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webadm | 投稿日時: 2012-9-22 4:23 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
反射、透過と定在波比 最初に分布定数回路の基本式を考えた際に、入射波と反射波の概念が登場した。
それに関して反射係数、透過係数、定在波比という概念があるが、著者は結論だけ示しているだけなのでピンとこない。図の意味も良くわからない。 どうやら著者はかなり話しを端折っているようだ。 ひとつ手前で学んだ位置角の続きから始める必要がある。 受電端にZRの負荷を接続されている場合に受電端からの位置x'における電圧EPは で表されていた。これを入射波と反射波の2成分に分けるために指数関数形式に展開すると ということになる。 従って、受電端からの位置x'=0における入射波と反射波の電圧比は ということになる。これを電圧の反射比もしくは反射係数という。 同様に電流に関して が成り立つことが確かめられる。これが電流の反射比または反射係数でありちょうど電圧の反射比と負号が反転している。 受電端を開放した場合、ZRが無限大となったのに等しいので電圧の反射比は ということになる。すなわち、受電端に到達した入射波はそのまま反射して送電端方向へ戻っていくことを意味する。つまり入射波と反射波は重なり、終端した場合に比べ受電端では2倍の電圧が生じることになる。 同様に受電端を短絡した場合、ZR=0となることから ということになる。すなわち入射波は受電端に到達すると大きさはそのままで、位相が反転して送電端方向へ戻っていくことを意味する。つまり受電端では入射波と反射波が互いに打ち消し合い0となる(短絡しているので当たりまえだが)。 他のテキストによれば、反射比もしくは反射係数の導出の仕方にはいくつかあるようだ。 ここまでの議論をした上で、著者が最初に論じている異種線路の接続点における反射、透過という話しが出来る。 今、伝搬定数γ1で特性インピーダンスがZ01の無損失線路Iと伝搬定数γ2で特性インピーダンスがZ02の無限長無損失線路IIをP点で接続したものとする。 P点での反射係数は線路IのP点での負荷インピーダンスが無限長線路IIの特性インピーダンスになることから、先の反射係数の式より ということになる。 ここで、線路Iの受電端Pでの電圧と電流Eo,Ipが線路IIへ送電されると考えるとP点から線路II方向への位置xでの透過波は伝搬定数γ2により ということになる。従ってP点での電圧透過率は ということになる。 同様にして電流透過率tiも ということになる。 透過率についてはテキストによって定義や導出方法が異なり、記号も一定ではなくどれも判りにくいが、線路Iの受電端での電圧、電流と線路IIの送電端での電圧電流が等しいという条件は共通なので、そこからそれまでの結果を使って簡単に導くことができた。 現実の線路は有限長のため反射波が必ず存在する。定常状態では入射波と反射波の合成によって線路の位置によって時間によって変化しない電圧分布が生じる。これを定常波と呼ぶ。定常波の極大点を波復、極小点を波節と呼ぶ。波復と波節の比を定在波比と呼ぶ。 入射波と反射波の絶対値の和と差から波復と波節の絶対値が、波復と波節の絶対値の比から定在波比が以下のように導かれる ということになる。 定在波比はよく高周波回路の送信アンテナなどで重要となる。電力送電でも送電線路が商用周波数の波長よりも長くなると、受電端までの距離によっては波節や波復が生じ、意図しない電圧になってしまうことが考えられるため重要である。 実際に定在波を描くとなると、これまた面倒である。ただ計測は反射係数を測定できれば簡単な計算や回路で求まることになる。反射係数は方向性結合器を使うことで測定できる。 位相速度、波長 著者は続いて線路の共振について論じているが、その前に大事な概念を提示するのを怠っている。位相速度と波長の概念をそこでは使っているが、説明がされていない。 他のテキストでは最初に位相定数を導出した時点で登場するのだが、その時点ではまだ使わないので使う時にと思いつつすっかり忘れてしまったのだろう。 先の定在波のところで、波復や波節が定間隔で線路上に現れるというようなことを書いたが、電圧や電流の大きさだけでなく、位相についてもあてはまる。 送電端である交流電圧を加えた場合、受電端に到達するまでの間に、連続的に線路上の位置で大きさと位相を変えながら伝搬していく。それと同時に受電端からは反射波が同様に大きさを位相を連続的に変えながら送電端へ伝搬する。それらが合成されて定在波が現れる。 従って、ある距離間隔で電圧もしくは電流が同一位相になる点が存在し、その距離を波長と定義する。これは一般に言われる波の波長とは同じではない。以下の様に定義される。 まず、与えられた位相定数β(ωの関数)をもつ線路上の(x,t)から(x+δx,t+δt)へ波が移動した際に位相が一定値を保つ条件から位相速度vは ということになる。 またある時刻tにおいて線路上で同一の位相となる最短距離間隔λを波長として定義すると ということになる。 分布定数回路における波長とはあくまで、線路上の位相速度vと周波数の比であり、一般的な波長の定義である真空中の電磁波の進行速度cと周波数の比ではない点に注意。 これに関係する歴史的なエピソードとして長距離電話線路に大きな装荷コイル(Loading coil)を挿入することで減衰定数を低減して通話を可能とした話しがある。これにもHeavisideが深く関わっているが、ここでは触れない。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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