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webadm | 投稿日時: 2016-4-6 12:47 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3087 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め 前の記事の、一般の斜交座標系でのベクトル三重積がどうなるかについての議論の続き。
一般の斜交座標系での3つのベクトルu,v,wのベクトル三重積を計算してみよう。 くれぐれも特種な(皮肉なことに世の中で最も多用されている)正規直交座標系の話ではないことに注意! 既に前の記事で計算した2つのベクトルのベクトル積の結果を利用することにしよう。 最初に一般の斜交座標系でのベクトル積の結果(双対ベクトル同士のベクトル積には1/Dが係数として現れる)によりDが打ち消される。その後は正規直交座標系でのベクトル三重積の計算と同様に意図的に0を加えるテクニックを使った。 なんとベクトル三重積の公式は一般の斜交座標系でもそのまま成立することが確かめられてしまった。 こういうことだから、ベクトル積に関しては一般の斜交座標系での議論が不要なのね( ´∀`) 今ようやく理由が分かりましたよ>岩堀長慶先生 結果が予想できるだけに、演習問題や宿題にもならないよね。 こんな計算やっているのはここだけだから。 さて、ここで新たな発見がある。 通常ベクトル同士のベクトル積は天邪鬼ベクトルを生成するが、その天邪鬼ベクトルと通常ベクトルのベクトル積は果たして天邪鬼になるのか通常のベクトルになるのかという疑問。 これは上の結果を見れば明らかの通り、座標軸の反転に対して、通常のベクトルと同様にベクトル三重積は成分の符号が判定するので通常ベクトルと同じように振る舞うことがわかる。 つまり、こういう予想が成り立つ。 (1) 通常ベクトルの奇数回のベクトル積は天邪鬼ベクトル (2) 通常ベクトルの偶数回のベクトル積は通常ベクトル もしくは (1) 偶数個の通常ベクトルのベクトル積は天邪鬼ベクトル (2) 奇数個の通常ベクトルのベクトル積は通常ベクトル なので天邪鬼ベクトルと天邪鬼ベクトルのベクトル積は天邪鬼ベクトルになる。一方で天邪鬼ベクトルと通常ベクトルのベクトル積は通常ベクトルということになる。ややこしい。 天邪鬼かそうでないかの違いはベクトルの大きさが面積とか体積のような積分量の次元をとるかそうでないかに関係しているように見える。 面積は果たして座標系に依らない不変な量と言えるのだろうかという疑問が出てくる。面積が座標の積分と考えると、それは座標系によって大きくもなり小さくもなる。例えば、敷地の面積は実際に測量したものと、敷地を一定の縮尺で描いた図面の上とでは違ってくる。そこには縮尺という別の係数を乗じることによって初めて双方は同値となる。これに関する議論は別の機会にしよう。 このあたりがもはや狭義のテンソルでは扱いきれなくなっている苦しい状況が察しられる。 これを証明するのはさしあたり読者の課題としよう( ´∀`) さて、ベクトル代数でもうひとつ忘れてはいけないものがある。 それはスカラー三重積というもの。 ベクトル積と通常ベクトルの内積をとったもの。 というと簡単そうだけど、これも天邪鬼スカラーを産み出すやっかいものである。 スカラー三重積は、大きさが面積の次元を持つベクトル積と長さを次元にもつ通常ベクトルの内積であるから、体積の次元を持つスカラー量となる。ここでも体積は座標系に依らず不変な量だったろうかという疑問が沸く。 例えば質量はNewton力学では不変な物理量であるが、それは体積と密度の積と等価であると考えると、体積そのものは座標系によって変わるものであると考えられる。 そうすると質量が座標系によらず不変であるためには、密度も座標系に依って変わる必要がある。体積と密度とは座標系によって互いに逆の変換を受け互いの変化を相殺する関係にないといけないことになる。 先のベクトル積でも同じことが言える。 この議論については狭義のテンソル代数では扱えないので後回しにしよう。 先にスカラー三重積の基本からおさらいすることにしよう。 特種な正規直交座標系でのスカラー三重積を考えることにしよう。特種から一般へという筋道である。 ベクトル積が含まれるので、当然その黒幕である Edington のεもしくは、Levi-Civita 記号が含まれる。なので天邪鬼の遺伝子を持っている。座標軸の反転に対して、スカラー量なのに符号が反転するとはこれいかに。天邪鬼スカラーの正体がバレバレ。偽りのスカラーということで擬スカラー(pesudo scaler)と呼ばれる所以である。先のベクトル積も同様に擬ベクトル(pesudo vector)と呼ばれ天邪鬼遺伝子を持った兄弟姉妹である。擬とか付くとまがい物と思われるがちゃんと役に立つので、その点を評価して軸性スカラー(axial scaler)とか軸性ベクトル(axial vector)と擁護する人も居る。どちらにしてもしっかり区別して差別していることには変わらないのだけれどもね。 実は以前 Levi-Civita 記号を Levi-Civita テンソルとか呼んだことがあるけど、三階のテンソルのように扱えるけど、実は天邪鬼テンソルで、狭義のテンソル代数では扱えない代物である。擬テンソル(pesudo tensor)とは Levi-Civita 記号のためにあるようなものである。これに関する議論は後回しにしよう。 一般の斜交座標系ではスカラー三重積どう表されるのだろうか? これまでの結果を利用して計算してみると おや、一般の斜交座標系ではちょっと修正が必要なようだ。 Dというのは基底変換行列の行列式(右手系もしくは左手系内での変換に限定すれば計量テンソルの成分を正方行列で表した場合の行列式の平方根と同値)である。それがどうしても係数とで出てくるのは、一般の斜交座標系でのベクトル積でDが係数として出てくるためである。一般の斜交座標系での内積では自然ベクトルと双対ベクトルの内積を取る分には余計な係数は出てこない。なので、ベクトル積で伴う係数Dがそのまま残ることになる。詳しくは以前の一般の斜交座標系でのベクトル積の議論を参照願いたい。 この事実はLevi-Civita記号が狭義のテンソルとは決定的に性質が異なることを意味する。 さて困ったことに、今までテンソルとはなんぞやという議論をしてこなかった。実を言うと、テンソルに関する数学書でもテンソルの一意的な定義は回避されている。その代わりテンソルが満たすべき条件だけが明らかにされている。その中の中心的なものが、テンソルの成分の座標変換に関する性質である。 ここで普通のテンソルと、天邪鬼なテンソルの違いを明らかにするために、いよいよテンソルの本質に迫る必要がある。 (2016/5/1) 物理学や工学で遭遇するテンソルの種類はそんなに多くは無い。 なのでむしろそれを一つ一つ取り上げて議論する流儀もなくはない。 ただそれをやってしまうと、テンソルに関する視野が狭められてしまって、新たなテンソルを自分で再発見するという機会を失ってしまうことになる。 奇妙なことに物理学や工学で登場するテンソル的なもので真性のテンソルは少数派であり、残りは擬テンソルと呼ばれる天邪鬼派が大半を占める。 そこで真性テンソルの代表格である計量テンソル(基本テンソル)に関して、古典的な座標変換による成分の変化を議論してみることにする。 一般の斜交座標系での計量テンソルの成分は以下の様に定義されることを思い出そう。 また計量テンソルは以下の様にベクトルの成分の添え字の上げ下げ(自然ベクトルと双対ベクトルの間の成分の変換)を行う機能を持っていることも思い出そう。 逆も真なりで 上記の関係が基底変換によってどう変化するか調べてみよう。 基底変換に関して以下の関係を思い出す必要がある 自然基底が線形変換行列Sで変換を受ける場合、その双対基底はその逆行列Rの変換を受ける。 同様にベクトルの成分は、反変ベクトルであれば基底変換と逆の変化を受け、共変ベクトルであれば基底変換と同じ変換を受けることを思い出す必要がある。 さてこっからどうすんだ(´Д`;) まだテンソルの言葉(添え字記法)に慣れていない場合には、線形代数に立ち戻って行列計算するのがよい。 先の計量テンソルの関係式のベクトル成分を上の変換後のベクトル成分の式に置き換えると (2016/5/24)訂正 これが古典的なテンソルの定義である。 gをTとかに置き換えて一般のテンソルとしても成り立つ。 この座標変換は面倒なので、大抵の参考書には綺麗な結果しか示されていない。 Einsteinの総和記法を使用するために座標変換行列の成分の添え字を意図的に変えてみたが、最初からそうしている本もあるし、総和記号を残してそのままという流儀もある。 座標変換行列は上の定義からするとテンソルではない。これを確認するのは読者の課題としよう( ´∀`) テンソルの言葉である添え字記法は、上の方法よりももっとストレートで簡単な秘法があるのだが、大抵はテキストでは種明かしされていない。 自分でやって再発見せよということらしいけど、もう一般相対性理論から100年以上経過しているのだし、勘弁してあげてもいいのではないかという気もする。 上の行列の積はそれぞれ線形変換されたテンソルとベクトルの縮合なので結果もテンソルになる(テンソルの商法則)ので、これを利用すれば以下の様に簡単に同じ結果を導くことができる。 これを覚えてしまうともういちいち展開してにらめっこする必要はなくなる。 暗記すればいいということではない。 なんだ簡単じゃないか( ´∀`) 計算式を展開すると紙面上に入らなくなるんだよね。 手元の参考書でも、驚いたことに式が入りきらなくて、通常の植字範囲外にはみ出した形で数式をなんとか流し込んでいる本もあった。 近年は電子写植なのでそういう例外もできないことはないけど、昔の活版印刷とかなら絶対無理だし、詳しい式の展開は割愛せざるを得なかったのはわかる。 最近の丁寧な参考書では、上の意味を線形空間の間での線形写像の連鎖という形で図解説明しているものがある。 それを再発見するのは読者の課題としよう( ´∀`) ここでようやく古典的なテンソル定義に目を向けざるを得なかったのは、上の古典的なテンソル定義に反する擬テンソル(pseudo tensor)について決着を付ける必要が出てきたためであることを思い出そう。 さていよいよEdingtonのε、またの名をLevi-Civita記号の再登場ということに。 注意しないといけないのは、正規直交座標系で議論を開始しようとしてはいけない点である。 正規直交座標系は一般の座標系と違って、自然空間と双対空間がぴったり同一の空間になるので、そこでのベクトル積の結果は一般お座標系とは異なる結果となり、本質を見失うことになる。 正規直交座標系の特種性を顕在化させるためには、より一般的な座標系(例えば斜交座標系)で議論する必要がある。 自然空間上のベクトル積は双対空間上のベクトルを生成する。正規直交座標系では自然空間と双対空間は同一のものとして扱う特種性からこの事実が見失われる。 上記の事実を悪用すれば、正規直交座標系もしくは局所的に正規直交座標系が適用できる直交曲線座標系だけに話を限定すれば、面倒な議論を省いて正規直交系と同じ結果が使えることになる。 そういう流儀は講義時間を短縮し、必要な結果だけを説明することができるので優れてはいるが、それ以上の発展性は無いし、一般相対性理論とのシームレスなリンクを完全に切断するという代償を負うことになる。 教える側としては痛し痒しなのだが、講義時間が限定されている以上、その中に収まる範囲で結論をまとめないといけないという講師側や学校側の事情もわかる。 しかしそうした教育をやってきた責任は誰が取るのかと問いただしたい。 それは年月が経てば経つほど、事の重大さは大きくなるのである。 なんの話だったっけ? ああLevi-Civita記号成分の座標変換だった。 実のところこの議論に関して手元の参考書でそれぞれどこで触れているか調べるのに結構時間を要した。 物理や工学向けに書かれた本だと、極力この議論に触れなくて済む部分では一切触れず、どうしても触れないといけない部分で突然湧いて出てくる感じである。 数学書では厳密には狭義のテンソル代数の範疇ではないものの、物理学(特に電磁気学や一般相対性理論)で需要があるので仕方なく最後に触れるといった感じ。 それぞれの参考書で口火の切り方は著者によりまちまちだし、用語についてもその定義が著者によって異なるとあらかじめ注意してある本もある。 それらをなぞるのは疲れるので最初に要点だけまとめると (1) 面積要素(およびその一般化された体積要素)がどのように座標変換を受けるか (2) Revi-Civita記号は計量テンソルによる添え字の上げ下げを受けない(テンソルではない) という話に尽きる。 Cartanの微分形式だと上記の結果はすっきりとした形で表されるが、テンソル代数とのギャップが大きいので混乱を招くことになる。Cartanの微分形式でどのように議論されているか確かめるのは読者の課題としよう( ´∀`) (1)に関しては面積とか体積がベクトルの大きさになるような場合に関係してくる。 もちろん正規直交座標系では気にする必要はない。正規直交座標系の間の座標変換では面積要素や体積要素は不変であるから。 一般の座標系では変換後の座標での面積要素や体積要素はその座標変換による空間の歪み具合によって量が変わってくる。 一般の斜交座標系で例を挙げれば、正規直交座標系では面積要素は正方形、体積要素は立方体で変わらないが、一般の斜交座標系では、正規直交座標系での正方形が歪んで平行四辺形になる。体積要素も同様で正規直交座標系では立方体だったものが平行六面体となる。 一般の斜交座標系では基底ベクトルの大きさも正規直交系と違って正規化されているとは限らないので大きさは1とは限らない。したがって例え正方形が平べったい平行四辺形になったとしても、面積要素の量が小さくなるとは限らない。基底ベクトルの大きさが1より小さい場合には正規直交系の時よりも大きくなる。 こうした前置きをすると、なにやら関係が見えてくる。 (2016/5/8) 少し見えてきた感じがするが、連休中に手元の参考書でこれに関する議論や定式化がどのように行われているか調べてみたのだが、どれも著者によりまちまちで決まった形は無いようだった。 更に事態を悪化させる要因としては、正規直交基底を一般の斜交基底に変換した場合、2つの基底ベクトルが張る平行四辺形の面積の大きさは、選択した基底ベクトルのペアによって異なるということである。 正規直交座標系の場合には異なる基底ベクトルのどのペアを選んでもそれらが張る正方形の面積の大きさは1で変わらない。 そこで一般の斜交座標系での基底ベクトルを正規化して正規直交基底の場合と比較して考える必要がある。 なんだか話がややこしくなってきた。 (2016/5/24) 通勤途中でここまでの議論を何度も再考する中で、先の通常のテンソルの成分の座標変換則の導出に誤りがあったのに気付いたので訂正しておいた。 ちなみにこの議論は数学的にはテンソル密度とか、相対テンソルの議論となる。通常のテンソルを含めて、天邪鬼なテンソルも含めたより一般的なテンソルの概念の中で、それらが特種なテンソルの一種であるように見なすのであるが、これが難解でややこしい。 目下、平易な線形代数の計算でそれを確かめる方法を考え中。 (2016/5/28) いろいろと、これまで購入した手元の参考書を改めて詳しく読んでみて判明したことは ・テンソル密度に関しては皆詳しく立ち入るのを回避している ということである。 これまでも自分数学の立場から、基底変換行列の行列式は一貫してDとして記載し、巷のテキストにあるように安易に√gとかを用いなかったのは厳密に考えれば正しい選択だったというのが解った。 基底変換行列には座標軸の反転もあり得るので、その場合、変換行列の行列式は負の値となるからである。 座標軸の反転を扱う議論は限定されるが物理学でも無いわけではなく、その場合にはDを√gで代用することはできないという問題が発生する。 話を元にもどそう。 まともなテンソルと天邪鬼なテンソルを同じテンソルの仲間になるように古典的な狭義のテンソルの定義を拡張しなければならない。 テンソル密度とか相対テンソルとかいうのはそのために生まれた概念だというのが薄々解ってきた。 自分数学で再発見しておきながらどうやらこれまでも天邪鬼テンソルが登場する度に常々登場してきた基底変換行列の行列式Dが実はテンソル密度を理解する重要な鍵だったのに今ようやく気付いた。 灯台もと暗しとはこのことだった(;´Д`) 有向面積や有向体積、そしてそれらを任意次元に一般化した体積要素というのが一般の基底変換で不変な量とするために、テンソル密度を含めた形に古典的なテンソルの定義を書き直すことによってテンソルの概念に天邪鬼テンソルも仲間に入れるというアイデアだったわけである。 先に計算したまともなテンソルの代表格である計量テンソルの行列式を計算してみると 拡張されたテンソルの定義でば、計量テンソルの行列式は重み2のスカラー密度ということになる。 正規直交座標系では、D=1なので特に上の結果は知らなくても良いことになるので、面白い結果ではないがこれが重要である。 Dの冪数(重み)が偶数か奇数のいずれかであることが天邪鬼とそうでないテンソルを区別する鍵となる。 テキストによっては、従来のまともなテンソルを偶(even)テンソル、天邪鬼なテンソルを奇(odd)テンソルと称しているものがあるが、一般に認知された呼び方ではなく、その人なりの自分数学の知見からのものと思われるが、天邪鬼が奇というのは言い得て妙で笑える( ´∀`) さて、先の余談で出てきた√gというのはどうだろう? 上の結果の平方根だから ということになる。 つまり巷のテキストで登場する√gというのは実はDと同じものというのは間違いで、重み1のスカラー密度(つまりは擬スカラー)そのものだったということになる。 このことは座標変換が回転系(右手系内もしくは左手系内の変換)である限りではDの符号は変わらないが、そうでない場合(座標軸の反転を伴う場合)にはDの符号が変わることを意味する。 このDが以前にも余談で出てきた様に、ヤコブ行列式(Jacobian)Jと同値なものであるというのは巷のテキストでも触れられているものがあるが、その議論は後にテンソル解析へのシームレスな移行を考える時の楽しみとしてとっておくことにしよう。 なんとなく解ったようだけど、肝心のベクトル積で出てくる擬ベクトルはどんなんだという突っ込み。 引き続き擬ベクトルもしくは軸性ベクトル、その一般化である擬テンソルやテンソル密度について計算で明らかにすることにしよう。 (2016/6/7) その後上のDとヤコビ行列式の関係を手元の複数の参考書でどのように議論されているか詳しく調べていたら、驚愕の事実が判明。 なんと参考書では上の結果の分母と分子が逆になった形で関係式が与えられているのである。急遽その理由を明らかにする必要があった。 あべこべになってしまった理由はやがて明らかになった。 ・手元の参考書の座標変換行列の定義が違う 一部の参考書では正規直交基底での議論と、一般の曲線座標系での議論とで座標変換行列の定義を二種類使い分けしていることが判明。 また他の参考書では一貫して、基底変換行列の逆行列を座標変換行列として新たに定義して用いている。 どの参考書も共通するのは、一般の曲線座標系での座標変換行列は以下の様に定義することから出発しているという点である。 数学書の判りずらい点は何かと言えば、同じシンボル(例えば上の座標変換行列のA)が登場した場合、それまでに最も最後に現れた定義が適用されるという点である。つまり同じシンボルAが場所によって異なる定義で使用されるという点である。 このため必ずあるシンボルが式に含まれる場合には、ページをさかのぼって最初に現れるそのシンボルの定義を確認する必要がある。 言語にすれば、会話の中に出てくる用語が、その時々によって定義が変わるようなもので、大変煩わしい。 しかしながら使用できるシンボルの数が限られているので、使い回すためには、その都度定義しなおす必要があるのは確かである。 あと数学書で不便なのが、本のボリュームを最小限にするために、一度導出した式を後で使う際には、再度その式を示すのではなく、参照番号で示すというやり方。これもページをさかのぼって、その式がどこにあるか確認する必要がある。 現代のようにコンピュータでPDFやWord文書を閲覧する場合には、ハイパーリンクでシンボルの定義がかかれた節や参照する式の場所をリンクすることができ、ワンクリックでそのページに飛ぶことができるが、紙の時代にはそれは望めない話だった。 話を元に戻すと、基底変換を議論する時と、座標変換を議論する時とで、変換行列の定義を何故変更する必要があるかというと、それはヤコビ行列との同一視化を意図してのものだということが自ずと明らかになる。 参考書の著者はそうした意図は一切触れていないが、そうした意図があってのことであることは明らかである。 自然基底の変換行列に基づいてベクトルやテンソルの成分の座標変換の議論を行うと、成分は受動的な変換を受けるので基底変換行列の逆行列が座標変換行列となってしまう。 それはそれでいいのだが、その逆行列がヤコビ行列と同一視できることを示すのには都合が悪い。 なので基底変換行列の話は忘れて、成分の変換行列からスタートするのが都合が良いわけである。 幸いにしてここまでの議論ではヤコビ行列式との関係を式で示すことはしていなかったので、誤った式を書いてしまわずに済んだ。 基底変換行列の行列式がDと定義すると、それは成分の変換行列の逆行列の行列式になり、ヤコビ行列式の逆数になってしまう。 後に一般の曲線座標形へのシームレスな移行を議論するときに改めてこのことを思い出す必要がある。それまでは楽しみとしてとっておこう。 さて話を元にもどそう。 (2016/7/2) もう一ヶ月近く経とうとしている。 ベクトル積が天邪鬼ベクトルであることを計算で示す時がきた。 最初に特殊だが正規直交系でおさらいしてみる。正規直交系だけで事足りることがほとんどであるが、そんな特殊中の特殊な座標系だけしか知らないと、もっと広い世界を知らずに終わってしまうのが問題だ。 通常のベクトルは正規直交基底(互いに直交し合う単位ベクトル)の線形結合で表すことができる。そこで2つのベクトルu,vのベクトル積は以下の様に表すことができる。 ということになる。 ベクトル積の成分はなれると暗記できるが、それまではベクトル積のe1の係数は123から1を抜いて元のベクトルの成分を偶順序と奇順序に並べ替えて総和をとると覚えておけば困らない。 ここまでは序の口で、ここから更に基底の条件を緩めて、直交条件と単位ベクトルである必要はなく、単に線形独立なベクトルにしたものが、同じ直線座標系である一般斜交座標系である。 直線座標系は均質な空間であるともいえる。ひとつ基底を選べば空間内のあらゆるベクトルがその基底の線形結合で表すことができる。つまり空間のどの点でも同じ基底が使えるということ。 ただし直交でもなく単位ベクトルでもなくなったことで、正規直交座標系のように単純ではなくなり、正規直交座標系では隠れて見えなかった性質が露わになる。 先ほどと同様に、今度は任意の斜交基底、f1,f2,f3を選んで、その線形結合で表される2つのベクトルu,vのベクトル積を計算してみよう。 ということになる。 これは以前導出したものの蒸し返しになるが、Dが斜交基底のスカラー三重積で、3つの斜交基底ベクトルで構成される並行6面体の有向体積を表す擬スカラーである。従って通常のベクトル同士のベクトル積は擬ベクトルということになる。 一般の斜交座標系では、正規直交系と違って自然基底と双対基底は大きさも向きも一般に一致しない。 スカラー三重積は座標軸の反転に対して符号が変化するので擬スカラー(天邪鬼スカラー)で、逆に座標軸反転に対して通常ベクトルは向きが変わるのに対して、擬ベクトルは向きが変わらないという天邪鬼な性質を持つ。 以前、ベクトル積にはEdingtonのεという3階の反対称テンソルが黒幕として潜んでいることを明らかにしたが、果たしてEdingtonのε(もしくはLevi-Civita記号)はテンソルと呼べるのだろうか? という疑問が残っている。 その答えを見いだすにはやはりテンソルの言葉(添え字記法)を使う必要がある。 テンソルの言葉で上と同じことを表してみると ずいぶんとすっきりする。 これであとは基底変換した場合にLevi-Civita記号がどのように受動変換を受けるか調べるという古典的な方法でそれが真性テンソルなのか擬テンソルなのかを判別すればいい。 (2016/7/8) 手元の参考書やネット検索で Levi-Civita記号に関する議論を調べてみても、真性テンソルではないことを証明するのに直接的な方法を使用していない。 実際に通勤途中に手元のメモ用紙で計算しても招かざる結果が出てしまって扱いに困ってしまう。 検索とかで見つけたもので一番多いのは、Levi-Civita記号が真性テンソルだと仮定した場合に、矛盾が生じることを利用するというアプローチだった。おそらく教える立場ではそれが一番効率が良いと思われる。 しかしここではそれをなぞることはしない。人に教える立場ではないのだから、立脚点が違う(理屈っぽいこと言うな)。 まずは一般の斜交基底の中から2組を選んで、2つの真性ベクトルのベクトル積をそれぞれの基底の元で考える。元の真性ベクトルは共通なので、そのベクトル積は同じベクトルになるはずである(その成分表記は基底変換によって変換を受けるが)。 片方の基底の組に関しては、既に前出なのでそれを流用してサボる もう片方の基底の組に関しては前出の式に\primeだけ書き加えてサボる 当然、2組の自然基底は以下の線形写像関係にある 行列表記の濫用だけど、心配なら以前にも書いた通り、成分に展開して一度気の済むまで確かめればよい、 ベクトルの成分は基底と逆の変換を受けるので、それぞれの基底における同じベクトルの成分の間には以下の線形写像関係がある、 これを今更疑う読者は居ないと思うが、心配なら計算で気の済むまで確かめればよい、 この検算を行うことで、この前に計量テンソルの座標変換規則の議論をした時に間違いをしでかしていたのに気付いた。変換行列とベクトル成分との添え字対応がちょっと違うだけで結果を損なうものではないが(´Д`;) 検算は重要だよね。 さてこれらの下ごしらえをしてようやく Levi-Civita記号が真性テンソルかどうかどのような座標変換則に従うのか計算できることになる。 なるべく新しい道具(添え字記法とかテンソルの言葉)は使わず線形代数の行列計算だけで済むようにしているが、やってみると線形代数を何度か勉強しているはずが、ちっとも基本が身についていないことが判る。しかしそれによって線形代数というのが道具として劣っているということではなく、極めて優れているということをその都度理解することになる。 さて最初に遭遇する不都合な結果は、基底変換に関する双対基底の変換に関するものである なんだこれは? 座標変換行列の成分の式の形から見て余因子のように見えるが、単純に座標変換行列の逆行列というわけではなさそう。 上の計算に間違いがなければ、更に双対基底との内積をとれば1になるはずである。 もし上の結果が正しいとすればDとD'の関係は以下の様でないといけないことになる とどのつまり元の基底ベクトルから成る平行6面体の有向体積(スカラー三重積)と座標変換後の基底ベクトルから成る平行6面体の有向体積の比は座標変換行列の行列式の逆数に等しいということになる。 とんだ回り道に見えたが、重要な予想が得られたのは貴重だ。 こんな計算余所では見たことが無い。 さてその予想が正しいかどうか確かめる必要がありそうである。 帰宅中の通勤電車内で椅子に座れたので、メモ用紙を取り出して乗り換え駅に付く間に計算をしてみたら予想通りの結果が得られた( ´∀`) なんだ簡単じゃないか( ´∀`) 実は良く見ると、これと同じ結果は既に以前スカラー三重積の議論で得られていたのに気付いた。その時はちょうどこれの逆数を得たのだった。 先ほどの謎の式は上の結果を用いると、 ということになる。 ここから類推して一般の斜交座標系での双対基底の座標変換に関して以下の関係が成り立つことが予想される、 良く見ると、これと同じ結果は正規直交基底から一般の斜交座標基底への変換に関する議論の中で得ていたのだった。証明は読者の課題としよう( ´∀`) さてこれで答えの一歩手前まできたことになる。 (2016/7/26) ここから直ぐに結論が導けると思ったが甘かった(;´Д`) 以前に基底変換の関係を導いた時は、正規直交系から一般の斜交座標系への基底変換だったので実は良く判っていなかった点があった。 ここに来て、一般の斜交座標系の間の基底変換の結果が必要になるので、それをまとめる必要がある。 実は先ほど既に2つの重要な結果を得ているので、それをまとめると。 斜交座標系の自然基底の組f1,f2,f3およびf'1,f'2,f'3の間に以下の線形写像関係があるとする、 それぞれの双対基底は定義から以下の関係が成り立つことが要請される、 また先の基底変換の関係から以下の関係が成り立つ、 そろそろ記事の行数制限を超えてしまうので、続きはフォロー記事で |
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自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-2-3 12:47 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-3-16 10:45 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-3-17 9:57 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-4-15 21:41 |
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Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-4-26 21:43 |
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Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2015-12-19 21:03 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2016-1-4 22:15 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2016-1-10 22:07 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2016-1-16 17:45 |
» Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2016-4-6 12:47 |
Re: 自分の数学を持つことの勧め | webadm | 2016-7-26 20:20 |
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