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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2013-7-15 17:17
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3088
続:RC線路
次は有限長RC線路の問題

長さlのRC線路の受電端を開放にして、t=0で直流電圧Eを加えるときの電圧、電流を求めよ。

というもの。

理論のときに学んだ通りに、RC線路は熱方程式で表されるため、固有振動現象は生じない。

なのでRC線路については著者は他の無損失線路や無歪み線路のように一般解を求めよという問いは省略している。

その代わり異なる終端条件についての問題を採用している。

当然ながら反射は分布定数回路一般に伴うものであるから避けて通れない。分布定数回路の過渡現象を学ぶ意義は、ほとんどこの反射と重ね合わせの原理を理解することだと言ってもいいかもしれない。そう考えると電信方程式の解だけ判ってしまえば、以前の問題のように思考実験によっておおよその挙動をつかむことができる。

RC線路の基礎方程式をベクトルとHeaviside演算子を用いて表すと



これの特性方程式は



従って自明でない解は以下の方程式を満たすことになる



ここで例によって両辺を距離で二重積分すると



これをUについて解くと



ということになる。

これに題意の受電端開放の境界条件を適用してK0,K1を解くと



これを元の式に代入すると



白状するとこの段階ですっかり立ち往生してしまっている。というのも受電端の電圧e(l,t)は時間の関数なので、時間に関する微分作用素が働くので電圧の解の第二項がそのままだと展開できない。頼みにしていたYoshida本の最後の章"Heat Equation"にみるからに同じ境界条件の解が示されているのだが、最後にインチキをしていて更に特殊な条件の解になってしまっているのが分かってショック。Yoshida本では熱方程式なので、有限長の棒があって左端と右端以外の面からは熱の出入りがないとしており、これはRC線路と同じである。そして左端と右端の温度はそれぞれv1(t),v2(t)と時間依存関数として与えられているとする境界条件も一緒である。そして解も途中までは上の演算子法で導いた結果と等価であるが、最後に時間の関数に変換する際に両端の温度が時間に依存せずに一定(Heavisideの階段関数)とするというインチキをしていたのだ。おそらく最初の境界条件だと時間の関数になるので、面倒くさくなって時間によらず一定としたのだろう。熱の問題を扱うにはこの境界条件で不自然はないが、最初に書いた境界条件と違うだろうと。

まあ人のせいにするわけではないが、数学者でもそういうインチキはよくある。熱の問題の場合、右端の温度を時間の関数にするには、特殊な熱を反射する反射板を端面に貼付けないといけない。熱を逃がさずに全部反射する材料など現実に存在しないなのでスルーされることになる。一方でRC線路の場合は、受電端を開放すれば電圧が即時に送電端側に反射するのでこれはこれで自然であり無視できないが、問題そのものが古典的すぎるのでスルーされる。

RC線路自身は古い時代のものだが、放物型の熱方程式もしくは拡散方程式と等価で実は双曲型の波動方程式とかよりも奥が深い。未だに熱方程式の解法に関する論文が書かれ続けているのはそのためである。未解決な境界条件の問題が残されているということである。

RC線路で検索しても同じ問題を扱った記事は出てこないので、熱方程式とか拡散方程式で検索するといくつも見つかる。ほとんどは大学の教養課程で扱われる簡単な問題(無限長もしくは半無限長)ですましているが、一部はそれを一歩超えた有限長の問題を暑かっている。いくつもの境界条件の設定が議論されているが、熱の問題にふさわしくない条件はスルーされているのがほとんどである。特に端点の温度が時間の関数になるようなもの。ひとつだけ著者とまったく同じ解を提示しているものも見つかるが、読んでみても導出過程が省略されていてよくわからない。著者の解もどっから見つけてきたのか著者自身が導いたのか謎だが、Laplace変換の公式を使ってさらりと解を示している。多分間違いないのだろうけど、なぞるだけではその確証が得られない点が問題だ。

突破口としては、著者の解を検証してみるということもしないといけないかもしれない。著者が利用したLaplace変換対は検索してもどこにも見つからない。著者は出典も明らかにしていないので、誰がいつ導出したのかも謎だ。まずはそれが正しいかどうか確認してみるのも手かもしれない。

一方で手元にあるMikusinski本のHeat Equationの章をみると、Yoshida本ではインチキでスルーされた境界条件についても詳しく解かれていることが判明。著者の解と良く似た形の解も示されている。Yoshida本では本の最終章であるのと紙面数の都合からやむなく割愛された可能性が高い。最初のほうと最後のほうの内容はMikusinski本のそれと同じで、途中だけが省略されている。微積分の基本定理もしくはStorksの定理ではないが、積分は境界での積分値がわかれば境界で囲まれた範囲を積分したのと同値ということなのかもしれない。

とりあえず手近なMikusinski本を調べてみることにしよう。まずはそれからだ。

Mikusinski本では最初に終端が0固定の境界条件について解いているが、その導出過程は上の開放端RC線路の条件でも参考になる。



結局のところ、Mikusinski本も様々な境界条件を扱っているものの、いずれも片方の境界条件は定数でしかも定常状態と同じ0としている点では他書と同じだった。最初に境界条件は時間の関数としておきながら、例題を解く段階になると突然定数にしてしまうのはYoshida本と同じ。元の前提である時間の関数である一般的な場合についてはまったく触れずに完璧にスルーしている。なので解けるのかどうかも分からない。

Heavisideの演算子法を使って解くと、その解は必ず元信号源と反射信号源を伴った同次作用素方程式になることが明らか。これは理論の時に紹介したHeaviside自身による結論であるのだが、それは正しいのだという気がしてきた。

Laplace変換を使用した場合には、特に詳細な解の導出過程が示されている場合を除いては、途中段階で暗黙の近似処理が行われている可能性が高い。例えば関数の積分や微分をLaplace変換した場合には、必ずt=0での関数や導関数の初期値が現れるのだが、それを残したままにすると後々金魚の糞みたいに長くのこって邪魔になるので、現れた瞬間に暗黙の了解で0と見なして項そのものを消してしまっていることが考えられるからだ。実はそれが意味をもつような条件の場合には、そうして得られた解は誤りということになる(多分にt=0の直後や近傍で近似が成り立たない)。普通はそんなt=0+のところなんて気にしないからいいのかもしれないが、厳密には納得がいかない。

そこで道々考えていたら、以前2端子対回路を学んだ際に使ったあるアイデアが思い浮かんだ。線非対称な二端子対回路の影像インピーダンスを求めたときのことを思い出してほしい。あれは線形代数で言えば固有値問題だが、今回も実は固有値問題なのだ。しかも線路は線非対称(送信端には電源が接続され、受電端は開放か短絡)。有限長なのだから、これを受電端に鏡をおいたような形に対称に同じ線路を接続して、両端に電源がつながったような形の線路を考えればいいわけである。中心線の部分では電流が流れないので開放と同じである。なんだ簡単じゃないか( ´∀`)



左半分の回路と右半分の回路は線対称で、同じ回路。つまりこの図の線路の電圧と電流を求めるのと本問題は同値ということになる。

他に同じ考え方で以下の回路の電圧と電流を解く問題も同値である。



ただし、片側の線路の電圧や電流の変化が反対側の線路に一切影響を与えないという条件付きである。

そもそもRC線路は電流が流れるにもかかわらず磁界は一切発生しないという矛盾を抱えている。また線路の端ともう一方の端は抵抗で連続的に接続されているので、t=0で一端に電圧が加えられると瞬時に抵抗分圧された幾ばくかの電圧が現れる(無限の速度で信号が伝わる)という矛盾も抱えている。

実はこの抵抗という素子が電気の世界ではくせ者であることが次第に判っていくことになる。集中定数回路で考えても抵抗のみから成る回路は電流が流れても磁界は発生しないという約束である。実際の抵抗器はそうではないので現実には存在しない理想的な素子ということになる。実際の素子でも非常にごく短い時間に電圧や電流が変化することが無い限り抵抗器に電流が流れても磁界は(ほとんど)発生しないと理想抵抗器として扱うことができる。厳密には僅かでもインダクタンス成分があれば電圧を印可したt=0+の近傍での挙動の違いとして現れる。

理想抵抗器は電磁気学でも扱い難い。流れ込んだエネルギーの一部は熱となって周囲に放射されると同時に電流として流れ、直列に接続された他の素子に伝わるということになる。つまり抵抗器は電気のエネルギーを熱に変換するエネルギー変換器なのだが、これは電磁気学だけでは説明できないからである。なぜ電流が流れると一部の電気エネルギーが熱エネルギーに変わるのかという疑問に電磁気学は答えてくれないからだ。

熱や粒子の拡散、それにRC線路は共通の熱方程式もしくは拡散方程式で表すことができるが、それはそうした矛盾をも引き受けなければならないことを意味する。電信方程式もインダクタンス成分(L)と漏洩コンダクタンス成分(G)を共に0に近づけることで熱方程式もしくは拡散方程式が現れる。実に悩ましいことである。

さて線対称の回路にしたところで問題は簡単になるのだろうか?

(2013/8/1)

また大分間があいてしまったが、上の疑問に対する答えの確信はあったのだが、計算するのが面倒だった。

基本的なアイデアは重ね合わせ(Superposition)の理である。



受電端を開放にした長さlのまったく同じ2つのRC線路を受電端を線対称に向かい合わせに接続すると鏡の様に対称になる。両端の送電端に同じ階段状の直流電圧を時刻t=0で加えると、中心点では電流が流れずに重ね合わせによって両端から減衰して伝達してきた電圧が合成され2倍になる。電流は流れないので電圧は反射するが、それはちょうど中心点を波が通過するように重なり合うことになる。これは反射したのか鏡の向こうから伝わってきたのかは区別がつかないことになる。

従って長さlの受電端開放のRC線路の送電端に階段状の直流電圧を加えた場合の受電端の電圧は、2倍の長さの受電端を短絡したRC線路の送電端に同じ階段状の直流電圧を加えた場合の中点での電圧の2倍になることが予想される。受電端を短絡した場合には、受電端の電圧は常に0なので、これは熱方程式を扱っている教科書ならほとんど全て扱っている簡単な例題である。

同じ考え方で、これ以前の問題で受電端の電圧や電流が時間の関数として解の中に現れるものがあったが、それも重ね合わせで解けるかもしれない。もちろんそれ以外の解法もあるはず。

(2013/8/19)

だいぶ間が開いてしまったが、紙の上で上で試算してみたところ、どうやら電圧分布に関しては予想通り解けることがわかった。電流は向き付けのことを忘れていたが、進行方向と反射方向とで電流が互いに打ち消す向きに流れるので、中央では電流が0になってこれも予想通り。線対称回路なので、電流分布も電圧分布も線対称となることは明らか。

後日詳しい導出過程を書くことに。

次いでに色々思考したら、線路を円環状につなげることができることも発見。線路が2本の平行線で構成すると、ぐるっと円環状にすると2本の輪が並列に並んだかたちになる。その一点に電源が接続されることになる。

同様に受電端が短絡した線路の場合は、片方の線路が180度回転して捻って接続したのと等価であることに気づいた。電圧分布は互いに逆極性となるため、打ち消し合う方向に重なる。逆に電流は同じ方向に流れるので互いに強め合う。中央では電圧分布は0になることも確認できる。これはちょうとMebiusの輪の一点に電源を接続したような形になる。

(2013/8/26)

少し涼しくなってきたので再開。

まずは片方の2倍長線路(受電端短絡)の解を求めてみよう。

方程式は同じで、違いは受電端の境界条件がx=2lと二倍に伸びるのと、電圧が0で電流が未知の関数i(2l,t)となる点だ。



これを元の解に代入すると



ということになる。

もう片方の回路は、空間方向が正反対にして空間座標をx'に書き換えればよい。更にx'=2l-xという関係が成り立つので、最初の回路と同じ空間座標xを用いた式に変換することができる。つまり上の結果のxを2l-xで置き換えればいいわけである。i1も未知関数-i2に書き直す。2つの回路で電流の向きが逆なので符号が反転する。



従って重ね合わせによって、



また回路の対称性により、以下が成り立つ



加えて重ね合わせた回路の半分が問題の回路と等価であることから、以下が成り立つ



これらを適用すると



ということになる。

依然としてi(0,t)が未知関数として残るが、電圧分布は解けたも同然。

あとは時間に関して変換すればいいことになる。

上の式は以下の様に双曲線関数で表すことができる



上の式は与えられたx=0とx=lでの境界条件を満たしていることを簡単な計算で確かめることができる。

(2013/8/30)
文脈と関係ないが、著者の電流の解に間違いがあるのを発見した。
著者はlaplace変換公式を用いて電流の解を導いたはずだが、何故か変換公式とは違って指数関数の指数にt^2が含まれている。これは本来は公式と同じようにtでなければならない。

さてここからが演算子法の腕の見せ所

ここまで金魚の糞みたいに右辺の後ろに付いてきた級数は以下のように書き直すことができる



これを代入すると



ということになる。確信していた通り問題は少し易しくなった。

電流分布の式は最初に実直に求めた結果と同値であることが確かめられた。電圧分布は反射信号源e(l,t)項が消失し、代わりに交代べき級数が現れている。

次に目の上のたんこぶなのが送電端の電流i(0,t)である。x=0とx=lを除いた線路上では進行波と反射波の電圧分布と電流分布が特性インピーダンスによって



という関係が成り立つ。

ところが単純に長さlの受電端開放の線路を考えた場合、電圧が常に一定に保たれている送電端(x=0)と電流が常に0となる受電端(x=l)ではこの関係が成り立たないことは明らかである。

線対称な長さ4lの等価回路で考えた場合に中点の受電端に相当する部分には線路の不連続性がないため進行波と反射波に関して上記の関係が保たれることがわかるが、受電端の電流は0と自明なのでこのことはどうでも良い。

問題は定電圧源で終端された送電端の電流i(0,t)である。

どうすんだこっから(´Д`;)

ここで数学の解析で言うところの極限を初めて考える必要がある。

xを限りなく0に近づけていった場合、線路は均一かつ連続なので電流に不連続点は現れないはずである。すると連続のままでx=0に限りなく近い点に収積点が存在することが予想できる。

この予想を数学的に証明しようとすると演算子法による関数空間の写像が絡んでくるので位相空間を持ち込む必要があり面倒極まりない。

なのでここで厳密性には目をつぶってx=0で極限が存在する(収積点が存在する)と見なすことにする。もし間違っていてもx=0の点だけ不連続な電流が流れるということで目をつぶってもらうことにする。

x=0に関して収積点が存在すると仮定すれば、



ということになる。

これを適用すると



と解けたも同然になった。

こっからどうすんだ(´Д`;)

前紹介したCourant & Hilbert本のp527 "Appendix 2 to Chapter V Transient Problems and Heaviside Operational Calculus"の"4. Wave Equation"に似たような少し簡単な例があった。

演算子関数T(x)が



の場合、解が



となるというもの。

同様に



解は



本問題の場合には、波動方程式ではなく熱方程式である点が違うが、基本的なやり方は間違ってなさそうである。

Courant & Hilbert本のやり方をまねてやってみると



ということになる。

全然著者の解とは似ても似つかないからといってなにも恐怖に戦くことはない。簡単な計算でx=0とx=lでの境界条件を満たすことを確かめることが出来る。またlを無限大に移行することによって無限級数項が消滅し以前の問題で導いた無限長RC線路の解が得られることもわかる。

x=0に集積点は存在するがt=0では電流分布が不定となることが見てとれる。

さてこの解をグラフにプロットしたいところだが無限級数と誤差関数の積分がまたしても悩みの種。

解のプロットは読者の課題としよう( ´∀`)

やっと終わったよママン(ノД`)

いやまだ残りの問題がある。

次へ進もう。

P.S

といってもなんなので参考までに級数を100項で打ち切ってE=C=R=l=1として電流の解をプロットしたものを下に示す。



大きなCとRにも関わらず、僅か数秒でほぼ定常状態(電流が0)に落ち着いてしまうことが見てとれる。熱伝導に例えれば熱の移動が定常状態に近づくにつれほとんど無くなるということに相当する。

ちなみに著者の解をプロットしようと試みたのだが、とても正解だとは思えない結果が現れて動揺してしまった。あのlaplace変換の公式はどっからもってきたものなのだろうか?どうもそれが怪しい。
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題名 投稿者 日時
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