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webadm | 投稿日時: 2013-6-8 20:35 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
続々:無損失線路 次はようやく有限長の線路の問題
受電端を開放にした長さlの無損失線路にt=0で直流電圧Eを加えた。電圧、電流を求めよ。 というもの。 これは理論の時に最初に考えたモデル。 線路は無損失なのだから線路上で電力が消費されることがなく、加えられた信号は受電端の方へ一定の速度で伝わっていく。半無限長線路の場合には永遠に受電端に到達しないので無限の彼方まで信号が伝わっていくだけだった。 今度は有限長で線路の終端が存在し、信号の波はそこから先へは伝わることができず、かつ終端で電力が消費されるわけでもないので、行き場を失った波は反射率1で送電端の方へ逆戻りすると考えられる。それ以降は送電端から供給される進行波と受電端でUターンした反射波が線路上で重なっていき、それが送電端まで到達する。 送電端に到達した反射波は、それより先に伝わることができない。かつ線路は無損失なので、送電端で電力が消費されることもなく、終端条件によって進行波と同じ方向に逆戻りすることになる。 ということで波が送電端から受電端に届く所用時間間隔で線路上に行ったり来たりする反射波と進行波が重なり合う現象が発生することが予想される。 タイミングチャートで描くと ということになる。 進行波は送電端に電圧Eが加えられている限り途切れることはないのと、反射波も進行波が途切れない限り途切れることなく発生する。それがUターン毎に時間遅れで重なり合うことになる。ことは簡単ではない。 さてこれを数式で表すことができるのだろうか? そこがこの問題の中心ということになる。 ストラテジーとしては ・電信方程式の基礎方程式から無損失線路の方程式を導出 ・演算子法でx=0とx=lにおける境界条件を与えて方程式を解く ということになるが、そう簡単にいかない予感がする。 題意では送電端に加えられた電圧と、受電端が開放されているということしか条件が与えられていない。前者は送電端の電圧条件を与え、後者は受電端の電流条件を与えるが、送電端の電流条件と受電端の電圧条件は与えられていない。 とりあえず基礎方程式からベクトルとHeaviside演算子を使った式を導出してみよう 無損失線路なので ということになる。 これの特性方程式から ということになる。 これを例によって距離で二重積分してUについて解くと ということになる。 これをx=0とx=lにおける境界条件を与えると ということになる。 ポテンシャルK0,K1は解けたが、K0の中に未知関数e(l,t),i(0,t)が現れてしまっている。 どうすんだこれ(´Д`;) とりあえずK0,K1を途中解に代入して整理すると ということになる。 この結果から判ることは線路の電圧分布が送信端の源信号Eと受電端の反射信号源e(l,t)のそれぞれの信号端からの距離と時間に依存すること、電流分布は受電端が開放のため常に受電端から反射する電流は0であるため送電端の電流と受電端からの距離と時間のみに依存するということである。 さてこれを実関数に変換するのはテクニックが要る。分子と分母の両方に時間シフト演算子があるからだ。 どうすんだこれ(´Д`;) だんだんとどの本にも書いてない式が現れてくると、孤高の世界に足を踏み入れたことを感じる。後にも先にもここに足を踏みいれたのは自分しかいないのだと思うと心細くなる。Heavisideはこれを20年間耐えたばかりか、その結果を公表したばかりに大変な災難に巻き込まれることになったのだから、それに比べればまだましである。とにかく今は自分を信じるしかない。 上の式を指数関数に展開して整理すると ということになる。 良くみるとHeavisideが導出した電信方程式の一般解に良く似ている。演算子法を使うと終端の2つの信号源から伝搬する信号に関する無限級数で表されることになる。これは著者の解とは大分見かけが違う。 またしてもHeavisideが歩んだ20年の小径を横切った感じがする。19世紀にHeavisideは確かにこの辺を通り過ぎたのだ。 上の解を最初に描いたジグザグ図に当てはめてみると。 ということになる。 これをグラフにプロットするのもやっかいである。 0<x<lとして、線路上の点xにおける電圧をプロットしてみると ということになる。 線路は無損失なので、このパターンが延々に繰り返されることになる。 電流について同様にジグザグ図を描いてみると i(0,0)=E/Z0として電流をプロットしてみると ということになる。 解が再帰的にe(l,t)やi(0,t)を参照しているので時間を遡った境界点の電圧と電流値に依存する。時間と距離だけ与えられてぱっと計算するというわけにはいかず、最低でもt=0から1周期分は計算しておく必要がある。周期関数なので、 ということになる。 再帰的でない定式化は読者の課題としよう( ´∀`) P.S 演算子法で解くと、式の上ではまるで時間軸を逆方向に移動する波があるようにも解釈できる。d'Alembertの解には二組あるというのを前にも書いたが、ひとつは空間上(x軸上)を移動する進行波と反射波、もう一組が時間軸上を移動する進行波と反射波の解である。19世紀には時間軸上を逆戻りする波などナンセンスとされたが、20世紀に入って量子力学によってそれは必須となった。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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