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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2008-11-4 23:56
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3095
【34】Millmanの定理(その4)
次ぎは電子回路解析へのMillmanの定理の応用。



今度はいささか古い真空管増幅回路を等価回路を用いて解析する。

右の等価回路をMillmanの定理を応用して増幅度A(Epk/Eg)を求めよというもの。

左の回路にあるEccはグリッドバイアス電源でグリッド電位をカソード(K)の電位よりも常に低く保つために負のバイアスをかけるためのもの。グリッド電位がカソード電位より高くなってしまうとグリッドがプレート電極のようになってしまってプレートとカソード間を流れる電流の制御が不能になってしまうためである。等価回路ではそれは考えなくても良いのでグリッドとカソード間電位の変化分(Egk)に相当する定電圧源に置き換えられている。

Cgk,Cgp,Cpkはそれぞれ真空管内部の構造上持っているグリッドとカソード間、グリッドとプレート間、プレートとカソード間に存在する寄生コンデンサである。ごくわずかな値だが高周波になるにつれ無視できなくなる。特にCgpはプレート側からグリッド側へ出力信号が入力に帰還するため高周波では自己発振してしまう原因となる。CgkやCpkは周波数が高くなると信号をバイパスしてしまうのでローパスフィルタの効果を持つ。

riは真空管内部のプレートとカソード間の内部抵抗である。真空管の場合はトランジスタと比較して内部抵抗が非常に大きいため、大きな電流を流す用途では高いプレート・カソード間電圧、通称B電圧(Ebb)を与える必要がある。

Zlは出力信号を取り出すための負荷抵抗。

Epkは等価回路にMillmanの定理を適用することで複数の等価電圧源が並列に接続された合成電圧として導くことができる。

Epk=ΣYi*Ei/ΣYi

ここで

ΣYi*Ei=(jωCgp)*Eg+(1/ri)*(-μ*Eg)
=-j*Eg*ωCgp-μ*Eg/ri
=-Eg*(μ/ri+jωCgp)

ΣYi=(jωCgp+1/ri+jωCpk+1/Zl)
=(-jω*(Cgp+Cpk)+1/ri+1/Zl)
=(-jω*(Cgp+Cpk))+(ri+Zl)/ri*Zl)
=((ri+Zl)/ri*Zl-jω*(Cgp+Cpk))

従って

Epk=ΣYi*Ei/ΣYi
=-Eg*(μ/ri+jωCgp)/((ri+Zl)/ri*Zl-jω*(Cgp+Cpk))
=-Eg*(μ/ri+jωCgp)*((ri+Zl)/ri*Zl+jω*(Cgp+Cpk))/(((ri+Zl)/ri*Zl)^2+(ω*(Cgp+Cpk))^2)
=-Eg*(μ*(ri+Zl)/ri^2*Zl-ω^2*Cgp*(Cgp+Cpk)+jω*(Cgp*(ri+Zl)/ri*Zl+μ*(Cgp+Cpk)/ri))/(((ri+Zl)/ri*Zl)^2+(ω*(Cgp+Cpk))^2)

ということになる。

従って増幅率Aは

A=Epk/Eg
=-Eg*(μ*(ri+Zl)/ri^2*Zl-ω^2*Cgp*(Cgp+Cpk)+jω*(Cgp*(ri+Zl)/ri*Zl+μ*(Cgp+Cpk)/ri))/(((ri+Zl)/ri*Zl)^2+(ω*(Cgp+Cpk))^2)/Eg
=-(μ*(ri+Zl)/ri^2*Zl-ω^2*Cgp*(Cgp+Cpk)+jω*(Cgp*(ri+Zl)/ri*Zl+μ*(Cgp+Cpk)/ri))/(((ri+Zl)/ri*Zl)^2+(ω*(Cgp+Cpk))^2)

ということになる。

ここでCgk,Cgp,Cpkが無視できるほど小さい値の場合、それらを係数に持つ項は無視できるので

A=-μ*(ri+Zl)/ri^2*Zl*((ri+Zl)/ri*Zl)^2
=-μ*Zl/(ri+Zl)

と近似できる。

これは以前に出てきたFET回路と同じである。

P.S

近似する前の増幅率の式に

μ=22
Cpk=100 [pF]
Cgp=10 [pF]
ri=8000 [Ω]
Zl=1000 [Ω]

を与えて100〜10MHzまでの増幅率の絶対値の周波数特性をプロットしてみた。



このあたりは更に研究すると面白いかもしれない。

P.S

最初は増幅率の元の式の展開をミスっていてω^2の項がなかったり、違う項にωがついていたりして高い周波数で右上がりの特性になったり、気づいて直したら今度は数百MHzまでフラットな特性だったり(数百MHzでさすがにゲインが0dBを切るのでもっともらしいくはなったが)。最終的に誤りを直したら、妥当な周波数特性になった。主にCpkによるローパスフィルター効果である。この等価回路では入力が定電圧源になっているので出力がCgpを介して帰還する効果を確認することはできず、三極管が自己発振し易いという性質を見ることはできない。等価回路を少し修正すればそうした帰還成分を加味することも可能かもしれない。
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