ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
Main Menu
Tweet
Facebook
Line
:-?
フラット表示 前のトピック | 次のトピック
投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2009-11-11 19:00
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3088
Foster展開(部分分数展開)
さてこれまで二端子回路網の駆動点インピーダンスがLとCからのみ成る受動回路の場合に以下の様なリアクタンス関数として表されることと、現実に構成可能なための必要十分条件とそれらの諸性質について学んだ。

Z(s)=H \frac{\left(s^2+{\omega_{1}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{3}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-1}}^2\right)}{s \left(s^2+{\omega_{2}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{4}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-2}}^2\right)}

またそれらを部分分数に展開すると以下の様に表されることも学んだ。

Z(s)=\frac{h_0}{s}+\sum_{k=1}^n\frac{h_{2k}s}{s^2+{\omega_{2k}}^2}+h_\infty{s}

これは良く見ると、以下の様に複数のインピーダンスの総和という形に捉え直すことができる。

Z(s)=Z_0(s)+\sum_{k=1}^n Z_{2k}(s)+Z_\infty(s)

ここで

Z_0(s)=\frac{h_0}{s}\\Z_{2k}(s)=\frac{h_{2k}s}{s^2+{\omega_{2k}}^2}\\Z_\infty(s)=h_\infty{s}

である。

それぞれの部分インピーダンスの式にs=jωを代入して整理すると、

Z_0(j\omega)=\frac{h_0}{j\omega}=\frac{1}{j\omega(\frac{1}{h_0})}=\frac{1}{j\omega C_0}\\Z_{2k}(j\omega)=\frac{h_{2k}j\omega}{(j\omega)^2+{\omega_{2k}}^2}=\frac{1}{j\omega(\frac{1}{h_{2k}})+\frac{1}{j\omega(\frac{h_{2k}}{{\omega_{2k}}^2})}}=\frac{1}{j\omega C_{2k}+\frac{1}{j\omega L_{2k}}}\\Z_\infty(j\omega)=h_\infty{j\omega}=j\omega h_\infty=j\omega L_\infty

ここで

C_0=\frac{1}{h_0}\\L_{2k}=\frac{h_{2k}}{{\omega_{2k}}^2}\\C_{2k}=\frac{1}{h_{2k}}\\L_\infty=h_\infty

ということになり、以下の図のような回路と等価であることがわかる。



これをFoster第一形式と呼ぶ。

一方、アドミッタンス関数として見ると

Y(s)=H \frac{\left(s^2+{\omega_{1}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{3}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-1}}^2\right)}{s \left(s^2+{\omega_{2}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{4}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-2}}^2\right)}

リアクタンス関数と同様に部分分数展開され

Y(s)=\frac{h_0}{s}+\sum_{k=1}^n\frac{h_{2k}s}{s^2+{\omega_{2k}}^2}+h_\infty{s}

以下のようなアドミッタンスの総和として表される

Y(s)=Y_0(s)+\sum_{k=1}^n Y_{2k}(s)+Y_\infty(s)

ここで

Y_0(s)=\frac{h_0}{s}\\Y_{2k}(s)=\frac{h_{2k}s}{s^2+{\omega_{2k}}^2}\\Y_\infty(s)=h_\infty{s}

である。それぞれのアドミッタンスはs=jωに置き換えて整理すると

Y_0(j\omega)=\frac{h_0}{j\omega}=\frac{1}{j\omega(\frac{1}{h_0})}=\frac{1}{j\omega L_0}\\Y_{2k}(j\omega)=\frac{h_{2k}j\omega}{(j\omega)^2+{\omega_{2k}}^2}=\frac{1}{j\omega(\frac{1}{h_{2k}})+\frac{1}{j\omega(\frac{h_{2k}}{{\omega_{2k}}^2})}}=\frac{1}{j\omega L_{2k}+\frac{1}{j\omega C_{2k}}}\\Y_\infty(j\omega)=h_\infty{j\omega}=j\omega h_\infty=j\omega C_\infty

ここで

L_0=\frac{1}{h_0}\\C_{2k}=\frac{h_{2k}}{{\omega_{2k}}^2}\\L_{2k}=\frac{1}{h_{2k}}\\C_\infty=h_\infty

ということになり、以下の図のような回路と等価であることがわかる。



これをFoster第二形式と呼ぶ。

部分分数に展開した際の各係数を求めればそれらから等価回路の素子のインダクタンスやキャパシタンス値が得られることになる。それぞれの係数はリアクタンス関数の式が決まれば以下のようにして求まる。

ω=∞に極に持つケースでは

h_0=\left[s Z(s)\right]_{s=0}=\frac{H \omega_1^2\omega_3^2...}{\omega_2^2\omega_4^2...}\\h_{2k}=\left[\frac{\left(s^2+{\omega_{2k}}^2\right)}{s} Z(s)\right]_{s^2=-{\omega_{2k}}^2}=H\frac{({\omega_1}^2-{\omega_{2k}}^2)({\omega_3}^2-{\omega_{2k}}^2)...}{-{\omega_{2k}}^2({\omega_2}^2-{\omega_{2k}}^2)({\omega_4}^2-{\omega_{2k}}^2)...}\\h_\infty=\left[\frac{Z(s)}{s}\right]_{s=\infty}=\left[H\frac{\left(1+a_{n-1}s^{-2}+...+a_{1}s^{-2(n-1)}+a_0{s^{-2n}}\right)}{\left(1+b_{m-1}s^{-2}+...+b_{1}s^{-2(n-2)}+b_0{s^{-2(n-1)}}\right)}\right]_{s=\infty}=H

ω=∞を零点に持つケースでは

h_0=\left[s Z(s)\right]_{s=0}=\frac{H \omega_1^2\omega_3^2...}{\omega_2^2\omega_4^2...}\\h_{2k}=\left[\frac{\left(s^2+{\omega_{2k}}^2\right)}{s} Z(s)\right]_{s^2=-{\omega_{2k}}^2}=H\frac{({\omega_1}^2-{\omega_{2k}}^2)({\omega_3}^2-{\omega_{2k}}^2)...}{-{\omega_{2k}}^2({\omega_2}^2-{\omega_{2k}}^2)({\omega_4}^2-{\omega_{2k}}^2)...}\\h_\infty=\left[\frac{Z(s)}{s}\right]_{s=\infty}=\left[H\frac{\left(1+a_{n-1}s^{-2}+...+a_{1}s^{-2(n-1)}+a_0{s^{-2n}}\right)}{s \left(1+b_{m-1}s^{-2}+...+b_{1}s^{-2(n-2)}+b_0{s^{-2(n-1)}}\right)}\right]_{s=\infty}=0

ということになりL∞は存在しないか短絡されたものと見なされる。

上記はいずれもω=0に極を持つケースであるが、ω=0を零点とするケースでは、部分分数展開が以下の様になる。

Z(s)=H \frac{\left(s^2+0\right)\left(s^2+{\omega_{3}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-1}}^2\right)}{s \left(s^2+{\omega_{2}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{4}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-2}}^2\right)}\\=s H \frac{\left(s^2+{\omega_{3}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-1}}^2\right)}{\left(s^2+{\omega_{2}}^2\right)\left(s^2+{\omega_{4}}^2\right)...\left(s^2+{\omega_{2n-2}}^2\right)}\\=\sum_{k=1}^n\frac{h_{2k}s}{s^2+{\omega_{2k}}^2}+h_\infty{s}

従って直列のC0が存在しないか短絡された回路となる。

これらのことから、Foster第一形式は以下の4ケースに分類される。

\begin{array}Case & \omega=0 & \omega=\infty & C_0 & L_\infty\\ 1 & pole & pole & present & present\\ 2 & zero & zero & short-circuited & short-circuited\\ 3 & pole & zero & preset & short-circuited\\ 4 & zero & pole & short-circuited & presetnt\end{array}

同様のことがFoster第二形式についてもあてはまる。

\begin{array}Case & \omega=0 & \omega=\infty & L_0 & C_\infty\\ 1 & pole & pole & present & present\\ 2 & zero & zero & absent & absent\\ 3 & pole & zero & preset & absent\\ 4 & zero & pole & absent & presetnt\end{array}

また、Foster第一形式と第二形式は互いに逆の関係にあるので、同じ等価回路で一方が極をとるときその逆数は零点となり、その逆も真なりで、以下の対応関係が存在する。

\begin{array}first Foster form & second Foster form\\ 1 & 2\\ 2 & 1\\ 3 & 4\\ 4 & 3\end{array}

等価回路を見れば、Foster第一形式から帯域阻止フィルタを、Foster第二形式から帯域通過フィルタを構成できることがわかる。逆数をとれば、それぞれ逆のフィルタにすることもできる。これはそれまで勘と経験のみに頼って設計されていた受動フィルタ回路が与えられた仕様から合成し解析できることを示した点で重要である。この業績は即座に当時米国に在住していた数学者Cauerの目にとまり、飛躍的な展開を見ることになる。

ここで小休止して、リアクタンス関数の部分分数展開に関して、数学上とヘビサイドの展開定理との間にあるギャップを埋める考察をしておくことにしよう。気になって眠れないと困るので。

数学的にはリアクタンス関数を有理型複素関数として部分分数展開すると、分母の式は互いに共役な虚根を持つため、数学上は以下の様に展開されるべきである。

Z(s)=\frac{h_0}{s}+\sum_{k=1}^n\left{\frac{h_{2k}}{s+j{\omega_{2k}}}+\frac{h_{2k}\ast}{s-j{\omega_{2k}}}\right}+h_\infty{s}

ここでh2k,h2k*は互いに共役な複素数ということになる。ヘビサイド演算子法を教えていた時代の古い電気回路の参考書には展開定理の生まれた経緯に関して

"これは過渡現象を扱う場合に便利であるので付録として別に述べることにした。微分方程式の解法に用いられたのは1865年で、アイルランドのクイン大学(Queen's university)の数学者ブール(Boole)である。このときはd/dxの代わりにDを用いた。1881年のヘビサイド(Heaviside)の論文にこれがでている。彼はこれを積分定数の決定に用いた。1886年にはヘビサイドは共役定理(Conjugate theorem)を用い、その一ヶ月後に有名な展開定理(Expansion theorem)を完成している。"

とかかれている。これと同じ趣旨のことは"Oliver Heaviside The life, work, and times of an electrical genius of the victorian age" Paul J. Nahin著にも書かれていて、ヘビサイドはBooleの著書を所有していたことは事実らしい。

共役定理というのは何だ? それが謎を解く鍵らしい。

調べてみるとどうやら共役定理(conjugate theorem)というのは共役根定理(Conjugate pair theoremもしくはConjugate root theorem、あるいはまとめてComplex Conjugate Pair Root Theorem)と呼ばれているものらしい。n次の複素1変数代数方程式はn個の根を持つという代数学の基本定理の派生定理で、代数方程式が虚根を持つ場合、その共役もまた根であるというもの。つまり代数方程式の虚根はかならず互いに共役な対で存在するというもの。

複素共役な部分分数に展開された項を再び結合すると

\frac{h_{2k}}{s+j{\omega_{2k}}}+\frac{h_{2k}\ast}{s-j{\omega_{2k}}}=\frac{h_{2k}(s-j{\omega_{2k}})+h_{2k}*(s+j{\omega_{2k}}}{(s^2+{\omega_{2k}}^2)}=\frac{(h_{2k}+h_{2k}*)s+j(h_{2k}*-h_{2k})\omega_{2k}}{(s^2+{\omega_{2k}}^2)}

ということになる。

ここで正実関数であるためには分子の多項式の係数がすべて正の実数でなければならないことから

h_{2k}*-h_{2k}=0

でなければならず従って

h2k=h2k*

ということになる。先の部分分数展開は以下のように表すことができる。

Z(s)=\frac{h_0}{s}+\sum_{k=1}^n\frac{2h_{2k}s}{(s^2+{\omega_{2k}}^2)}+h_\infty{s}

著書によっては、このように係数が2倍された表記が使用されているのはこのためである。
フラット表示 前のトピック | 次のトピック

題名 投稿者 日時
   1端子対回路 webadm 2009-10-15 7:06
     複素角周波数 webadm 2009-10-15 19:22
     インピーダンス関数 webadm 2009-10-15 21:47
     正実関数(Positive Real Function) webadm 2009-10-16 1:11
     リアクタンス関数 webadm 2009-10-22 7:47
   » Foster展開(部分分数展開) webadm 2009-11-11 19:00
     Cauer展開(連分数展開) webadm 2009-11-12 1:04
       Re: Cauer展開(連分数展開) webadm 2009-12-20 2:36
     RL一端子対回路 webadm 2009-12-2 4:14
     RC一端子対回路 webadm 2009-12-24 19:18
     逆回路(Inverse Network) webadm 2009-12-25 18:57
     定抵抗回路(constant resistance network) webadm 2009-12-25 21:21

投稿するにはまず登録を
 
ページ変換(Google Translation)
サイト内検索