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webadm | 投稿日時: 2007-12-13 18:16 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3095 |
ベクトル記号法の意味 さて能書きが長くなってしまったのでそろそろ理論的な意味を学ぶことにしよう。
正弦波交流は一定周期で振幅する電圧もしくは電流の正弦波振動とも言える。 電圧や電流を縦軸に重ねてプロットすると、それは正と負それぞれ等しい振幅幅の長さを持った範囲内を時間と共に往復しながらいずれかの値を取る。 同様に半時計方向に回転する磁界の向きを描くと繰り返し円運動する点と原点を結ぶベクトルとして捉えることができる。回転する点のY軸上の座標を時間軸上でプロットすると正弦波曲線を描くことになる。 ここまでは今まで正弦波交流の考え方と同じである。違いは正弦波交流が正弦波形を描くことから三角関数で表したものが、複素数で表すと平面上で円運動として捉えることができる。時間は角度に変換写像されるため周期的に重ね書きされることになる。そうした方が時間軸上に永遠に続く波形を扱うより扱いは簡単そうである。 電圧や電流を三角関数で表記すると、微分や積分の度にsinからcosに変わったりcosからsinに変わったり符号が変わったりして面倒であるのと、加算や減算の際にそのつど三角関数の加法定理とか合成定理を使って面倒で間違え易い数式操作を行わなければならず効率が悪いという欠点があった。 ところが数学的には複素座標系(ガウス平面)で円運動を捉えると以下の単一の指数関数として表すことができるというのをオイラーという人が発見した。 exp(i(ωt+θ))=cos(ωt+θ)+i*sin(ωt+θ) もちろんこの値は複素数であるためにわかには受け入れ難いが、微分や積分をおこなっても係数が前に出てくるだけで指数関数部分は変わらないという便利な性質がある。 d(exp(i(ωt+θ)))/dt=iω*exp(i(ωt+θ)) ∫(exp(i(ωt+θ)))dt=(1/iω)*exp(i(ωt+θ)) これだと三角関数表現の時に苦労していた煩わしい式の操作が微分の場合は角速度を乗じるだけ、積分の場合は角速度で割るだけという変形で済むので超便利である。 今まで面倒で直感的にできなかった式の操作がこれで一気に直感的にできるようになる。こうした興味深い複素関数の性質からヘビサイドは演算子法を思いついたのかもしれない。演算子法では微分は演算子Dを元の関数に掛け、積分はDで元の関数を割るというアイデアである。演算子法もラプラス変換も一端関数を複素数空間に変換して後で戻すというのが共通の原理である。スカラーから一度高次元の複素数へ持っていくと扱いが楽になる、それで後でスカラーに投影すれば微分方程式の解が得られると。Maximaとかはちゃっかり内部でラプラス変換を使用して微分方程式を解いていたりするのが時々へんてこな式を与えると内部エラーでラプラス変換をしようとして書き直された式が表示されるのでそれとわかる。 三角関数を複素指数関数に置き換えたので、従来スカラー値として扱っていたその他の数も複素数表現にする必要がある。 従って今まで学んだインピーダンスとかはスカラー値としてはそのまま有効だが、複素数表現で書き直す必要がある。 今用いている参考書「詳解 電気回路演習(上)」では、指数関数を数学の一般的なeではなくεをなんの前触れもなく用いている。これはそれ以前にeを電圧の瞬時値の記号として用いてきたのでそれとの混同を避けるためである。εは数学の指数関数eと読み替える必要がある。 また電気回路理論では、複素数表記で虚数単位元を数学で一般的なiではなくjを使用している。これは電磁気学では数学の場合と同じiが使われているのに対して区別するためであると思われる。今日でもまだ電気回路と電磁気学は別々であって統一されることもないからであろう。歴史的には電磁気学の方は速くから複素数を扱う必要があったが、現在の電気回路理論が複素数の虚数部をその電圧や電流の瞬時値として扱うのに対して、電磁気学では実数部を瞬時値として扱っているという微妙なニュアンスの違いがある。それ以外は扱いは一緒であるが。電気回路ではiが電流を表す記号に使われているので混同をさけるためにjにしたという説もある。 あと複素数の掛け算や割り算も三角関数の時と比べるとはるかに扱いが楽である。掛け算や割り算は複素平面上でのベクトルの回転座標変換として表される。 これらについての詳細にどのように従来の交流回路の公式がベクトル記号法で簡潔な形に書き直されるかは後日。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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ベクトル記号法 | webadm | 2007-12-11 20:30 |
Re: ベクトル記号法 | webadm | 2007-12-13 13:38 |
» ベクトル記号法の意味 | webadm | 2007-12-13 18:16 |
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Re: ベクトル記号法の意味 | webadm | 2007-12-14 19:10 |
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Re: 基本回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンス | webadm | 2007-12-16 17:15 |
電力の複素数表示 | webadm | 2007-12-16 18:27 |
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