1となる点である。電圧の場合の極性は線路の幅方向の向きだったのが、電流の場合には線路内を時計方向に回るように流れる場合を正極性としている点に注意。線路を折り返し重ねた場合に方向が同じであれば同じ向きの電流として重なる。電圧の場合と事情が違うため、左端の折り返しをターンした電流透過波は入射波と同じ向きになるため重ねると互いに強め合う(同方向)。電圧の場合には左端で折り返すと波は逆極性で進むため重ね合わせると打ち消し合う。

電圧と電流で共通するのは、右端を通過する際に波は常に受電端の反射係数(上の等価回路では透過係数)が係数として乗じられて出ていくため、係数の絶対値が1未満の場合には、波の先端が通過する度に振幅は減衰し、t→∞の極限では完全に消失することになる。それが定常状態となる。係数の絶対値が1と等しくなる特殊な場合(受電端短絡もしくは開放)には送電端に直流を印可した場合でも過渡項が永遠に消滅しないため定常状態が存在しないことになる。受電端が開放もしくは短絡された有限長無損失線路は回路内でエネルギーが消費されないので、最初に入ってきた波が永久に線路内を往復し続けることになる。それは電源を途中で取り去っても同じである。

こうして見ると、有限長の分布定数回路の受電端が開放や短絡を含めた任意のインピーダンスで終端されている場合でも、有限長で折り畳まれた無限長の分布定数回路の空間を波が一方向に進んで行くと考えることができる。空間が折り畳まれて重なりあっているので、観測される物理量(電圧、電流)も重ね合わさった値となる。こうした重ね合わせの理は物理学でよく使われる。無限に長い線路空間が有限長で折り畳まれてぴったり重なっている場合、その空間の厚みは0とすると単なる有限長線路と物理現象の見た目は区別がつかないことになる。どちらで問題を考えたほうが楽かと問われれば、無限長で考えた方が楽である。両者は等価であるから、どちらで考えても結果は同じということになる。

さてここまで分かってしまうと、問題を解かなくても解の式をたてることができてしまう。それではせっかく演算子法を使って解く試みが無駄になるのでもう少しやってみよう。

(2013/10/16)
さて前半の演算子法による途中解を放置したままになっているが、毎日通勤途中に思い出しては突破口を探している。諦めるのは簡単だが、次の問題でも当然ながら同じ壁に突き当たることが予想される。今更他の解法に転じるのはもっと面倒だ。仕事だったら、ばっさりと損切りして時間がかかっても筋道がはっきりした別の方法を探していることだろう。だが断る。

Hevisideも同じ壁にぶつかって、結局は元信号源と反射信号源の関数を含む冪級数の冪級数なる一般解に整理したいきさつがある。実は反射信号源の関数には元信号源の関数が再起的に含まれていて、逆も真なりなのだった。しかしどうにもこうにもそれを定式化する数学を知らないという無知が災いして足止めを食らっている。演算子法を使って導いた途中解はそれを黙って示しているのだが、こちらがそれを理解できないでいる。

基本を振り返ると、二階偏微分方程式の解には任意の2つの関数を含むというのはもうみんな知ってるよね。これは二階常備分方程式の解が任意の2つの積分定数を含むのと対応している。この問題ではi(0,t)とi(l,t)の2つが未知関数なのでそれが該当すると思われる。しかしどうも2つの関数は互いを知っているようにも見える。しかし一次独立である。どうやらそれらは演算子を用いると冪級数になるらしいことまではわかる。数学的に見れば、i(0,t)とi(l,t)はそれぞれ無限個の基底ベクトルの線形結合で表されると考えることもできる、ただし互いに線形独立である。なんのことを言っているのかさっぱりわからなくなってきた。

まだ試みていないのは

・i(0,t)とi(l,t)を既存の途中解と存在するが忘れられている初期条件や境界条件から解く
・i(0,t)とi(l,t)をそれぞれ互いを含む連立方程式をたたて解く

というのがある。

これらは以前の問題でも課題としてあがっていたが、いよいよ自分で臨まないといけない状況になってきたようだ。

(2013/10/17)
既に賢明な読者ならとっくにお気づきだろうが、実は前半の演算子法の解には誤りがある。
それは演算子法そのものの誤りではなく、こちらが設定した初期条件の値に誤りがあったためである。
受電端での初期条件を与える際に、ついつい集中定数回路の要領で受電端の電圧をR*i(l,t)としてしまったが、実は受電端が開放(R=∞)の場合には適切ではないためである。受電端が開放の時は受電端の電流iは(l,t)=0だから受電端の電圧はR*i(l,t)=0となってしまう。これは正しくない。本来は受電端の電圧は未知関数e(l,t)としなければならなかった。その点を改め前の途中解のR*i(l,t)をe(l,t)で置き換えると



ということになる。

これで受電端開放(R=∞)の場合、受電端電流は0となっても受電端電圧は0ではないからR*i(l,t)は正しくなく、e(l,t)と未知関数とするのが正しい。
また受電端短絡(R=0)の場合には常にe(l,t)=0となり受電端電圧は消滅するのでR*i(l,t)と変わらない。

(2013/10/22)
上の解を少しずつ噛み砕いて解釈を試みよう。最初に電圧分布のEを係数にもつ以下の部分について考えてみる。



これも幾重にも折り畳まれた時空モデルで考えれば、送電端にt=0に印可された直流電圧Eの波がまっすぐに進んでいく空間を長さlで折り畳んで重ね合わせたものと見ることができる。図で描くと、それは扇子や屏風のような折り畳まれた平面の上を斜め一直線に進む波が軌跡を描いたものと一致している。図で描くと



ということになる。空間を折り畳んで垂直方向に投影して電圧分布を重ね合わせれば、これは受電端が短絡した長さlの有限長無損失線路の送信端にt=0で直流電圧Eを印可した時の電圧分布と等価になる。折り畳まれた平面を平坦に広げれば、信号は速度cで時空を斜めに直線を描きながら進んでいく軌跡を描くことがわかる。線路の両端は短絡と等価なので線路端を通過する度に電圧反射係数が-1で極性を反転しながら進んで行くと見なすことができる。

従って上の式は、受電端が短絡された長さlの無損失線路の送電端にt=0で直流電圧Eを印可した時の送電端から距離xの点における時間tにおける電圧を意味している。

次に残りの以下の部分について考察してみよう。



これも同様に折り畳まれた時空平面を送電端方向へ向かって速度cで進む波を表している。前の式と異なるのは、電圧が受電端における時間t(実際には時間tにおける受電端の終端条件と受電端に到達した波の電圧)に依存する関数になっている点である。本問題では送電端の電圧はEと固定だが、一般化すればこれも送電端における時間tの関数としてもよいが、とりあえず送電端に印可される電圧は一定としよう。それを図にすると



と描くことができる。今度は折り畳まれている時空平面を平坦に広げた形で描いている。式の中に現れる関数と、送電端からの距離xに波が到達した際の電圧が対応している。これも時空平面の端を折る形で折り畳んで重ねて、垂直方向に投影して重ね合わせたものが上の式である。これは長さlで送電端が短絡で受電端に反射電圧源e(l,t)が接続された有限長lの無損失線路の電圧分布と見なすことができる。

すなわち、演算子法で導いた解は、未知関数e(l,t)を含むものの、以下の様に送電端に電圧Eのステップ電圧源が接続され、受電端に電圧がe(l,t)の電圧源が接続された長さlの無損失線路の電圧分布を表していることになる。それを分かりやすく図で表すと



ということになる。

さて電圧分布の解の意味はわかったが、都合の悪い点もはっきりしてきた。この解には題意で与えられている受電端の終端抵抗Rはおろか、反射係数についてもまったく現れていない。それらはすべてe(l,t)という関数の中のパラメータとして含み入りということになる。e(l,t)が未知関数のままではどうしようもない。以前の問題では、時間t=0からジグザグ図で時系列的に考察していって反射電圧源の電圧を割り出していったが、同じ轍は踏みたくないものだ。

(2013/11/05)
頭の混濁状態が少し収まってきて、通勤途中にだいぶ考察ができるようになってきた。というものの演算子法での解の導出をもっとまともにする方法はまだ思いついていないが、別の発案した一方向に進む波を空間を折り曲げて重ね合わせるモデルだと偏微分方程式を解かずに簡単に解を導けることを確かめることにしよう。それは逆に演算子法の解の導出方法の改良のアイデアを思いつく材料を与えてくれるかもしれないという期待もあってだ。

演算子法によって導いた不完全な解を一旦忘れて、別に考えた直感的なモデルに基づいて具体的に解を導出してみよう。

折れ曲がった空間は重ね合わせると交互に空間の向きが逆転して決して分かりやすいとは言えないが、少なくとも偏微分方程式を解く必要は回避される。空間を線路の長さl毎に折れ曲がっているので、波が進む時間によって重ね合わせていくことにする。

式を短くするために以下のように定義する





ということになる。

上の解のx座標を送電端から受電端までの距離に固定すると、受電端の電圧に関する時間関数が得られる。

最後の2段目の形は著者の解と一致している。

ついでなので電流分布の解についても同じように導出してみよう。





ということになる。

これも著者の解と一致している。

x=0およびx=lに固定すればそれぞれ送電端を流れる電流と受電端を流れる電流の時間関数が得られる。

また以前に解いた問題のように受電端が短絡の場合、電圧反射係数αが-1になるので電流は線路上のどの点においても無限大に向かって階段状に増加し続けることが判る。逆に受電端開放の場合には、電圧反射係数αは1となるので自由振動を繰り返すことになるのが見てとれる。電圧反射係数αの絶対値が1未満の場合には、級数項は収束するので電圧と電流は定常状態の値に近づいていくことが判る。

この解の導出の仕方は手元の参考書のどれにも書かれていないここだけの発見である。これなら中学生でも判るかもしれない。偏微分方程式の解法で挫折せずに分布定数回路の過渡現象を直感的に理解するにはこれに勝る方法はないかもしれない、いやあるかもしれないが少なくとも私は知らない。

さて偏微分方程式を解かずに解が導けることが判ってしまったので、演算子法による解の導出の課題をどうしたものか。

とりあえず次も似たような問題なので、先に進めて並行して考えることにしよう。

上の考察では電圧と電流をばらばらに考えたのだけれども、体裁を整えるために最後にベクトルに戻して定式化しておこう。



この先に何か見えてくるものがあるが、それは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

これまでも度々紹介してきたCourant & Hilbert本のVolume 2(english version)の第5章では演算子法ではなくLaplace変換を使って同じ結果を導く方法が解説されている。同じLaplace変換を使っているが、著者のやり方よりだいぶ長い。著者はLaplace変換結果を電信方程式の一般解から導出するというインチキな方法をとっているが、Couran & Hilbert本では、なんとLaplace変換結果を導出するために必要な定理を新たに証明した上でそれを使ってLaplace変換によって解を得ている点が大きく異なる。やはり数学者らしい解き方と言えよう。しかしそれを理解してここで解説する能力は私にはないので、これも賢明な読者への課題としよう( ´∀`)
webadm
投稿日時: 2013-11-9 23:54
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まだまだ:無損失線路
次も前問とよく似た有限長無損失線路の問題。

長さlの無損失線路の受電端を開放して、送電端に抵抗Rを通じてt=0で直流電圧Eを加えるとき、送電端の電流はどうなるか。



というもの。

これ以降も趣向の違う無損失線路問題が続いているが、ここで著者が暗黙のうちにもうひとつの問題を読者が思い浮かべることを期待しているように思える。

それは前問とこの問題を組み合わせた送電端と受電端の両方がそれぞれ抵抗で終端されている、より一般化した問題である。それを解けば、前問とこの問題はその特殊な例ということになる。特殊から一般へと向かう、まさに帰納法で考えることがより自然に思いつくことになる。

著者の解は前問と同様に問題の特殊な事情に基づいた立式と解の導出を行っているにすぎないが、おそらく著者はもっと一般化した解の導出を読者が思いつくことを暗に期待していて、遠慮しているのかもしれない。

ここでは著者の暗黙の期待に応える形で、より一般化した両終端の線路を考えてみよう。



上は前問と今度の問題を包含する形に一般化した回路である。

Rs=0と置くと前問の回路と等価になる。またRs≠0としてRt=∞としたのが今回の問題の回路である。

その他RsとRtの値の無限の組み合わせがあるが、それに関する一般解を導出できれば、それぞれの特殊ケース毎に解く必要はなく、一般解にRs,Rtの値を代入すれば良いことになる。

受電端がRtで終端されている点に関しては前問で既に考察済みなだが、送電端がRsで直列終端されていることをどう解釈すればよいだろうか。またそこに流れる電流はどうなるのか、といった疑問が湧いてくる。

これらも前問でやったように反射係数を割り出すことができれば出来たも同然な予感がする。果たしてそうだろうか、やってみるしかあるまい。

無損失線路なので予め以下の定義をしておく



無損失線路なので線路上で信号が減衰することはなく、常に線路上の電圧および電流ポテンシャルは進行波(送電端から受電端方向へ時間と共に進む波)と反射波(受電端から送電端方向へ時間と共に進む波)の合成で表される。

αtは前問で登場した受電端の電圧反射係数である。同様に送電端に関しても電圧反射係数αsが定義できるはずである。

問題は前問の場合、送電端には集中定数回路は存在せず受電端側にのみ存在したので、線路を進行波が受電端方向に進み、受電端の集中定数回路に達すると、反射係数によって反射波が線路とぴったり重なりあう別の一次元空間を伝わっていき、実際の線路上のポテンシャルは進行波とその反射波の重ね合わせで表すことができるというのが、偏微分方程式を解くことなく解を得るアイデアだった。これがこの一般化した回路についてもはたして通用するだろうか。やってみるしかあるまい。



例によって折りたたまれた時空間を送信端に加えられたステップ電圧の波が進むモデルを考える。受電端に最初の波が到達すると受電端の反射係数に応じた反射波が物理的には同じ線路を逆戻りしていくが、便宜上線路とぴったり密接した平行に走る別の一次元空間上の線路を進むと考える。

これは空間を重ね合わせれば同じ線路を遡るのと等価であることは明らか。上の図では線路の両端にそれぞれ反射係数αs、αtと同じ透過率をもつ集中定数回路があって、反射波は透過波として別の空間を突き進んでいくということにする。

前問では折りたたんだ平面上に一直線に進む波として描いたが、空間は一次元なので折れ線で描いても意味は同じ。便宜上時間とともに新しい重ね合った空間を進んでいくので縦軸に時間軸とした平面ではない時空間である。

t=0での送信端では最初の波がシリーズ抵抗Rsを通して線路に加えられ線路上を時間と共に形を変えずに進んでいく(無損失線路)。その波が右端に到達すると、今度は透過率αtを持つ集中定数回路を通った透過波がそれまで来た空間とぴったり重なった別の一次元空間を進んでいく。それが左端に到達すると、透過率αsの集中定数回路を透過した波がまた平行した別の空間を進んでいく。実際の線路の電圧と電流分布はこの折れ曲がって重なり合った時空間上のポテンシャルを重ね合わせたものと等しくなる。

前問でやったのと同じ要領で、偏微分方程式を解くこと無しに電圧と電流分布の解を導出してみよう。





ここで



であるので、これを代入して整理すると



ということになる。

電流の場合も同様にして





従って電流分布の解は



ということになる。

これをベクトル表記にすると



ということになる。

これでやっと題意の送電端の電流の時間領域関数を導くことができる。

送電端の位置x=0を上の電流の解に代入すると



ということになる。これは送電端を流れる電流の一般解である。

ここで更に題意の回路の受電端開放の電圧反射係数αt=1を代入すると



ということになる。

著者の解とは電圧反射係数のべき乗が残るか電流反射係数のべき乗が残るかの根本的な違いがある。どちらが正しいか審判するのは読者の課題としよう( ´∀`)

著者はまた電流反射係数α<1であるから、と書いているが、これはおそらく|α|<1の意味であると思われる。二項展開が成り立つようにするためのこじつけである。しかし著者は肝心の二項展開を間違ってしまっている。これは私からのヒントである。

また題意では問われていないが、著者はR=Z0としたインピーダンス整合時の解も導出している。送電端がインピーダンス整合するとその電圧および電流反射係数は0となるので、0の0乗が係数として現れてきてしまう。そこで0の0乗は1であると暗黙に定義する必要があるはずだが、その点について著者は何も触れていない。

同様に送電端や受電端がインピーダンス整合された場合にも同じ0の0乗が現れて、もしそれを0と定義してしまうと電流と電圧は0になってしまう。したがって0の0乗は1と定義すると都合が良い。

Wikipediaにも書かれているが、整数nのべき乗n^kは、集合論で例えればk個の要素を持つ集合からn個の要素をもつ集合への写像の数と解釈すれば、n=0,k=0の場合、空集合から空集合への写像は唯一しかないので1で良いことになる。

さて演算子法で同じ結果をどうやって導きだそうか別途思案しながら、後続する無損失線路の問題に臨むことにしよう。

とりあえずここで導出した一般解を用いれば、ここまで登場した有限長の無損失線路の問題は達所に解が得られことはすぐ確かめることができる。

読者は更にこの回路を一般化して、抵抗以外の一般の複素インピーダンスを持つ集中定数回路素子で終端する問題を考察しても良いかもしれない。ここで用いた折れ曲がってぴったり重なる時空間モデルを用いれば容易いと思われる。それは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

ちょっと考えてみると実数の抵抗Rs,Rtをより一般の複素インピーダンスZs,Ztに拡大すると、電圧反射係数も複素数になるので、電圧と電流の関数が複素関数になってしまうという困難にぶつかることがすぐにわかる。そこから先は読者の課題としよう( ´∀`)
webadm
投稿日時: 2013-11-13 0:27
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無損失線路は続くよ
次も無損失線路の問題だけど、今度は無限長のちょっと違ったタイプのもの

下図に示すように、特性インピーダンスZ1(s)とZ2(s)の2本の無損失線路の接続点がインピーダンスZ(s)を通じて設置されている。入力から進行波ei,iiが入射したとき、反射波er,ir,透過波et,itおよびZ(s)の電流izを求めよ。



というもの。

問題文からして複素周波数sを使用しているので、Laplace変換を手段として用いるように暗黙の意図が感じられるが、それは無視しよう。

以前の問題は有限長の線路の両端が終端されていたのだが、ここからは両端は終端されておらず(無限長)代わりに2つの線路の接合点がインピーダンスZで終端されているというもの。

それだけだと何も起こらないので、左側の線路から右側の線路の方向へ進行波電圧と電流がやってきて接合点に達すると、インピーダンスの整合状態の如何によっては反射波電圧と電流が左端方向へ逆戻りし、一部は右端方向へ透過波電圧や電流として進んでいくと考える。

以前の問題では終端は実数値抵抗のRであったが、今回はより一般化したインピーダンスZ(s)という設定だ。

題意では進行波が直流であるとも交流であるとも言っていないので、無損失線路なので距離もしくは時間の関数で表されると考えてよいだろう。すくなくとも接合点にぶつかるまではその関数の形を変えずに進んで来たと思えばよい。

(2013/11/11)
接合点から左右を見ると半無限長の無損失線路なので、特性インピーダンスが接続されているのと等価と見なすことができる。

そうなると接合点近傍は集中定数回路と見なすことができる。

以下が等価回路となる。



となると分布定数回路の問題というより集中定数回路の問題と言える。

上の回路で以下の関係が成り立つ



これをer,ir,et,it,izについて解くと



ということになる。

e_i,i_iが既知の場合ということだが、更に以下の関係を代入してer,etからiiを消去し、ir,it,izからeiを消去すると





ということになる。

おろ、著者の解とirだけ違っている。

ちなみに著者の立式は



これをEr,Ir,Et,It,Iz,Iiに関する連立方程式としてMaximaで解くと



著者の立式は未知数が5つに対して式が6つなので最後の一つは明らかに余分であるが、Ir,It,IzからEiを消去するためにそれを代入すると



ということでIrの向きが解路地の向きとは逆を正としている以外は同じ結果が得られたことから、著者のIrの解は計算ミスか原稿執筆時の転記ミスがあると思われる。注意しておこう。

どこをどう間違ったら著者のIrの解になるのか見つけるのは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

上の結果から反射係数を求めることができる。

電圧反射係数は



ということになる。

これは特性インピーダンスZ1の線路の終端にZとZ2が並列に接続された合成インピーダンスで終端されているのと等価である。

なんだ簡単じゃないか( ´∀`)

電流反射係数は電圧反射係数の負数であることを確かめるのは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

以前の問題で折れ曲がった時空間で解く方法を発見したが、良く考えると光の屈折と反射と良く似ている



昔小学校かどこかで教わったことがある気がする、それを憶えていて思い出したのかもしれない。
webadm
投稿日時: 2013-11-14 23:27
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3094
どこまでも無損失線路
次も無損失線路の問題、とは言え前問と良くにている。が少し捻ってあるかな。

下図に示すように特性インピーダンスZ1(s),Z2(s)の無損失線路の接続点を抵抗Rを通じて設置し、入射波電圧eiを加えるとき、入射波eiと透過波etの電力比が最小となるようにするには、Z2(s)をどのような値に選べばよいか。



というもの。

問題文で注意しなければならないのは、入射波と透過波の電力比が最小になる意味の解釈である。

一般に回路が受動素子だけから成る場合には、相反回路となるため透過波の電力が入射波の電力を上回ることは決してない。このため電力比は最大が1で最小は0である。能動素子が使われていて入射波とは別にどこからか電力が供給される場合にはこの限りではない。この問題では全て受動素子から成るので相反回路と考えて良いことになる。

ということは入射波電力>>透過波電力でかつその比が最小となるZ2(s)の条件を求めよと言う意味になる。

題意を読み間違えるとせっかく計算して答えを求めてもそれは期待されていに方の解であったりする。入射波電力が0で透過波電力が∞となる条件は期待される解ではないことは明らか。

となると透過波電力が最小となるので、余った分は反射波電力として入射波とは逆方向に跳ね返っていくことになる。つまり、反射波電力を最大にするのと同値であると予想される。

果たして、以下の命題は成り立つのか

(1) 反射波電力が最大の時、入射波電力>>透過波電力かつその比率が最小となる
(2) 入射波電力>>透過波電力かつその比率が最小なら、反射波電力は最大となる

上の2つの逆も真なりと言えるだろうか?

Z1(s),Rを固定しZ2(s)を変化させた場合の反射波電力、入射波電力と透過波電力の比がどう変化するか解析すればいいような気がする。電力比が最小となる点のZ2(s)が解ということになる。

だいたいこれでいいような気がする。数学的に厳密にやる場合にはもっとややこしいかもしれない。電気工学はもともと近似理論だからおおざっぱで結構なのだ。

実は上の命題そのものは間違っていないが、それだとR=0とすれば反射波電力が入射波電力と等しくなり、同時に透過波電力が0となるので、透過波電力/入射波電力の比率は0となって最小となる。これは自明なので問題が求めている解とは異なると思われる。

そうするとその逆数である、入射波電力/透過波電力の比が最小となる条件を見いだすのが題意ということになる。

そうなると今度は透過波電力=入射波電力-反射波電力という関係から、

・反射波電力が最小であれば、入射波電力/透過波電力の比は最小となる
・入射波電力/透過波電力の比が最小であれば、反射波電力も最小である

という命題を証明すればいいわけである。

そこで前問と同様に以下の等価回路を考える



入射波から見ると接合点にはRとZ2が並列接続した合成インピーダンスZ3で終端されているのと等価である。

従って以下の関係が成り立つ



従って入射波電力/等価波電力の比が最小になるのは電圧反射係数αが



となるとき、かつそのときに限る。

従ってがZ2は



ということになる。

おろ、またしても著者の解と微妙に異なる。

それもそのはず、著者は手抜きして前問で間違えてしまった解を流用しているので結果も間違ったものとなってしまっている。それ以前にこちらのアプローチと同様に反射波が最小になる時、題意の条件を満たすとして反射波電力/入射波電力の比が最小になる条件を計算しているが、回答中では反射波の電圧をetと終止誤記しており、実際にはerで前問で間違えたerの式をそのまま使ってしまっているというわけである。注意しておく。

正しい反射波電圧erの式を用いて著者と同じやり方を用いれば(誤記は直すとして)、



従ってZ2が以下の条件を満足する必要がある



これをZ2について解くと



が得られる。

R≦Z1ではZ2が∞から負数をとるため題意の回路を満たさない点に注意。

この結果から特性インピーダンスの異なる線路を接合した場合にインピーダンス整合させる方法として接合点で以下の条件を満たす抵抗Rで終端すればいいことになる。



Z2<Z1の場合はRが負数となるため題意の回路を満足しない点に注意。

ただしこれは抵抗Rで電力を損失するので、透過電力はその分減ってしまう。

実際の高周波回路では損失が伴うため抵抗でのインピーダンス整合を避け、特定の運用周波数範囲なら電力を消費しないLとCの集中定数回路もしくは分布定数回路を接続してインピーダンス整合することが行われる。ほとんどの場合、0〜∞までの周波数を通す必要はないので、使用する周波数帯で最も良く整合がとれるようにするわけである。

P.S

著者の解の記述を見るにつけ問題文の曖昧さに翻弄された様子がうかがえる。最初やはり透過波電力/入射波電力の比を考えてみたものの、それは題意と異なることに最後に気づいて、途中から反射波電力/入射波電力の比に書き換えようとした節が見られるが一カ所を透過波から反射波に書き換えただけで残りは最初の誤った計算のまま放置されている。きっとその時は時間が無くて明日やろうと思って明日になったらすっかりその事を忘れてしまって答案をまとめてしまったかなんかだろう。もしくは学生に解かせて、解が美しい結果だったので(正しい答えは常に美しいという命題が成り立つとしても、美しい答えは常に正しいという逆命題は成り立たつとは限らない)著者はそのまま原稿に含めてしまったのかもしれない。

こちらのアプローチでは微分とか使わなくても電圧反射係数の概念を導入すれば、一目瞭然の結果が得られる。もちろんやり方を制限するのが言いやり方とは言えないが、なんでも数学的に難しい概念を駆使すればいいというものでもない。電気回路理論ならば、一歩進んだ抽象概念を用いるだけで理論式がすっきり見通しが良くなる良い例である。

数学でも難しい証明と易しい証明とがあり、時代と共に新しい概念が生まれそれを使った易しい証明が出てくることになるのは自然の流れである。
webadm
投稿日時: 2013-11-17 12:57
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3094
装荷回路
さてあと残るところ3問である。頑張らずに最後までやり遂げよう。

次の問題は前問と似ているが、今度は異なる特性インピーダンスの線路の接合点に線路に並列ではなく、直列にインピーダンスを挿入(装荷)する回路の問題。

下図に示すように特性インピーダンスZ1(s),Z2(s)の間にインピーダンスZ(s)を挿入したとき、入射波の電圧ei,電流iiに対する(1)反射波er,ir、および透過波et,itの関係を示せ。またZ(s)がRL並列回路である場合に(2)ei=E u(t) (3) ei=E e^-at u(t)の入射波電圧に対する反射波と透過波の電圧を求めよ。



というもの。

前問と違って問題文中には線路が無損失線路であるとは書いていない。なのでやり方としては

・前問と同様に無損失線路だけやる
・特性インピーダンスが実数となる無損失線路と無歪み線路についてやる
・一般の分布定数回路(特性インピーダンスが複素周波数sの関数)についてやる

もちろん最後のが一番良いが、RC線路が含まれるのでやっかいとなる。ここはやはり特殊から一般へと順を追ってやっていくことにしよう。

前問と同様に以下の等価回路で考える



以下の関係が成り立つ



これをer,ir,et,itについて解くと



ということになる。

集中定数回路的に見ると間違っているように見えるが、左側の特性インピーダンスZ1の半無限長線路がインピーダンスZの集中定数回路とその先の半無限長線路の特性インピーダンスZ2の合成インピーダンスZ3の終端に到達すると、電圧反射係数αによって決まる反射電圧erと反射電流irが発生すると考えることができる。一方透過波は集中定数回路とその先の線路へ進むことになると考えればすっきりする。その他e_iとi_iの関係は定義した通りとする。

また等価回路をぐっと睨めば



ということがたちどころにわかる。

この結果は特に無損失線路だけにとどまらず一般の分布定数回路でも成り立つと考えられる。

次に(2)のZがRL並列回路で構成されている場合を考えよう。

RL並列回路ともなると、Zは一般的な複素数値となる。従ってLaplace変換を使うかHeviside演算子を使って計算する必要がある。

RL並列回路のインピーダンスは複素周波数sを使ったLaplace変換では



と表される。

Heviside演算子で表すと



ということになる。

これがLaplace変換とHeviside演算子は同じものだと誤解される理由である。

著者はLaplace変換を使って解いているので、こちらは別解でHeviside演算子を使って解いてみよう。



ということになる。

これはZ1,Z2が実数となる無損失線路や無歪み線路の場合である。より一般的な分布定数回路ではZ1,Z2が演算子pの関数となるのでもっと複雑になる。それは読者の課題としよう( ´∀`)

(3)の場合は時間と共に指数関数的に減衰していく入射波電圧のケースで同様にHeviside演算子で表すと



従ってer,etは



ということになる。

これは著者の解と同値である。

Z1,Z2が複素数の場合については読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

高周波回路でRL並列回路というのを見たことがある。抵抗に並列にコイルを巻き付けたようなもので、送信機の終段のプレート回路にシリーズに挿入されているのを良く見かける。Lは小さくてよく終段で増幅されようとする高調波エネルギーをLでトラップし、エネルギーが開放される時には並列に接続された抵抗で熱に変えてしまうというもの。それをしないと高調波も大電力で増幅され、スプリアスの原因になったり、終段が寄生発振して増幅器として機能しなくなってしまう恐れがある。確か寄生発振防止だったような気がする。

それとは別に弱信号領域では線路にLだけを挿入し意図的に高域周波数領域の電力をトラップして周波数特性を持ち上げるのに使われることがある。ピーキングコイルといって昔は真空管とかでテレビのビデオ信号とか数MHzもの広帯域特性を持つ増幅回路を構成するのに必須だった。今でもアナログビデオ信号を扱う回路には需要があると思われる。
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