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投稿者 | スレッド |
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webadm | 投稿日時: 2008-10-16 10:46 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3095 |
【2】網目方程式(その2) 次ぎも網目方程式に関する問題だがいきなり難問である。
I1+2*I2+3*I3=4 5*I1+6*I2+7*I3=8 9*I1+10*I2+11*I3=11 と見た目はそれらしい網目方程式のI1,I2,I3を求めよというもの。また解けない場合にはその理由と物理的な意味について考えよというもの。 網目方程式を行列で表すと I=(I1,I2,I3) E=(4,8,11) Z=([1,2,3],[5,6,7],[9,10,11]) Z*I=E と表される。 Maximaで解いてみると (%i1) e1:I1+2*I2+3*I3=4; (%o1) 3*I3+2*I2+I1=4 (%i2) e2:5*I1+6*I2+7*I3=8; (%o2) 7*I3+6*I2+5*I1=8 (%i3) e3:9*I1+10*I2+11*I3=11; (%o3) 11*I3+10*I2+9*I1=11 (%i4) solve([e1,e2,e3],[I1,I2,I3]); Inconsistent equations: (3) -- an error. To debug this try debugmode(true); となって解けない。 インピーダンス行列を良くみると第一行の要素にすべて4を加えたものが第二行と等しく、8を加えたものが第三行と等しいことがわかる。 Z=([1,2,3],[5,6,7],[9,10,11]) =([1,2,3],[1+4,2+4,3+4],[1+8,2+8,3+8]) 行列の一つの行が2つの行の和になっているときその行列式の値は、その行をそれぞれの行に置き換えた行列の行列式の和で表される。 |Z|=|[1,2,3],[1,2,3],[9,10,11]|+|[1,2,3],[4,4,4],[9,10,11]| =|[1,2,3],[1,2,3],[1,2,3]|+|[1,2,3],[1,2,3],[8,8,8]|+|[1,2,3],[4,4,4],[1,2,3]|+|[1,2,3],[4,4,4],[8,8,8]| また同じ行もしくは列を持つ行列式の値は0となることから、それぞれの行列式の値は0である。従ってこのインピーダンス行列Zの行列式の値も0となってしまうためこの網目方程式は解けない。 とするとこれは物理的にどういう意味だろう? わかんねー と眠れずに考えていたら驚愕の事実が明らかに 著者の解をちらっと見るとI3をxと置いて2つの方程式だけを使ってI1,I2を求めている。それによると I1=-2+x I2=3-2*x ということで任意のxに対してI1,I2が一意的に決定するということで閉回路は2つしかなく無理矢理3つ目の閉回路とそれを流れる電流を仮定して式を立てたのが原因であるとしている。 しかしこのI1,I2を第三の式に代入してみると 9*I1+10*I2+11*I3=11 =9*(-2+x)+10*(3-2*x)+11*x =-18+9*x+30-20*x+11x =-18+30+(9-20+11)*x =12 なんと 11=12 と矛盾した結果になってしまう。 つまり本当は第三の式は 9*I1+10*I2+11*I3=12 でなければならない。誤植発見。 そうすると第三の式は第二の式を2倍したものから第一の式を差し引いたものと等しいことになる 2*(5*I1+6*I2+7*I3=8)= 10*I1+12*I2+14*I3=16 -) I1+ 2*I2+ 3*I3=4 ----------------------- 9*I1+10*I2+11*I3=12 ということで第三の式は第一の式と第二の式から導かれるので独立した閉回路ではないことが判明した。 そうすると実際の回路はどんなものが考えられるだろうか? わかんねー 悩み続けてようやく糸口のようなものが見えてきた。 まず閉回路の数をl,岐路の数をb、節点の数をnとした場合 l=b-(n-1) という関係があることは既に承知の通り。 l=2となるには最低条件b=5,n=4でないといけない。 これは回路にすると この回路の方程式は (Z1+Z3)*I1+Z3*I2=E1 Z3*I1+(Z2+Z3)*I2=E2 となる。これを行列式で書き直すと Z=([Z1+Z3,Z3],[Z3,Z2+Z3]) I=([I1],[I2]) E=([E1],[E2]) Z*I=E これに対して問題の方程式をI3=0とした場合 I1+2*I2=4 5*I1+6*I2=8 9*I1+10*I2=12 これらの式から任意の2式を使って同様に行列式表現にしてもインピーダンス行列が非対称行列となってしまう。 そこで対称行列になるように片方の式を整数倍しても式としては成り立つので第一の式を5倍し第二の式を2倍して 5*I1+10*I2=20 10*I1+12*I2=16 行列式に直すと ([5,10],[10,12])*([I1],[I2])=([20],[16]) ということになる。従ってこれを先の回路に適用すると Z1+Z3=5 Z3=10 Z2+Z3=12 E1=20 E2=16 ということになり、Z1,Z2,Z3について解くと (%i2) solve([Z1+Z3=5,Z3=10,Z2+Z3=12],[Z1,Z2,Z3]); (%o2) [[Z1=-5,Z2=2,Z3=10]] Z1=-5 Z2=2 Z3=10 ということになる。 こうした解は無数に存在する、第二の式を2倍して第三の式と組み合わせると 10*I1+12*I2=16 9*I1+10*I2=12 行列式で表すと ([10,12],[9,10])*([I1],[I2])=([16],[12]) Z1+Z3=9 Z3=10 Z2+Z3=12 (%i3) solve([Z1+Z3=9,Z3=10,Z2+Z3=12],[Z1,Z2,Z3]); (%o3) [[Z1=-1,Z2=2,Z3=10]] Z1=-1 Z2=2 Z3=10 というのもまたひとつの解である。 いずれの2つもI3=0の条件なら与えられた方程式を満たすが、I3が0でない元々の方程式を満たす回路となると難しい。 そもそもI3って何だ?という疑問が出てくる。 岐路数と節点数を更に増やしても閉回路の数が2つだと基本はこれと同じ形になる。 回路から回路方程式を導くのは容易だが逆はそうではない。これは回路から回路方程式がいく通りでも(係数を掛ければ)導出できてしまうのと一緒である。 そういえば昔英国のSF TV番組「謎の円盤UFO」の一話にUFOを追跡して宇宙人の星を突き止めたという話があり、最後に撮影された写真から星の大きさを特定するという段階で撮影倍率が解らないため大きさは求められないという事実を突きつけられストレイカー司令官が愕然とするシーンで終わったのが記憶に残っている。 元々の問題の方程式の係数が1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12という連続数を割り当ててこしらえたものだと想像されるので、出題者が元の回路を予め想定していたかは疑わしい。少なくとも著者はそこまで解答で踏み込んでいないので著者も正しく問題に解答しているとは言い難い。 これについては読者の課題とするとともに、今後の研究課題としよう。回路網理論の奥深さを思い知らされる問題であった。 P.S 参考図書「線形回路理論」高木茂孝 著 正晃堂 には "また、節点解析から得られる行列表現においてYij=Yjiという対称性が存在するのに対して、閉路解析から得られる行列表現においては、このような対称性は存在しない。" ときっぱり言い切っている。確かに閉回路の取り方によってはそういったことにもなる、特に2つの閉回路が互いに重なり合うようにして方程式をたてるとインピーダンス行列は非対称行列となる。例えば、 図のように閉回路を設定した場合、方程式は Z1*(I1+I2)+Z3*I1=E1 Z3*I1-Z2*I2=E2 これを行列表現に直すと ([Z1+Z3,Z1],[Z3,-Z2])*([I1],[I2])=([E1],[E2]) ということになりインピーダンス行列は非対称行列となる。 問題の方程式も閉回路が互いに重なり合うという前提で考え直すと良いかもしれない。 P.S たてた方程式を良くみたら重なっているのはループ電流だけで、回路方程式自体の閉回路は独立していた。 方程式を解いてみると、実はこれでもあっているということが判明。閉路方程式はこうしたところがややこしい。見た目は独立した閉回路が3つあっても、等価回路的には2つの場合には、ループ電流変数は2つで済んだりするのは面白い。要はすべての岐路をどっかのループ電流が流れるように設定できればそれで良しということになる。いろいろバリエーションがありすぎ。 他にも検討する中で、出題の方程式のようなものが書けそうな回路を思いついたような気がしたが眉唾だった(;´Д`) |
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