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webadm | 投稿日時: 2013-11-9 23:54 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
まだまだ:無損失線路 次も前問とよく似た有限長無損失線路の問題。
長さlの無損失線路の受電端を開放して、送電端に抵抗Rを通じてt=0で直流電圧Eを加えるとき、送電端の電流はどうなるか。 というもの。 これ以降も趣向の違う無損失線路問題が続いているが、ここで著者が暗黙のうちにもうひとつの問題を読者が思い浮かべることを期待しているように思える。 それは前問とこの問題を組み合わせた送電端と受電端の両方がそれぞれ抵抗で終端されている、より一般化した問題である。それを解けば、前問とこの問題はその特殊な例ということになる。特殊から一般へと向かう、まさに帰納法で考えることがより自然に思いつくことになる。 著者の解は前問と同様に問題の特殊な事情に基づいた立式と解の導出を行っているにすぎないが、おそらく著者はもっと一般化した解の導出を読者が思いつくことを暗に期待していて、遠慮しているのかもしれない。 ここでは著者の暗黙の期待に応える形で、より一般化した両終端の線路を考えてみよう。 上は前問と今度の問題を包含する形に一般化した回路である。 Rs=0と置くと前問の回路と等価になる。またRs≠0としてRt=∞としたのが今回の問題の回路である。 その他RsとRtの値の無限の組み合わせがあるが、それに関する一般解を導出できれば、それぞれの特殊ケース毎に解く必要はなく、一般解にRs,Rtの値を代入すれば良いことになる。 受電端がRtで終端されている点に関しては前問で既に考察済みなだが、送電端がRsで直列終端されていることをどう解釈すればよいだろうか。またそこに流れる電流はどうなるのか、といった疑問が湧いてくる。 これらも前問でやったように反射係数を割り出すことができれば出来たも同然な予感がする。果たしてそうだろうか、やってみるしかあるまい。 無損失線路なので予め以下の定義をしておく 無損失線路なので線路上で信号が減衰することはなく、常に線路上の電圧および電流ポテンシャルは進行波(送電端から受電端方向へ時間と共に進む波)と反射波(受電端から送電端方向へ時間と共に進む波)の合成で表される。 αtは前問で登場した受電端の電圧反射係数である。同様に送電端に関しても電圧反射係数αsが定義できるはずである。 問題は前問の場合、送電端には集中定数回路は存在せず受電端側にのみ存在したので、線路を進行波が受電端方向に進み、受電端の集中定数回路に達すると、反射係数によって反射波が線路とぴったり重なりあう別の一次元空間を伝わっていき、実際の線路上のポテンシャルは進行波とその反射波の重ね合わせで表すことができるというのが、偏微分方程式を解くことなく解を得るアイデアだった。これがこの一般化した回路についてもはたして通用するだろうか。やってみるしかあるまい。 例によって折りたたまれた時空間を送信端に加えられたステップ電圧の波が進むモデルを考える。受電端に最初の波が到達すると受電端の反射係数に応じた反射波が物理的には同じ線路を逆戻りしていくが、便宜上線路とぴったり密接した平行に走る別の一次元空間上の線路を進むと考える。 これは空間を重ね合わせれば同じ線路を遡るのと等価であることは明らか。上の図では線路の両端にそれぞれ反射係数αs、αtと同じ透過率をもつ集中定数回路があって、反射波は透過波として別の空間を突き進んでいくということにする。 前問では折りたたんだ平面上に一直線に進む波として描いたが、空間は一次元なので折れ線で描いても意味は同じ。便宜上時間とともに新しい重ね合った空間を進んでいくので縦軸に時間軸とした平面ではない時空間である。 t=0での送信端では最初の波がシリーズ抵抗Rsを通して線路に加えられ線路上を時間と共に形を変えずに進んでいく(無損失線路)。その波が右端に到達すると、今度は透過率αtを持つ集中定数回路を通った透過波がそれまで来た空間とぴったり重なった別の一次元空間を進んでいく。それが左端に到達すると、透過率αsの集中定数回路を透過した波がまた平行した別の空間を進んでいく。実際の線路の電圧と電流分布はこの折れ曲がって重なり合った時空間上のポテンシャルを重ね合わせたものと等しくなる。 前問でやったのと同じ要領で、偏微分方程式を解くこと無しに電圧と電流分布の解を導出してみよう。 ここで であるので、これを代入して整理すると ということになる。 電流の場合も同様にして 従って電流分布の解は ということになる。 これをベクトル表記にすると ということになる。 これでやっと題意の送電端の電流の時間領域関数を導くことができる。 送電端の位置x=0を上の電流の解に代入すると ということになる。これは送電端を流れる電流の一般解である。 ここで更に題意の回路の受電端開放の電圧反射係数αt=1を代入すると ということになる。 著者の解とは電圧反射係数のべき乗が残るか電流反射係数のべき乗が残るかの根本的な違いがある。どちらが正しいか審判するのは読者の課題としよう( ´∀`) 著者はまた電流反射係数α<1であるから、と書いているが、これはおそらく|α|<1の意味であると思われる。二項展開が成り立つようにするためのこじつけである。しかし著者は肝心の二項展開を間違ってしまっている。これは私からのヒントである。 また題意では問われていないが、著者はR=Z0としたインピーダンス整合時の解も導出している。送電端がインピーダンス整合するとその電圧および電流反射係数は0となるので、0の0乗が係数として現れてきてしまう。そこで0の0乗は1であると暗黙に定義する必要があるはずだが、その点について著者は何も触れていない。 同様に送電端や受電端がインピーダンス整合された場合にも同じ0の0乗が現れて、もしそれを0と定義してしまうと電流と電圧は0になってしまう。したがって0の0乗は1と定義すると都合が良い。 Wikipediaにも書かれているが、整数nのべき乗n^kは、集合論で例えればk個の要素を持つ集合からn個の要素をもつ集合への写像の数と解釈すれば、n=0,k=0の場合、空集合から空集合への写像は唯一しかないので1で良いことになる。 さて演算子法で同じ結果をどうやって導きだそうか別途思案しながら、後続する無損失線路の問題に臨むことにしよう。 とりあえずここで導出した一般解を用いれば、ここまで登場した有限長の無損失線路の問題は達所に解が得られことはすぐ確かめることができる。 読者は更にこの回路を一般化して、抵抗以外の一般の複素インピーダンスを持つ集中定数回路素子で終端する問題を考察しても良いかもしれない。ここで用いた折れ曲がってぴったり重なる時空間モデルを用いれば容易いと思われる。それは読者の課題としよう( ´∀`) P.S ちょっと考えてみると実数の抵抗Rs,Rtをより一般の複素インピーダンスZs,Ztに拡大すると、電圧反射係数も複素数になるので、電圧と電流の関数が複素関数になってしまうという困難にぶつかることがすぐにわかる。そこから先は読者の課題としよう( ´∀`) |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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分布定数回路の過渡現象演習問題 | webadm | 2013-5-11 21:03 |
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