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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2011-10-10 3:34
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
一般的な常微分方程式とその解法
著者は冒頭でいきなり常微分方程式論を初めているが、いささか唐突すぎる感があるのは否めない。そこで最初に問題ありきでそれに対して数学的な光をあてるのが適当であるように思う。

歴史的には微分方程式と微積分学は同時期に生じたものであるが、伝統的には微積分学が解析学入門で重視され、微分方程式論は後回しか応用数学として扱われる。確かに微分方程式の解法には微積分学の成果に依存しているので現代的に見れば構造的にはそれであっている。

しかし目的という視点でみると、最初に微分方程式の解法が主眼にあって、微積分学がそれに伴って必要になったといのが歴史的な順序になる。その方が微積分学の重要性をよく認識できる。ただこの順番だと微分方程式の解法理論の中でその都度微積分学の細かな内容に踏み込まなければならないので議論として見通しが悪いということは言える。

結局どうすんだこれ(´Д`;)

手元の数学の本を見ても高木貞治「解析概論」は元来初等関数の解析を主眼としているので、微分法と積分法は登場するが、微分方程式論はまったく扱っていない。第7章の「微分法の続き(隠伏関数)」の中に微分方程式の形をした式を扱っているが微分方程式という言葉自身が索引にも無い。

それに対して工学者向けの数学概論である寺沢寛一「数学概論(増訂版)」には第6章に「微分方程式の初等解法」が登場する。しかし初等と書いてあっても、微分方程式の解法は歴史的に様々の方法が登場しており、多数のページ数が割かれている。これを最初に学ぶのは大変時間がかかると予想される。

当面は受動素子のみから成る集中定数回路の過渡解析が出来ればよいので、微分方程式の中でも以下の様な定係数線型微分方程式に限って解法を研究するので十分である。



xはtを独立変数とする関数で、dx/dtは変数tに関する導関数である。微分方程式は不定元が関数xであり、それを求めるのが微分方程式を解くという意味になる。

線型(linear)という名前がついているのは、左辺が関数とその導関数の線型結合(一次結合)で表されることに由来する。電気回路的ではさしずめ重ね合わせの理ということになる。線型代数の線型方程式(一次方程式)と良く似ている。解き方は自ずと異なるが相似性がある。

右辺のf(t)は左辺の導関数とは独立だが同じtを変数とする関数。

f(t)=0だとちょうど線型方程式みたいになるので、解き方が簡単になる。それは線型同次方程式(linear homogeneous differential equation)と呼ばれる。f(t)≠0は線型非同次方程式(linear non-homogeneous differential equation)と呼ばれる。同次という言葉は古くは斉次という言葉が使われていたが、原語の意味に近い同次が最近では使われているようだ。

ところでそもそもhomogeneous(同次もしくは斉次)ってなんですか(´Д`;)

どうやら数学的には変数を係数倍しても変わらない(同形)という意味らしい。線型同次微分方程式を以下の様に関数Fとして表すと



という意味らしい。すなわち変数をスケーリングしても式の持つ意味は変わらない(同形)ということになる。結果が0なのだから当たり前だよね。

右辺がf(t)≠0となると話しはまるで違ってしまう。

nは0より大きい整数だが、n=1の時を1階微分方程式と呼ぶ。線型方程式の場合の次数と相似だが、二次以上の微分方程式も考えられるので導関数の最高次数は階数呼ぶようだ。微分法ではn次の導関数と呼んでいるのが、微分方程式論ではn階ということになる。英語では次数はdegreeで階数はorderと区別されていることに由来する。それとは別に歴史上の理由から次数では1次には線型(linear)、二次にはquadratic、三次にはcubic、4次にはquartic,
5次にはquinticなどという別名がある。5次以上の方程式は代数的に解くことが不可能なのは有名だよね。1階はfirst order、2階がsecond orderとこれは普通。

前出の寺寛本では最初に一番簡単な一階同次微分方程式が手始めに出てくるのは嬉しい。

寺寛本は最近見たMITの微分方程式の講義と同様に一階同次微分方程式を幾何学的な観点から見ることからはじまる。



という一階同次微分方程式を微分商dy/dx(yの一次導関数)に関する以下の形に書き直す



これはx,yを与えると微分商dy/dxが一意に決まる関係式となる。微分商dy/dxは求めようとする関数y=F(x)が描く曲線上の一点(x,y)を通る接線の傾きを意味する。

MITの講義では簡単な微分方程式を例に実際に黒板上でdy/dxを求めて解となる関数が積分曲線として浮かび上がるのを説明している。Maximaのplotdfパッケージを使うと同じことがコンピュータ上で簡単に出来る。

試しに



なる微分方程式について(x,y)の各格子点について微分商dy/dxを計算してその傾きと、それらと接する形で描かれる解となる関数(積分曲線)を描くには、

load("plotdf")
plotdf(x+y,[trajectory_at,2,-0.1])

とするだけでよい。



(x,y)の格子点は実数域であれば無限に存在するので、解が無限に存在することになる。これが微分方程式の一般解である。特定の条件(例えば予め決められた点を通るような曲線)を与えて得られる解を特別解(特解)と呼ぶ。

特別解を解く問題には2つあり、ひとつはx=0の時に特定のy軸上の点を通る曲線を求める問題は初期値問題(initial condition problem)と呼ぶ。与えられた条件を満たす解が一意に決まる場合にはこの解法が使える。

問題によっては、初期値問題で解が複数存在する場合もある。例えばx=0,y=y0を通る積分曲線が複数あるような場合である。この場合には、もう一点別に特定の点を通るような条件を与える必要がある。区間内の2点を条件として解く問題は境界値問題(boundary condition problem)と呼ばれる。

最初に解いたLC直列回路やRC直列回路の問題の微分方程式を同様に微分商に関する式に書き直すと



となるから、これを初期条件t=0,i=1、T=1としてplotdfでプロットしてみると。

plotdf(-y,[trajectory_at,0,1],[x,-1,5],[y,-0.1,1]);



という具合に指数関数曲線が浮かび上がる。

幾何学的な視点からの微分方程式はこの程度にして、そろそろ解法について考えてみよう。

前出のRL直列回路、RC直列回路の微分方程式を具体例に様々な解法を試してみることにしよう。

・変数分離法

一階同次微分方程式の場合には変数分離法が使える。



この微分方程式はdi,dtを別々の記号として扱い、両辺にdtを掛け、iで割ると



と両辺にdi,dtが分離できる。これをt=0のときi=i0として両辺を積分すると



と解ける。

最初に初期条件を与えた定積分でなくても不定積分することで一般解



が得られる。ここで初期条件t=0,i=i0を与えることで



と特解を導くこともできる。

・積分因子法(もしくは定数変化法)

変数分離法が使えないような定数項を含む場合には積分因子法が使える。積分因子法は微分方程式の解が初等関数で表される場合に、それを両辺に乗じて積分可能な方程式に書き換えるテクニックである。

変数分離が出来ない以下の方程式を考える



予め積分因子として使用する初等関数としてX(t)とG(t)を考え以下の関数が解となりえるか調べることにする



これを微分すると



この2式を代入すると



ここで



と仮定すると



と変数分離形となる。

積分すると、



ということになる。これを仮定した等式に代入すると



このX(t),G(t)を元の仮定解の式に代入すると



が一般解ということになる。

もしくは既に示した通りに、部分方程式の両辺に



を乗じると



また



であるから



ということになる。

両辺を積分すればよく



これが一般解となる。以前に同じ方法で導いたものと同じである。

一般に冒頭に現れた常微分方程式の解はどの本にも書いてある通りに、



となる。ここでp1,p2,...,pnは以下の特性方程式(characteristic equation)の根である



pjがk重根の場合には、Ajを係数とする項を



とすればよい。

P.S

ここで紹介した微分方程式の解法は戦後改訂加筆された谷村功「無線用高等数学」を参考にしたが、積分因子法とある方法の最初のものはどうも今日では定数変化法と呼ばれているものである。なにもそんな古い本を持ち出さなくてもと思うかもしれないが、最近のものは微分方程式の解法に関する詳しい解説が省かれているものがほとんどであるのと、数学書では具体例が乏しいというのが理由である。
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