アルバイト先の事務所は元々ガレージ兼倉庫だったところで音は反射するし、従業員はみんな年寄りで耳が悪いのか声でかいしPCから出る音もうるさいし。作業していると毎日気が変になりそうだった。

イヤホンで音楽CDを効きながら紛らわしていたがそれでもうるさいのでノイズキャンセリングヘッドホンなら少しましかと思って買ってみた。

SONY STYLEで安い方のを注文し自宅に届いたので、電池を入れてスイッチをONしてみた。

確かにONするとそれまで聞こえていたPCのファンの音がスッと消えた。そのせいで普段気にならない耳鳴りの音が良く聞こえるようになった。スイッチをOFFするとPCのゴーという騒音が復活。良く出来ている。

しかしインパルス的なノイズには効果が無く、時計のチックタック音は返って良く聞こえる感じ。

おそらく航空機内で悩まされる空気との摩擦音とかには効果絶大なのだろう。あれは飛行機を降りてもしばらくは頭の中に残るよね。

とりあえずPCの音が聞こえなくなったので消音室に入ったような感じのままにしていて、数時間後にヘッドフォンを外したら急に目眩のような酔った感じに襲われた。

なんだろう？　ノイズキャンセルのために耳元でノイズと逆位相の音を発生させているので聴覚神経が酷使された？　でも外すまでは気にならなかったのだが。

ちょっと健康上の問題がありそうである。

数万円もする高いやつなら違うのかもしれないが。そんなお金は無い。

やっぱり職場では耳栓を使うのが良いな。

せっかく買ったのだから活用しないと、と思い立ちバッグに忍ばせて使用する機会と場所を探る。

いつも食事に利用するファミリーレストランは不況下でも繁盛して家族連れや若い子のグループが来て騒々しいことこの上ない。

そこでノイズキャンセリングヘッドホンの登場である。

音楽を聴くわけではないのでケーブルの尻尾はバッグ内に忍ばせてあたかもバッグ内に音源があるかのように装う。

徐にスイッチをオンにすると、効果覿面。騒々しい客席と距離が離れたような感覚。広い野原に離ればなれに客席がある感じ。

これは良い。人の話し声とかも壁や天井に反射して到達してかなりの騒音と化しているのでそれも押さえられる感じ。

ちなみにスイッチを切ると、ゴーというジェット機の中のような今まで気が付かなかった騒音に満ちあふれていることを再発見。

こういう場所ならノイズキャンセリングヘッドホンも役立つことを確認。

さすがにイヤマフはここでは怪しまれるな。

英国レストランの静けさには及ばないまでも、隣の席の話声も遠くに聞こえるのでお勧めである。

多少怪しまれる可能性はあるが。

昨夜も近所のファミリーレストランで夕食。

隣の席には何やら神妙に向かい合うカップル。女性の方ははきはきしている感じだが男性の方は隣で聞こえないほどの小声。女性が「え、なに？聞こえない」とか何度も言っている。

どうやら彼女の方から別れ話を切り出したぽく、なんとか粘る元彼氏という構図。

こういう時は臨席の客は遠慮して話しが聞こえていないよというそぶりをしないといけないだろう。

バッグからノイズキャンセリングヘッドホンを取り出し装着しスイッチオン。いつもの通り、席が遠く離れた感じになる。隣の声も聞こえなくなったが、意味深な雰囲気は小声で伝わってくる。

結局１時間ほどの食事の間は隣のカップルは何も飲まず食わずで向き合って静かに交渉を続けていた。食事などする雰囲気ではないことは確かだ。

私は食事が済むとヘッドフォンをバッグに仕舞い込んでレストランを後にしたのはいうまでもない。