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webadm
投稿日時: 2012-8-15 1:02
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Laplace変換とその応用
とうとう下巻の後半部に突入。

前の章の過渡現象で著者は初等的な微分方程式の解法のみを用いてLaplace変換は用いなかった。

ここでようやく提示ということに。

Laplace変換の提示に際してはHeavisideの演算子法についてはこれっぽちも触れていない。また提示方法もありきたりで、簡明に結果だけを整理してあるが、その応用は演習問題でという形。

まったくつまらないのである。学生時代にLaplace変換の講義を受けた時もほとんど印象に残っていない、単位がとれたのかどうかも怪しい。

ここでは著者が触れていないHeavisideの演算子法とLaplace変換との基本的な違いを考えてみることにする。

Heavisideの演算子法

・測度空間の右半平面上の関数曲線を同じ右半面上の関数曲線に単射かつ全射で対応づける線型作用素方程式



・抵抗演算子を線型作用素の元とした場合、その逆元である逆作用素がただ一つ存在する



・抵抗演算子は一元線型作用素方程式ではpの有理関数。n元作用素方程式では正則行列となり逆行列がただ一つ存在する





・作用素方程式は展開定理もしくは部分分数に分解し項別に予め既知の変換公式もしくはDuhamel定積分によって写像された関数式を得ることが出来る

・初期条件は最初から作用素方程式の右辺に不変量として現れなければならず、後から与えることはできない

・作用素方程式が同次形(右辺が0ベクトル)の場合、解はただ一つ定数0の関数である

・作用素方程式の右辺がtの関数の場合、予め演算子pの関数に変換するか、Duhamel積分を行う必要がある

・計算に際して代表的な解析関数の公式や微積分と定積分以外(複素積分等)の数学知識を必要としない

Laplace変換

・測度空間の右半平面上の関数曲線とs=σ+jωを変数とする複素関数との間の積分変換



・以下の条件を満たすσをσ1とすると、Re s > σ1の領域のすべてのsに関してF(s)が存在する(適用範囲の制限)



・F(s)が部分分数に展開できれば変換対表を使って項別に逆変換することが可能。変換対表に対応する対が無い場合には、上記の複素積分(Bromwithch積分)を使用して逆変換が可能

・微分方程式の両辺を項別Laplace変換し、未知関数のLaplace変換を逆Laplace変換して未知関数解を得ることが出来る



・初期値は導関数をLaplace変換した際にt=0の初期値項、積分をLaplace変換した際に積分初期値項が現れるので、それ以降であれば任意の時点で初期値を与えることが出来る



・Bromwich積分を利用する場合、複素積分の各種定理の理解が必須

上記の特長を比較すると

・Heavisideの演算子法とLaplace変換は類似の変換対や性質がある(両者が同じものだという誤解はここから来る)

・Heavisideの演算子法が同一の時間領域関数の間の写像であるのに対してLaplace変換は時間領域関数と複素関数との間の写像で全く異なる

・Heavisideの演算子法と違って、Laplace変換は定義区間[0,∞]での積分変換であるため関数の収束の問題が生じ適用可能な関数が制限される

・初期値問題を伴う場合、Heavisideの演算子法では作用素方程式の中に初期値を含めるように意図的に方程式をたてなければならないが、Laplace変換ではLaplace変換時に初期値項が伴うるので、いつでも初期値を与えることができる

・Heavisideの演算子法もLaplace変換も部分分数に分解できれば変換対の表で項別に変換することが可能。それが使用できない場合には、前者はDuhamel積分で、後者は複素積分(Bromwich積分)で結果を得ることが出来る。

・Heavisideの演算子法は、微積分と微分方程式までの一般的な基礎数学知識で足りるが、Laplace変換は更に複素関数の理解が不可欠

・Heavisideの演算子に比べ、Laplace変換では伝達関数を定式化し易く応用範囲が広がる(自動制御、電子回路等)



これらを総合的に見ると、Heavisideの演算子法メモの序文の内容が更に納得いくものとなる。Heavisideの演算子法は確かに数学的な知識の敷居は低いのだが、微分方程式を解くのには都合が良いがそれ以外の応用には多少とも敷居は高く適用範囲に制限が加わるとしてもLaplace変換の方が有用ということになる。有用なものは多少敷居が高くても使えるものは使えるようにしたほうが良いということで、大学で演算子法に代わって教えられるようになったのだと理解する。

そう、使えるものは使えるようになったほうが良いのである。

そうした観点からLaplace変換を学んでいくことにしよう。

P.S

国内のテキストではほとんど"ラプラス変換"とカタカナ表記されているが、これだと若い人は"ラブプラス変換"間違えるので、誤解を招かないようにLaplace変換とする。
webadm
投稿日時: 2012-8-16 3:52
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Laplace変換
Laplaceは18世紀の数学者であるが、既に現在Laplace積分として知られている以下の式を"確率の解析的理論"の著書で用いたらしい。



おそらく当時Laplaceは変数sを複素数ではなく実変数としてしか考えていなかったと思われるが、Laplaceが最初にこの式導入したので目的は違っても敬意を表してLaplace変換と呼ぶようになったのだと思われる。おそらくCarsonがHeavisideの演算子法を研究した際に命名したのだと思われる。

積分式から容易にsの実数部が0か負の場合には積分が発散することがわかる。従って、この変換はRe s > 0であることが条件となる。これは問題ないだろう。変換されたF(s)はs平面上の右半面のみを定義域として持つことになる。

普通はこの理解で良いが、厳密には積分が収束するためにはもっと条件があることになる。

sが複素数であるということは、F(s)が複素関数であるので、積分も複素関数の条件を満たさなければならないことになる。

数学的にはf(t)は区分的に連続であることということにあるが、定義区間で関数値が無限大をとるような極があってはいけないということになる。f(t)が区分的に連続でないと、極でF(s)が収束しない点を持つためである。

もう一つはf(t)が指数位の関数で以下を満足すること



これはf(t)が以下を満たす指数位の関数であることが十分条件(必要条件ではない)となる



上記を満たすMとσが存在するときf(t)は指数σの関数と言う。

Laplace変換の結果であるF(s)が有界値をとるには以下の条件を満足する必要がある



従って上記を満たすにはRe s > σであることが十分条件となる。

これらの条件は十分条件であってLaplace変換が存在する必要条件ではない。十分条件を満たしていなくてもLaplace変換が存在する関数もあるのでややこしい。

とりあえず電気回路については、σ>0となるような事例はめったにないのでそこまで厳密に考えなくてもよいと思われる。

著者のLaplace逆変換の提示式にも上記の考慮を含むものが記載されているが、その説明はまったく無い。工学レベルでは必要ないという認識なのだろう。

Laplace変換の判りやすい提示方法で参考になる手元にある書物を挙げると

・「エレクトロニクスエンジニアのためのラプラス変換」ホルブルーク 宮脇一男訳 朝倉書店
・「スバラシク実力がつくと評判のラプラス変換キャンパス・ゼミ」馬場敬之 高杉豊 マセマ出版

前者は電気電子回路解析設計の実務現場を良く知っている著者が実用重視で解説したもの、重要でない厳密な数学的なことは書いていないが、現場での応用例については目を見張るものがある。
後者は学生向けのテキスト。他の本には書いていないうんちくや細かな理論背景が説明されている。Laplace変換の存在条件についての明快な解説を参考にさせて頂いた。

著者は最後にLaplace変換対の表を与えるだけで、実際に上の積分変換のやり方は提示していない。それは演習問題に委ねるということであろう。

しかし実際にここで事例を考えないと後の理論も上の空という感じになってしまうので、さっさと例を挙げてしっかり使えるようにしよう。

例1:定数もしくはステップ関数

Laplace変換で扱う関数の定義区間は[0,∞]でt<0では0をとるものとみなす。従って関数が定数である場合はステップ関数と同じである。



ということになる。

例2:指数関数

aが実数でa > 0の場合



ということになる。

例3:未知関数f(t)の導関数f'(t)のLaplace変換

未知関数f(t)の導関数f'(t)のLaplace変換はどうなるのだろう。これは電気回路で良く出てくる。



ということになる。すなわち未知関数f(t)のLaplace変換F(s)から未知関数f(t)のt=0での初期値を差し引いたものになる。これはt=0での未知関数の初期条件f(0)を与えるのに使える。

例4:未知関数の積分のLaplace変換

これも電気回路に良く現れる。未知関数f(t)の積分をLaplace変換するとどうなるか?



ということになる。すなわち未知関数f(t)の積分関数のLaplace変換は、未知関数f(t)のLaplace変換F(s)をsで割った形と未知関数の積分関数のt=0での初期値をsで割った形の和である。これもt=0での初期条件を与えるのに使える。

Heavisideの演算子法は未知関数f(t)はそのままf(t)のままで良かったように、Laplace変換でも未知関数f(t)のLaplace変換はF(s)として扱うことが出来る。後で伝達関数と既知関数のLaplace変換の積から未知関数のLaplace変換の関係式が得られるので、それをLaplace逆変換すればよいということになる。

とりあえず微積分が使いこなせればLaplace変換そのものは問題ないと思われる。
webadm
投稿日時: 2012-8-16 4:37
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Laplace逆変換
Laplace変換は判りやすく微積分を使いこなせればすぐにF(s)を求めることが出来るが、その逆はどうだろう。

予め変換対の表があればたいがいのものはf(t)に逆変換できる。

しかしそれだとHeavisideの演算子法と変わらないし、s空間に変換する手間を考えると二度手間である。

それに誰が任意のF(s)に対するf(t)が存在すると証明できるのか?

そうした疑問に最初に答えを出したのがHeavisideと同時代に生きた応用数学者のBromwichである。彼は晩年のHeavisideとの文通を通じて、演算子法とほぼ同じ目的を達する積分変換法を見いだした。そのときに当然ながら厳密な証明を終えていたと思われる。

それが今日Bromwithc積分もしくはLaplace逆変換と呼ばれる以下の定式である。



ここでσはLaplace変換のところで出てきた指数位である。複素積分では複素平面上で閉曲線の積分路をとらなければならないが、この風変わりな積分路はBromwich積分路とも呼ばれている。

BromwichがHeavisideに提示したようにこの複素積分は難しく考える必要はなく、極を総て含むような閉区間を含む積分路を考えればいいのである。

極論すればf(t)はF(s)e^stの留数の和となる。

そこまで懇切丁寧にBromwichが提示したにもかかわらずHeavisideの意は最初から決まっていたようで、Bromwichの方法を受け入れることを断固拒絶した。それを最後にBromwichとHeavisideの文通は終わっている。奇人と言われるだけに歴史が変わる可能性はこれっぽちもなかったのである。

留数とは何かは以前に大分詳しく書いたので割愛する。これはどの数学の複素解析のところに書いてある。

またなじみ深いOhmの法則の以下の式をHeavisideは過渡現象に関して抵抗演算子を伴った作用素方程式とみなした



従って抵抗演算子Z(p)の逆元である逆演算子Z^-1(p)がわかれば



とたちどころに解が得られるというものだった。

Bromwichはこれと同じことが複素関数空間で行う方法を考案した。



Z(s)は以下のように表すと今日伝達関数と呼ばれるものである



当然Z(s)の逆元であるZ^-1(s)が存在すれば



が成り立つ。

HeavisideもBromwichも伝達関数の概念までは考えていなかったと思われるが、そこまで応用範囲を広げたのは後生の研究者であった。

Heavisideは演算子をpの関数と呼んでいたが、pは微分演算子を置き換えたものに過ぎないため、狭意の関数ではない。それに関数は数を別の数へ対応づける写像であるが、演算子は関数を別の関数に対応づけるため、やはり演算子または作用素とよぶべきものである。

それに対してBromwichのZ(s)は完璧に複素変数sの関数であり、伝達関数Z(s)はsの有理関数となる。それだけに初等数学(複素解析)で扱えるものとなる。時間領域の関数と複素領域の関数間の写像に関してはLaplace積分とBromwich積分のみに限定される。

具体例を挙げるとすると、既にLaplace変換で簡単に変換対が得られるようなものは表を逆引きすればよい。もっと複雑な逆変換の場合については、後述する展開定理による方法が使える。複素解析の留数定理を使っても同じ結果が得られる。
webadm
投稿日時: 2012-8-20 2:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Laplace変換の諸性質
Laplace変換を使いこなすには予め諸性質を知っておいた方が躓かずに容易に難局を切り抜けることができることが多い。

大抵のLaplace変換のテキストではLaplace変換と逆変換の公式を提示した後、諸性質を提示している。

Laplace変換のテキストや市販の公式集とかに載っている変換表はこうした諸性質から導かれる。

線型性

Laplace変換と逆変換は一種の線型作用素である。すなわち以下の関係が成り立つ。



逆変換についても同様に



ということになる。

これはLaplace変換の公式と逆変換の公式に代入することで確かめることができる。

これを数学的帰納法によって任意のn個の関数の線型結合に対して拡張すると



ということになる。

著者も言っているように、時間領域で重ね合わせの理が成り立てば、同様にs領域でも重ね合わせの理が成り立つということである。実際にはOhmの法則、Kirchhoffの法則も成り立つ。つまり線型則はどちらの系でも適用されることになる。まあこのことは抵抗演算子についてHeavisideが指摘していたことではあるが、Heaviside自身はその証明は数学者の役目だということにした。

対称性

対称性とはいったいなんだろうという疑問が出てくる。テキストによっては「スケール変更定理」と呼んでいる。

時間領域の関数f(t)があってそのLaplace変換F(s)が存在する場合、τ=t/aと置き換えた場合、f(τ)=f(t/a)のLaplace変換は一体どうなるか? ここでaは任意の正の実数とする。

f(t)に関してLaplace変換が存在するのだから、f(τ)に関してもLaplace変換が存在するのは予想できる。問題はどう変化するかである。

変数変換によってf(τ)のLaplace変換は



ということになる。

また逆も真なりで



となることも容易に確かめることが出来る。

つまり時間軸スケールを拡大縮小するとs平面の写像はそれとは反対にs平面上のスケールが縮小拡大するということになる。


推移定理

定理と付いているが、元々はHeavisideの演算子法でのshifting定理に起源を持つ。

時間軸関数f(t)のLaplace変換がF(s)である場合、f(t-a)と時間軸上に右シフトした関数のLaplace変換はどうなるかというもの。

これも先ほどと同様に変数変換によって



ということになる。すなわち、時間軸上にaだけ右シフトした場合、元のLaplace変換F(s)にe^-saを乗じたものになる。

また逆に時間領域関数f(t)に指数関数e^-atを乗じたもののLaplace変換は



ということになる。すなわちs関数をs平面の実軸上でaだけ左シフトした場合、そのLaplace逆変換は元の時間領域の関数に指数関数e^-at乗じた形になるという対称性を持つ。

時間微分

これはLaplace変換のところで書いてしまたので割愛。

著者が書いているように、電気回路では2階以上の導関数を扱うことは限られているので(その場合でも連立一階微分方程式に書き直すことができる)n階については暗記する必要はない。

時間積分

これも同様にLaplace変換のところで書いてしまったので割愛。

複素微分

著者は書いていないが、時間微分があるなら対称性としてsでの微分があるので書いておく。

時間領域の関数f(t)のLaplace変換がF(s)であるとき、その導関数dF(s)/dsのLaplace逆変換はどうなるかというもの。



ということになる。

これは電気回路というより、もっと高度で複雑な高周波回路やアンテナ理論で利用される。

複素積分

複素微分との対称性により複素積分についても考えられる。

f(t)のLaplace変換がF(s)である場合、その複素積分関数に対応する時間領域関数はどうなるか

複素積分と書いてあるが、実はsから∞の定積分である



ということになる。

複素積分といいつつ、定積分なのはどのテキストも一緒だ。その理由を書かずに上記の結果のみを提示しているか、複素微分については証明しているものの複素積分についてはまったく触れずに華麗にスルーしている(Stanford大学等)かどちらかだ。それにLaplace変換対の表を提示しているサイトが沢山あるが、その中には大分間違いが多い。特に∫e^-st dsの積分範囲が[0,∞]と間違っているものなど鵜呑みは禁物だ。

唯一"ADVANCED ENGINEERING MATHEMATICS(WILEY INTERNAL EDITION)" ERWIN KREYSZIG Jhon Wiley and Sons, Inc. には以下の様に説明されている

引用:

Integral of Transforms
Similarly, if f(t) satisfies the conditions of the existence theorem in Sec. 6.1 and the limit of f(t)/t, as t approaches 0 from the right, exists, then for s > k.
hence
In this way, inetegration of the transform of a function f(t) corresponds to the division of f(t) by t.


当然ながらf(t)に対してそのLaplace変換F(s)が存在し、f(t)/tでtを実軸上の右から原点の0へ近づけていった場合に極限値が存在する場合、s > kについてとあるが、kはLaplace変換の存在十分条件で出てきた指数位であることがSec 6.1に存在定理として書いてある。これで納得できたかもしれない。

先の複素微分と見事な対称性があるので憶えやすい。

初期値定理

あまり使われそうもないが、Laplace変換の性質として知られているもの。

導関数のLapalce変換は既に学んだ通り



であった。ここでLaplace変換したs領域の関数式に時間領域の原始関数の初期値f(0)が現れるのに注目すると、上のLaplace変換で予めsを無限大に極限移行すれば



ということになる。すなわち未知関数のLaplace変換F(s)にsを常時てsを無限大に移行すれば未知関数の初期値f(0)が得られるというもの。まあ未知関数のLaplace変換を先に得る必要があるので、あまり使う機会はないかもしれない。昔の人は計算機が無いので、計算なしに解のだいたいの特長を知るのに必至だったのである。

最終値定理

これは前述の初期値定理よりも適用条件が限定されるので更に今では使われない。

やはり時間領域の導関数のLaplace変換が着眼点になる。今度はsを0に移行すると



ということになる。ただしこの定理はf(t)が最終値を持つ場合に限られる。周期関数のように最終値をもたないで永遠に変化し続ける場合には適用できない。

たたみこみ積分

上巻でFurier変換を学んだときにもたたみこみ積分のFurier変換を学んだ。それと同じ性質がLaplace変換にもある。

時間領域の関数fとgがそれぞれLaplace変換FとGが存在するとすると、そのたたみこみ積分のLaplace変換は



ということになる。すなわちf(t)*g(t)のLaplace変換はそれぞれの関数のLaplace変換の積となる。

対称的にF(s)*G(s)のLaplace逆変換はF(s)とG(s)のたたみこみ積分を



と定義すると。



ということになる。

周期関数

時間領域で関数fが周期Tで繰り返し現れる場合のLaplace変換はどうなるのだろう?

単純に考えれば、繰り返し関数fの最初の一周期分だけ切り出せば、その周期Tだけ時間シフトした関数との重ね合わせと考えられるので、既に学んだ推移定理が使える。

繰り返し関数fの最初の一周期区間[0,T]のLaplace変換は



ということになる。これは通常のLaplace変換のように定義区間[0,∞]ではないことに注意。既知の非周期関数の一部を繰り返すような周期関数の場合には既知の非周期関数のLaplace変換公式がそのまま使えないことに注意。

従って繰り返し関数のLaplace変換はシフト定理と重ね合わせの理で



ということになる。

P.S

数学的に厳密にこれらの性質を証明しようとすると難儀なので、おおざっぱな式の導出にとどめた。大抵の市販の本もその多かれ少なかれ厳密ではない。式を暗記するよりは簡単に導出できる道筋を憶えておくほうが大事だ。そうすると式の意味を正確に理解し記憶違いを無くすことができる。

Laplace変換で関数を一定区間だけ切り出すには依然としてHeavisideの階段関数を一般化した単位ステップ関数が使われる。単位ステップ関数を時間微分するとDiracのδ関数になるが、これは19世紀には無かった超関数なので、必要な時だけにとどめよう。デジタル信号処理のように離散的な関数を扱うような場合には必須になる。

P.S

上の二重積分では縦横無尽に積分順序を変更していることに注意。積分順序の変更は厳密にはFubini-Tonelliの定理が成り立つ場合にのみ可能である。このことは20世紀に入ってから示されたので19世紀ではまだ曖昧だった。
webadm
投稿日時: 2012-8-25 23:18
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
部分分数展開
部分分数展開は過渡現象の演習問題でHeavisideの演算子法を使って問題を解く際に良く使用した。元々はそれが起源である。

電気回路の過渡現象を解析する際に、Laplace変換を用いた場合でも、未知関数のLaplace変換が分母と分子がそれぞれsの多項式からなる有理関数として得られる。時間領域での解を得るためにはそれをLaplace逆変換しなければならないが、Heavisideの演算子法と同様に部分分数に分解して項別にLaplace変換対表から逆変換する方法が使える。

部分分数展開については、一端子対回路の時に複素周波数sによるインピーダンス関数からForster展開で回路合成を行う際にも登場している。

時間領域関数f(t)のLaplace変換が以下の様な分母分子がそれぞれsの高次の多項式の場合、いきなりBromwich積分を求めるのは無理である。

分子および分母が既約で分母の次数が分子の次数よりも大きくかつ分母が一次の因子のみを含む場合、そのLaplace逆変換は



ということになる。つまり部分分数に分解して項別にLaplace変換すればよいことになる。

ここで問題なのは部分分数に分解した時の分子の係数をどうやって求めるかということ。これは簡単で、ckを求めるには対応する因子(s-sk)を分母から祓った後、sにskを代入すれば良いのである。



もしくは上記の式でsをskに移行した際の極限値を求めればよい。Hlopitalの定理によって分母分子をそれぞれsで微分すれば



これはを全部の項について適用し項別にLaplce変換すると



ということになる。

これは過渡現象の演習問題の最後の方で用いたHeavisideの展開定理と良くにているので今でもその名前を用いているテキストもある。厳密には違うのだが、考え方は一緒である。

さてHeavisideの展開定理は分母に高次の因子を含む場合(重根を持つ場合)にはそのままでは適用できなかった。Laplace変換でも同じである。

分母に高次mの因子(s-s0)^mを含む場合、H(s)を分母に一次の因子のみを含むsの有理関数とすると



と展開することができる。

c_mはF(s)に(s-s0)^mを乗じて分母から(s-s0)^mを祓ってsにs0を代入すれば求められるのはわかる。



しかし残りc1,...cm-1はどうすんだ(;´Д`)

良く見ると上の式をsで繰り返し微分すれば順次cm-1,cm-2,...c1の項だけが残ることから



ということになる。従ってLaplace逆変換は



ということになる。

最後に分母が複素共役を根に持つ二次因子を含む場合、H(s)をそれらを含まないsの有理関数とすると



と書き換えることができる。最初の項は互いに複素共役な根から成る一次因子に部分分数展開し変数変換して逆変換しても良いが面倒なので以下の性質が知られている。

第一項の分母を祓ってsにa+jbを代入すれば



ということになる。A,Bはそれぞれ実数である。

上記の結果の実数部と虚数部をそれぞれP1,P2と置くと



ということになる。

これを先の展開式に代入すると



従ってこの部分に関するLaplace逆変換は推移定理や変換対表を使って



ということになる。

著者の導出過程の式ではQ0とすべきところがQ1と誤植があるので注意。

この結果は過渡現象の演習問題でHeavisideの演算子法を使った後半の問題で見覚えがある。

さていよいよ演習問題に進もう。

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