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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2016-12-24 1:25
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3087
Re: ピアノ教本
練習開始から3ヶ月が過ぎようとしている。

ようやく「大人のための独習バイエル(上)」が易しく弾けるようになってきた。

それと「大人のための独習バイエル(下)」に移ったのだけれども、最初の練習曲44番というのが、またしても予備練習的な譜面なのに驚いた、まるでここから新しい教則本の内容が始めるように見えた。
いろいろ謎の多い教則本である、バイエルというのは。

ところで上巻のステップ1は予備練習的な譜面なので簡単だし仕上げもくそもないのだけど、ステップ2から練習曲ものが1ダースほどある。

最初は以前に書いたように、レガートで弾かないとつまんない曲とばかり思っていたけど、ある日飽き飽きしてデジタルピアノの音源をグランドピアノ以外に変えて弾いて遊んでみた。

ピアノ系の音の減衰の早い音源では印象はまったく変わらないのだが、減衰が基本的に無いオルガンやストリングスで弾いたら印象がまるで変わった。

特にストリングス音源で弾くと、それはまるで弦楽四重奏用の練習曲であるかのような響きに聞こえてくる。いやマジでこれは元々はピアノ用に作曲された曲じゃないと思えるほど素敵な旋律に聞こえた。

それで解ったことは、つまんない曲と思ったのは自分の想像力のなさ過ぎが原因で、曲そのものに原因があるわけではなかったのである。

以前ピアノ教本とかバイエルとか検索した頃に、バイエルを研究しきた先生が、バイエルは若い頃に作曲家を夢見て各地に演奏旅行をして歩いたことがあると書いていたのを思い出した。

もしかしたらバイエル教則本の曲はその頃やそれ以降にバイエルが大作曲を目指して作曲した習作の断片をピアノ用に編曲したものではないだろうかと思った。

バイエル自身は作曲家の夢を断念して、当時需要が急増していた人気歌曲を易しくピアノ曲に編曲するとかの編曲者として多忙を極め裕福な暮らしをしていたらしい。

そうしたバイエル研究の成果が世に出たのは極めて最近の事で、それまで100年以上日本でピアノ教本の定番として使われてきたのに、実は誰もその素性をとことん探求していなかったというのが本当のところ。

さっそく前々から検索するたびに出てきた、以下の歴史的な本を購入して読み出したのは言うまでもない。



過去に日本でも数多くの先生がバイエルの原点を探そうと試みたものの、社会が急速に変化してしまった影響でバイエルの足跡自身もまったく失われてしまったかのような結果しか得られなかったと思われる。

著者も当初はほとんどこれと言った成果も得られずこれまでのように頓挫するかとあきらめかけたそのときに一連の奇跡が続けざまに起こり、まるで100年以上前に没したバイエルがあの世から導いているかのように、次々と新発見に出会う次第は読んでいて息を飲むし興奮する。

バイエルその人自身が実在したどうかも疑わしかった調査当初から一転したのは、死亡記録を探す際に必要な生年を職員から訪ねられた際に既に知られていた生年ではなく、とっさに間違えて言ってしまった生年が実は正しくて記録に残っているのと偶然一致、間違えて言っていなければ見つからなかっただろうというエピソードがなにやら神がかっている。バイエルがあの世から先生の口を借りて本当の成年を職員に伝えたとしか思えない。


著者はインターネットの時代の利点を最大限に利用して、各国の図書館の目録を検索したりして調査のポイントを絞っているが、基本は現地に行って現物や現場を見てくるというオーソドックスな研究姿勢だが、現地に赴くことによって思いがけない運や奇跡に巡り会えるチャンスがあるということを物語っている。

それによってバイエルが実在した人物であり、生前から需要が急増していた、今で言う軽音楽やポピュラー音楽を愛好するアマチュア向けに易しい流行曲のピアノ編曲を多数書いた流行編曲者だったことが明らかになった。

またそうした職業に就く前の経歴も明らかになり、母方が教会のオルガニストや音楽教師の家系で職人である父親の意思もあって聖職者になるべく大学に進み、そこで合唱隊員になることで音楽家の道に目覚め、父親の死を区切りに音楽を大学で専門に学ぶようになったことなど。

バイエルが家族と暮らしていた頃のことは何も知る手がかりは無いものの、音楽家を目指す素養は既に幼少期に母親からオルガンの手ほどきを受けていたことは想像に難くない。母親は教会のオルガニストであった父親(バイエルの祖父にあたる)から同様にオルガンの手ほどきを受け、父親に変わって教会でオルガンで伴奏することもあったほどというから疑いない。

そうした材料がそろって、著者のバイエル教本に対する思いは頂点に達する。

詳しくは「バイエルの謎」安田寛著を読んで頂きたい。

バイエル教則本に対する認識が一変することは請け合い。

そういえば、著者は序盤で、バイエルの伝記風の以下の漫画本を手にして読んでいる。藁をも掴むという感じだったのだろう。漫画は日本の文化だし、漫画だからといってバイエル研究に関する本を無視するわけにもいかないだろう。



実はこの漫画は目次にも書いてある通り、まったくの創作でありフィクションである。

しかしながら、最後に書かれている原作者である作曲家、芦猴枡鷸瓩硫鮴癲屬母様へ」を見ると、原作の意図はバイエル教本の意図と寸分違わないものであり、「バイエルの謎」の安田寛氏のバイエル観やバイエル教本観とも矛盾しないものであることを確認できる。

ところで「バイエルの謎」の中では、バイエル教本の初版本を探す試みはハリケーンでそれとおぼしき本が所蔵されている北米の図書館が水没するなどのアクシデントに見舞われ、ついぞ初版本と言えるものには遭遇できなかったことが書かれている。

それには後日談があって、実はショパンの運指研究で知られているの日本人の研究家が偶然にもインターネットで海外の古本屋からバイエルの初版本に限りなく近いものを手に入れていて、安田氏の元に携えてきたというエピソードが「文庫版あとがき」には書かれている。

そして最も古く初版本に近い版を手に入れた研究者とともに編纂したのが、以下の本で、その最も古いバイエル初版本の全ページを本体として、興味ぶかいその研究結果が添えられている。

驚くべきことに、調査の過程で、安田氏も発見する機会を得られなかった、シュット社の資料庫にあったバイエル教則本のバイエル自身による自筆譜が発見され、それが数ある初版本やその後出版されたバイエル教則本の各版の比較研究に重要な役割を果たすことになった。



この本は大判で、それもそのはず、バイエル教則本の最も古い初版本がそのまま納められているからである。

バイエル教則本のシュット社から出版された原典の巻頭には以下の様な前書きとイラストがあしらわれている。



シュット社の出版記録によると、バイエル教則本は各国で販売され当時同社が出版していたモーツアルトの曲集と比べて桁違いに多い出版数だったことが明らかにされている。

増刷の度に、活版の一部が摩滅してしまうので、そのたびに作り替えることになり内容が次第に変わっていったのは言うまでもない。

上の銅販画であるイラストも増刷の度に新たに作成され直すので、微妙に絵のタッチが変わっていたり、時代によってはグランドピアノではなく一般的なアップライトピアノになっているものも存在するらしい。

それと日本国内のバイエル教則本の原本になっているのが、この本でペータース版と呼ばれるもので、最も多くの校訂が施された版でもある。そのため手元の「大人のための独習バイエル(上)」でもやたらに目に付くようにフレージングスラーが多いのが特徴。バイエル自筆譜にはそうしたフレージングスラーは無く、弦楽器特有のボーイングスラーが見られる程度であることも本書に書かれている調査結果から明らかになる。

ピアノ演奏では原典回帰が基本であるのに対して、バイエル教則本では著しい校訂へ回帰する逆行現象となっているというのも本書で指摘されている点である。

バイエル自筆譜が発見されたことによって、初版本やその後の様々な版に継承された初版本の誤りが明らかになったこともあって、今一度見直すべき時が来たのかもしれない。

個人的にはバイエル自筆譜でのスラーがボーイングスラーだけしか使用されていないという点に注目している。それは元々ピアノ向けに書かれた曲ではなく、バイオリンなどの弦楽器やシンフォニー向けに書かれたものだったのではないだろうかという持論が信憑性を帯びてくる点が興味ぶかい。

「大人のための独習バイエル(上)」には特に演奏方法に関しては何も書かれていないが、易しく弾けるようになったので、ペダルを使ったりして可能な限り開放弦の響きを得るようにすると、まったくつまらないとは決して言えない代物になる。もちろん音が濁ってしまう部分ではペダルは上げておくのは言うまでもなく。

ペダルは和音とか3度以上のインターバルのある重音の場合には積極的に使い、2度以下のインターバルしか無い音程の変化の時には使わないようにするだけでかなり響きが得られる。結構使い分けをリアルタイムに切り替える必要があるので練習と慣れとコツが要る。

Youtubeでいろんなピアノの先生がペダルの使い方を紹介しているビデオが見ることができる。








それに比べてデジタルピアノで音源をストリングスにすると、タッチによって音の増減は依然として可能で、苦労しなくてもレガートになるので想像力のなさを補ってバイエルが作曲した当時の曲想を追体験することが出来る、おすすめである。

思うに、バイエルという人は、今では当たり前になったピアノ好きなアマチュア演奏家向けの雑誌や譜面集向けに易しいアレンジに編曲する需要をいち早く察知してそれを本業にした人で、シュット社は今も現存するけど、インターネット時代で言えば、様々なピアノ習熟度向けにアレンジ編曲を提供する「ぷりんと楽譜」みたいな事業を当時先駆けてやっていたとも考えられる。

当時は一般民衆受けする曲を書いたり、大曲を易しく編曲して大衆に提供するなんてことは音楽家の風上にも置けないという風潮だったようで、今日でも巨匠の大曲や有名曲を易しくアレンジして編曲するということは、オリジナルにあるものの一部を取り除く行為になるのであまり良く思われない。ショパンですら、リストが自分の曲に勝手に装飾や音を加えて演奏するのを聞いて顔を真っ赤にして怒ったというぐらいだから、加えることも省くことも原則的には許されない行為というのには変わりない(それをするのがまた巨匠であれば話は別だが)。

また持論になるけど、既に当時編曲者として生計が成り立っていたバイエルにとって、更に安定した将来を約束するには、シュット社から出している自身のアレンジ曲集が売れ続けることが必要。それにはもっとアマチュアの演奏家の層を広げる必要がある。当時既にあったピアノ教則本はテクニック習得の基礎練習内容に終始していて、素人にはつまらないものだった。そこで弾けるようになると良いなと思える易しい練習曲を用意して、それが弾けるように段階的に難しい曲を並べていくという今では当たりまえの初心者向けピアノ教則本を編纂したのがバイエルその人だったということに。その思惑は当たって世界中に出版され、遂に日本に伝来して今日に至るわけである。

バイエルという人は自身の編曲による人気アレンジ譜を出版するシュット社の株式を保有し株の配当も新たな株購入に回すなど、事業に熱心だった。今日では軽音楽やポピュラー曲など大衆受けし、覚えやすい、歌いやすい、演奏しやすい音楽が大半を占めていて、クラッシックの大曲とかは敬遠される時代だけど、ある意味そうした時代が来ることをバイエル自身は予感していたのではないだろうかと思える。

そういう意味で、その後出版され今でも出版されている定番ピアノ教則本はどれもバイエルのスタイル(弾けるといいな的な易しい練習曲集と予備練習譜)を踏襲している。本格的にクラッシックの演奏家を目指すなら軽音楽とかポピュラーの様な素人受けする覚えやすい作り易い曲ではなく、巨匠の書いた大曲や難曲を数多く弾くことを目指すべきだというのはあるだろう。

練習が目的になってしまわないようにしないと、プロの演奏家にはなれない。だからといって最初からリストやショパンの難曲を弾けるように目指すのは無理がある。難易度の低い名曲から始めるのが良いだろうけど、それとてもっと易しい曲から始めないとだめだろう普通は。

そうすると誰しも軽音楽的なポピュラー的な平易な曲から弾き始めることになるわけで、行き着く先が軽音楽やポピュラーで終わるのか、クラッシックの大曲や難曲に行き着くかの違い。後者は音楽家として必要な知識も格段に多くなる。

もちろん大は小を兼ねるで、クラッシックの大曲を分析し理解し独自の表現力を発揮できるだけの知識と能力をもってすれば、もっと易しく小規模な作りの軽音楽やポピュラー曲を演奏して人を感動させることも容易だろう。

それには小さい頃から始めないと時間は無いし、体力も持たないだろう。

既に右手が長年の疲労でやせ細った指の屈筋腱が切れそうなのでセーブしつつ、上を目指そうと思う。右手が使えなくなったら、左手だけでも続けるつもり。

楽典に関してはずっと若い頃に勉強した知識があるので、ほとんど勉強していなかった和声についても勉強するつもり。

和声の参考書を買って開いてみたら、題材がバイエル教則本からの曲だらけだったので偶然すぎて笑ってしまった。

んじゃまた。


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題名 投稿者 日時
   ピアノ教本 webadm 2016-9-19 5:59
     Re: ピアノ教本 webadm 2016-10-23 22:12
       Re: ピアノ教本 webadm 2016-10-30 8:03
         Re: ピアノ教本 webadm 2016-11-4 6:55
           Re: ピアノ教本 webadm 2016-11-13 11:39
             Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-5 2:35
               Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-11 23:58
               » Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-24 1:25
                   Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-25 22:23
                     Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-3 4:45
                       Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-22 3:37
                         Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-30 9:19
                           Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-6 5:06
                             Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-12 4:19
                               Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-19 0:49
                                 Re: ピアノ教本 webadm 2017-3-21 3:37
                                   Re: ピアノ教本 webadm 2017-4-17 21:54
                                     Re: ピアノ教本 webadm 2017-5-8 0:06
                                       Re: ピアノ教本 webadm 2017-5-28 21:31
                                         Re: ピアノ教本 webadm 2017-7-2 21:55
                                           Re: ピアノ教本 webadm 2017-8-13 11:11
                                             Re: ピアノ教本 webadm 2017-9-20 12:33
                                               Re: ピアノ教本 webadm 2017-12-2 22:07
                                                 Re: ピアノ教本 webadm 2018-1-12 11:12
                                                   Re: ピアノ教本 webadm 2018-1-29 5:48
                                                     Re: ピアノ教本 webadm 2018-5-5 2:28
                                                       Re: ピアノ教本 webadm 2018-9-9 20:31
                                                         Re: ピアノ教本 webadm 2018-9-30 22:06
                                                           Re: ピアノ教本 webadm 2018-10-7 14:58
                                                             Re: ピアノ教本 webadm 2018-12-23 22:37
                                                               Re: ピアノ教本 webadm 2019-2-20 10:29
                                                                 Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-14 23:51
                                                                   Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-21 7:29
                                                                     Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-29 12:39
                                                                       Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-4 5:01
                                                                         Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-4 23:11
                                                                           Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-16 12:44
                                                                             Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-26 19:33
                                                                               Re: ピアノ教本 webadm 2019-7-5 10:32
                                                                                 バイエル卒業(´∀` ) webadm 2019-8-5 0:50
       Introducing Pianoprima EXERCISES webadm 2020-8-11 6:27

 
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