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webadm | 投稿日時: 2009-12-2 4:14 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
RL一端子対回路 ほとんどの回路網理論の著者はなんの脈略もなくLC一端子対回路に続いてRL一端子対回路やRC一端子対回路を説明している。このことが前にも述べたようにCauerを歴史から葬り去る傾向の現れでもある。
我々はリアクタンス関数でやったようにCauerの再構成したやり方でRL,RC回路を扱うことにする。すなわち2種類の受動素子の組み合わせ(LC,RL,RC)からなるN端子網回路で一端子対以外の端子をすべて短絡したものを一端子対回路として出発する。この方法によってCauerはLC,RL,RC一端子対回路がすべて同型のaffine変換群であることを発見した。 The Scientific Work of Wilhelm Cauer and its Key Position at the Transition from Electrical Telegraph Techniques to Linear Systems Theory by Rainer Pauli このことについては数学的に高度すぎるので割愛されるのは仕方が無いが、中途半端にCauerの名前を出さずに結論だけ紹介するのは納得がいかない。 リアクタンス関数で出てきた駆動点インピーダンスの定義に立ち戻ろう。 リアクタンス関数の場合は損失の無いLとCからのみマトリックス要素Zijが構成されていたが、今度はRとLのみで構成されるので ということになる。 ここで と置くと ということになる。 従って ここでを満たすn個の根をそれぞれとすると 同様に 従ってRL一端子対回路の駆動点インピーダンスは すべての根が実数であるため零点と極は負の実軸上にのみ現れる。これはsの実数部が負(Re(s)<0)の領域を意味し、振幅が時間と共に減衰して0に収束する場合に限られる。sの実数部が正の領域ではs=0を除いて零点も極も存在しないことを意味する。 LC一端子対回路と同様に分子の次数が分母の次数よりも1多い。LC一端子対回路の駆動点インピーダンスの式と見比べると RL一端子対回路のsをs^2に置き換えsで割ったものと同型である。 また逆に ということになる。 既にリアクタンス関数はsに関して奇関数であることを学んだので、上記の関係からRL一端子対回路の駆動点インピーダンスはs^2に関して偶関数であるということだけは言える。 RL一端子対回路の駆動点インピーダンスの式を部分分数展開すると分子の次数が分母の次数よりも1大きいので|s|=∞に極を持つため ということになる。これは天下りなので何故こうなるのか納得がいかないので先へ進めなかった。 前出のRL一端子対回路の式とLC一端子対回路の式の変換を使えば、LC一端子対回路の時の部分分数展開の式を変換することで上記の展開式を導くことが出来る、ということがようやく判った。 リアクタンス関数の部分分数展開を思い出すと 先ほどの関係式から、上記の式にsを乗じて、s^2をsに書き換えればRL一端子対回路の式となることから 上記の式のs^2をsに、ω2k^2をα2kにそれぞれ置き換えればRL一端子対回路の式の部分分数展開となる という種明かしだったのである。なんだ簡単じゃないか(´∀` ) これをFoster展開すると 第一形では ということになり以下の様な回路構成となる。 リアクタンス関数の時にやったように駆動点インピーダンス関数を駆動点アドミッタンス関数と見なすと む (つд⊂)ゴシゴシ Σ (゚Д゚;) なんとアドミッタンス関数はRC回路になってしまった。 回路構成で表すと。 ということになる。 これは原点に立ち戻って良く考えれば理由は明白である。最初にn端子対回路網のアドミッタンスマトリックスの全要素を として1端子対回路網の駆動点アドミッタンス関数を導いたことを意味し、LがCに変わってしまうためである。従ってRL一端子回路とRC一端子回路は双対的な関係にあると言える。LC一端子回路ではLとCがそれぞれCとLになってもLC一端子対回路であることには変わりなかったがRL一端子対回路やRC一端子対回路ではそうはならない。 そこで改めて第一形でやったようにLC一端子対回路のアドミッタンス関数の部分分数展開式からRL一端子対回路のアドミッタンス関数の部分分数展開式を導いてみよう Foster展開(部分分数展開)で登場したLC一端子対回路のアドミッタンス関数の部分分数展開を再掲 これをsで割って、s^2をsに変換すればRL一端子対回路の式になる 従ってs^2をsにω2k^2をα2kに置き換えると ということになる。IQが低いとこういう数学的な発想は浮かばない。 今度は最初の駆動点インピーダンス関数の逆数としての駆動点アドミッタンス関数を部分分数展開してみよう ということになる。良く見るL0とG∞の値は常に∞と0なのでアドミッタンスとして存在しないのと一緒である。 分子の次数が分母の次数よりも1少ないので|s|=∞に零点を持つためG∞は存在せず、またs=0に零点を持たないのでL0も存在しないことになる。 最初の頭の良い人向けの導き方ではなくて、普通の人向けの部分分数展開を考えれば以下のようになるはずである。 ということになるので元々L0,G∞は存在しないのである。一端子対回路についてページ数を多く割いている手元の古い本ではどれもL0,G∞の項は出てこない。割愛はしていないが要点のみに絞っている近年の本ではすべからくLC一端子対回路から変換したL0,G∞の項がある式が示されているのみで、実はそれらは存在しないというところまではページ数が割けず説明されていないので鵜呑みは禁物である。 同様に第二形の駆動点インピーダンス式をそのまま駆動点インピーダンス関数とすると ということになる。 今度はCauer展開がどうなるか調べてみよう 第一形では次数の大きい項から切り出していくのと分子の次数が分母の次数よりも1大きいのでsの一次式が最初に商として出てくる ということになる。 第二形ではインピーダンス関数を最も次数の低い項から切り出していくので ということになる。 Cauer展開でもFoster展開と同様にアドミッタンス関数として展開するとRC回路として合成される。 第一形は次数の大きい項から切り出していくのと分子の次数が分母の次数より1大きいので 第二形は第一形と同じ式を次数の小さな項から切り出していくのと分子の次数が分母の次数よりも1大きいので LC一端子対回路は零点と極が虚軸上にのみ現れるのに対して、RL一端子対回路の場合にはキャパシタンス素子が存在しない換わりに損失が存在するので共振点や逆共振点もなく零点と極は負の実軸上か|s|=∞にしか現れない点で性質が大きく異なる。一見すると同じ概念が通用しないように思えるが、数学的に見ると同じ変換群に属するということになる。 というと難しいが、実はそうした高度な数学の話を持ち出さなくても平易な解説は出来るのを以下の本で知った 電気書院 最新高級電験講座 4 「電気回路」大坪昭 著 RL一端子対回路のみならず一端子対回路は複素関数論を持ち出さなくても既に交流回路理論で学んだ記号法を使って平易に説明できることを示している。残念ながらページ数が割けない理由からか回路合成に関わる式が未知数である定数を左辺に置いたものではなく判り難いが間違ってはいない。定数を左辺に置くように書き換え整理するとここで書いたものと同じことが確認できる。 ただ上記の本は電験受験者向けなのでそこに書いてある以上の理論的に未開拓な部分まで視野を広げることはしていない。そうした部分に興味のある人向けではない。数学の複素解析論を持ち出すことによって初めてその先まで視野を広げることができる。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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1端子対回路 | webadm | 2009-10-15 7:06 |
複素角周波数 | webadm | 2009-10-15 19:22 |
インピーダンス関数 | webadm | 2009-10-15 21:47 |
正実関数(Positive Real Function) | webadm | 2009-10-16 1:11 |
リアクタンス関数 | webadm | 2009-10-22 7:47 |
Foster展開(部分分数展開) | webadm | 2009-11-11 19:00 |
Cauer展開(連分数展開) | webadm | 2009-11-12 1:04 |
Re: Cauer展開(連分数展開) | webadm | 2009-12-20 2:36 |
» RL一端子対回路 | webadm | 2009-12-2 4:14 |
RC一端子対回路 | webadm | 2009-12-24 19:18 |
逆回路(Inverse Network) | webadm | 2009-12-25 18:57 |
定抵抗回路(constant resistance network) | webadm | 2009-12-25 21:21 |
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